名糖ホームランバー
皆様、お待たせをいたしました。「渡辺のジュースの素」以来、実に半年ぶりに「60年代のお菓子」のデータ更新であります。
しかも、60年代のハナ垂れ坊主どもにとっては忘れようとしても思い出せないほどのビッグな存在であり、文字通りアイスクリーム界におけるホームラン王であった「名糖ホームランバー」であります。しかも、現物の画像まで、こうして紹介できる喜びをどう表現したらいいのでありましょうか。
一体、どうやってこの画像を手に入れたのだろうと羨望の思いでご覧になるような奇特な方は少ないでしょうが、一応、タネ明かしをしますと、私は、タイムマシンを持っておりまして、週末を利用して昭和37年の世界へタイムトリップしてきたのでありますと言いたいところでありますが、実は、京王線の中河原駅前にあるライフというスーパーで偶然、「名糖ホームランバー」の復刻版を発見し、喜びいさんで買ってきたのでありました。私ども一家は、京王線の百草園という駅から歩いて数分の場所にある集合住宅に住んでおりますが、夫婦2人に子供3人と猫1匹が3DKの狭いスペースにひしめきあって暮らしております。にも関わらず、私が、こういう「60年代通信」というような手間とヒマと場所を取る道楽をやっているために、子供の時以来40年来にわたって収集してきたガラクタ類を置く部屋が必用となり、百草園の駅から2つ新宿寄りの駅である中河原の駅から歩いて数分のところに4畳半のアパートの部屋を一部屋借りておりまして、その部屋を使う時に食料や日用品の買い出しをするのがライフなのです。私が貧乏なのは、月々の僅かな小遣いから部屋代を捻出しているためで、決し
て無駄遣いをしているわけではないのであります。
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そのライフのアイスクリーム売り場の冷凍ケースの中に置いてあった「昔なつかし復刻版ホームランバー」(左)を見つけたというわけでありました。
ずっと、これを食べたいと思っていたのですが、見つけることができず、セブン・イレブンなどで売っている雪印のアイスミルク・バーという類似品を冷凍庫に常備して、風呂上がりなどに食べていたのでした。大体、私は、名糖という会社がまだ存在しているということを知らなかったのですが、現在の主力商品は一体、どういったものなのでしょうか。
前置きが長くなりましたが、「名糖ホームランバーなんか知らないもんネ」という若い人たちのために、この商品について簡単に解説を加えたいと思います。
これは、いわゆる、アイスクリームであります。品質表示がうるさい現在は、乳脂肪分が10%以上(だったかな…)じゃないと「アイスクリーム」と表示できず、それ以下のものは「ラクトアイス」とか「アイスミルク」というように表示しなければならないはずですが、私たちが鼻水と一緒にホームランバーを舐めていた時代は、そういう面倒くさい規制は存在せず、一本10円のホームランバーも、しっかりとアイスクリームとして存在することが許されていました。このホームランバーが偉かったのは、アイスクリームを舐め終わり、ホームランバーの平な棒に「ホームラン」という焼き印が押されていれば、もう一本もらえるという仕組みになっていた点にあります。実際には、舐め終わらなくても、残り少なくなれば、大体、当たりかハズレか分かるのでありますが…。で、さらに、ホームランバーが偉かったのは、単に「ホームラン」だけでなく、「ヒット」とか「二塁打」とか「三塁打」というのもあって、要するに、野球と同じ要領で、ヒット4本とか、ヒットと三塁打とか、二塁打2本とか、ホームベースまで届く組み合わせになれば、1本貰えたということであります。ただ、本当の野球だ
ったら、二塁打の後にヒットが出れば得点できるとか、ヒットの後でも、例えばライト線の二塁打だったら1塁走者は生還できるとかいうこともありますが、そういうややこしい話にはなっていなかったと思います。また、ヒットを1本持っていて、ホームランが出たら2ランだから2本貰えるかというと、そういうわけにもいかなかったような気がします。
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何れにしても、残り少なくなって、平らな棒に舐め残しのアイスクリームが白くへばりついている隙間から、焼き印の焦げ茶色の文字がチラリと見えたりした時の喜びというのは、大変なものでありまして、あの手の感激というのは、もう味わうことが出来ないのかと思うと、非常に残念です。
ちなみに、こうしたヒット商品の常であります類似商品というのが、この場合にもありまして、「ホームラン」が「本塁打」だったりというのもありました。私の記憶では、ウチの近所には、この名糖のホームランバーを扱っているお店があまりなく、長岡市内の宮内町というところにあったおばあちゃん家(お袋の実家です)の近所にあった、関屋さんとかいうお店に十円玉を握りしめてホームランバーをよく買いに行ったものです。で、お店の前に置いてあったゴミ箱の回りなどに、ときどき当たりの棒がそのまま捨ててあったりすることもあって、私は、おそ松くんに出てくるチビ太のようなイヤシサで、ゴミ箱の回りを探索したりしたのも覚えています。
さらに、ちなみに、岡山育ちのウチのカミさんによると、岡山方面には、名糖のホームランバーというのはなかったそうで、その代わり、将棋の駒の形をしたアイスクリームにチョコレートがコーティングされているオハヨー乳業の「王将」という商品があり、これは「当たり」と書いてあれば、もう一本もらえたそうです。
と、ここまで書いたところで、買ってきたホームランバーを一本食べて見ましたが、棒には何も書いてありませんでした。名糖の関係者の皆様には、せっかく「昔なつかし復刻版」とまで銘打って出したわけですから、別に、もう一本貰えなくてもいいから、「ホームラン」という焼き印くらい押しておいて欲しかったと思ったりするわけですが…。
パッケージの画像を見ていただいても分かるように、ホームランバーは1962年に発売が開始されたもののようですから、今年35周年ということになります。
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