俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカ〜
この「60年代のTVCM」のコーナーで既に紹介させていただいた上方コメディアンの大村昆(正しい字は上に山がつきます)のオロナインなどともに、番組出演者による生CMの代表作品と言えるのが、同じ上方コメディアン(?)の藤田まことの前田製菓のクラッカーのCMであります。
そして、おもむろに懐に手を入れ、「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」といいながら、前田製菓のクラッカーをTVカメラに向かって差し出すという、それだけのものでしたが、この「あたり前田のクラッカー」というフレーズは、それこそ、当時、文字通り、老若男女を問わず、という感じで、いろいろな局面で使われる大変な流行語になったことを、昭和30年生まれの私は、リアルタイムではっきりと記憶しております。TVを軽佻浮薄の代名詞として嫌っていた私の親父でさえ、このフレーズを口にしていたほどですから、その浸透ぶりたるや、大変なものだったのではないかと憶測されるわけであります。
この番組には、その当時のいわゆる流行歌手が登場し、番組の中で、その時々のヒット曲を歌う構成になっておりました。ですから、たとえば、三田明が出てきたりすると、「カリブの花」などという、どう考えても、てなもんや三度笠という股旅ものの舞台劇には似つかわしくない、その時の自分の持ち歌を、ストーリーとは関係なく、突然、本当に、唐突といってもいいくらい突然に、「エルビラー、エルビラー、カーリブのはーなー」とか言って歌い出すという、実に、荒唐無稽な展開になっても、テレビの前の私たちはもちろん、客席の皆さんも、それを自然に受け入れてしまうという、実に、おおらかな時代だったわけであります。
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