60年代のTVCM

おしゃべり九官鳥プレゼント(グリコ)

 60年代に限らず、お菓子とオマケというのは、非常に深い関係にあるものだと思いますが、とりわけ、私にとって思い入れの強いのがグリコのアーモンド・チョコレートであります。
 アーモンド・チョコレートが私の最も好きなお菓子だったということもありますが、特に、この「おしゃべり九官鳥」や「お使いブル公」「おとぼけ君とせっかち君」などは、私がノドから手を出して欲しがっていたものでありました。
 グリコと言えば、例の「一粒300米(メートル)」のキャッチフレーズであまりにも有名なグリコ・キャラメルで知られているわけで、「グリコのオマケ」というのは、ある世代にとっては一組の熟語として記憶されているのではないかと思いますが、この「九官鳥」「ブル公」の類は、キャラメルのようにお菓子にそのままついてくるものではなく、アーモンド・グリコについている特別なマークを集めて送らないともらえないものでした。
 私の場合、プレゼント期間中にマークを集めることが出来たのは、「おとぼけ君とせっかち君」プレゼントの時が初めてでした。
 この「おしゃべり九官鳥」プレゼントのTVCMは1965(昭和40)年に放映されたもので、画面でかなり丁寧に応募方法が紹介されるようになっていて、CMの冒頭部分で、お菓子屋さんの店頭風景と、店先に飾られた「おしゃべり九官鳥」プレゼントのポスターまで映し出されています。

 この「おしゃべり九官鳥」では、この下の画像にもある通り、アーモンド・グリコの箱の耳についているハートマークを5枚集めて送ることになっています。この「九官鳥」の時には、この耳を5枚集めることが出来なくて貰えなかったのか、それとも、5枚1口で送った上で抽選か何かだったため、貰えなかったのか、今となっては記憶が定かではありませんが、もらえませんでした。画像を見ると、グリコのアーモンド・チョコレートは一番安いのが20円となっておりますが、私の記憶によると、この20円のやつは、アーモンドの山が一列に4個つながったものでした。私がもっぱら買っていたのは、もちろん、この20円のやつでした。70円のやつは、森永のハイクラウン・チョコレートと同じように、箱の上の部分がぱかっと開くようになっていて、中には、細長いアーモンドの山が縦に2列つながっているチョコレートが4本入っていたと思います。
 現在は、一粒ずつ包装されたフライド・アーモンドのチョコレートが2列に並んで入っているやつしか見かけなくなりましたが、いわゆる板チョコ型で、アーモンドの山が2列で4個くらいずつつながって並んでいるタイプのものはなくなってしまったのでしょうか。
 といいながらも、Jリーグが始まったころに、各チームのロゴ入りステッカーがオマケについている100円のアーモンド・チョコレートを一所懸命に買っていた馬鹿な大人もいましたので、最近まで、少なくとも、100円の箱入りのもの(当時の20円のやつに相当するもの)は売っていたはずです。



 私は、もう覚えていませんでしたが、CMのフィルムによると、この「おしゃべり九官鳥」には、なぜか、ジュニアとミスとミセスの3種類があったことになっています。どの辺がどういう風に異なっていたのか、今となっては知る由もありませんが、どなたか、ご存じの方がいらっしゃったら、教えていただけませんでしょうか。

 それにしても、最近は、こういうプレゼントものが少なくなってきています。特に、グリコの場合、例の毒物事件で、プレゼント・キャンペーンにコストをかけるよりも、安全を確保するための包装にコストをかけなければいけなくなったという事情もあるのだろうと思うと、つくづく、世の中の変りようを残念に思わざるをえません。
 こうしたプレゼント・キャンペーンも、また、着色料や人工甘味料の問題はあったにしても、少なくとも、お菓子屋さんで売っているチョコレートくらい子供が安心して食べることのできた古き良き60年代を象徴するものなのかもしれません。
 スーパーやコンビニが登場する以前、お店のおじさんやおばさんと買い手である子供も含めた隣近所の人達のコミュニケーションが成立していた時代には、その濃密な地域社会の雰囲気が、不審人物に毒物を入れたチョコレートを売り場に置き去らせることなど許さなかったのではないかという気がします。
 防犯カメラは備え付けられていても、売り手と買い手のコミュニケーションが失われた今、極端に匿名性が高まってしまったコンビニの店舗に象徴される無機質な地域社会の雰囲気が、信じられないような事件を誘発する結果を招いている側面が否定できないとすれば、とても残念な気がします。











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