その二、入学手続きと初ミーティング。

到着の翌日、手続きをしに学校に行く。場所はテムズ川の北、コベントガーデンの南にある。新しいんだか古いんだかよく分からない建物で、つまりは古い建物に新しいのをどんどん付け足しているという感じ。だからあまりまとまりがなく、どの校舎に何があるのかいまだによく分からない。

学生証の写真はデジカメで撮っていた。いろいろ手続きをしているうちに出来上がっていた。ここでメールの登録もしたはずだが、いまだにメールアドレスが有効になっていない。二週間前まではちょくちょく文句を言いにいったが、一向に改善されないし、別にhotmailでも問題ないので放りっぱなしになっている。きっといまだに使えないことだろう。イギリスはそんな国らしい。

次に医者の登録を済ませる。イギリスは半年以上滞在する外国人にはイギリス国民と同じ医療サービスを受けられるというありがたいことになっていて、診察費などはほとんど無料になっている。その分あまりサービスはよくないらしい。尿を取ってくるようにいわれたらしいのだが、未熟な語学力では理解できず、どうやってあまり汚い言葉を使わず説明すればいいのか看護士さんもまよっていた。で、取ってきたら今度は、あんた日本人でしょ、日本語書ける?と聞いてくるので何かと思えば、I Love You!って日本語で書いてよ、というので書いてあげる。どうやらいろんな国のI Love Youをコレクションしているらしい。

登録が済んでそのまま病院に行く。といっても校舎の中にある。もちろんまだ病院に登録が済んでいるはずもないが、その辺は適当なので診察してもらう。実は以前短期で留学した時も風邪を引いたままロンドンに来て、同じように咳が止まらずに三週間くらい完治しなかったので、今度は早めに手を打つことにした。処方箋をもらって薬を買いに行く。BOOTSという銀座にも出展しているマツキヨみたいな薬屋で買えるので便利。二、三日はかなりきつかったけど、意外と早くよくなった。

数日後に初のミーティングがあった。どうやら日本人、というかアジア人は一人らしい。まわりのほとんどは修士(MA)、博士課程だが、今回のコースはMAよりも下のディプロマという、日本にはないので説明しづらいコースになっている。大学で正式にギリシア美術を学んだわけではないので、MAでは入れなかったのだ。実際にはほとんど同じ授業を受けられるし、論文やエッセイの文字数が少ない分、期間も短いのでかえって厳しいような気もする。

その場でどの授業を受けるかを決めなくてはいけないということで、迷いつつもギリシア陶器、彫刻、建築、それと暗黒時代から東方化様式時代までの考古学の四つのコースを選択した。直前まではパウサニアスと考古学というかなり面白そうな授業もあったはずだが、いつのまにか来年になったらしい。まったく。

一人の学生に話し掛けられたので話してみるとギリシア人だった。実は後で気づいたのだが、このコースの生徒の八割以上がギリシア人で、誰に話し掛けてもほとんどギリシア人だったのだ。ギリシアでは古代美術を教えるコースがBAまでしかないので、MAを取るには海外に出るしかないのだそうだ。まだそんなに遅れているとは知らなかった。

まわりの学生が英語が上手い、というか、一人だけ下手なのに気づく。やっぱりせめて一月前くらいには現地に来ておいたほうがよかったのかもしれないが、一月たった今もあまり変わってないところを見るとそれくらいでは足りないのかも。まあ、それでも何とかなるものではあるけど。考古学とコンピューターの関わりについて淡々と延々はなしてくれたのはよいが、あまり面白くなかったように思えたのは聞き取れてないだけかと思ったけど、他の学生も眠たそうにしていたので安心した。