[少年マンガ雑誌編]
セブンスター(シチズン)
今回の広告は、前回の“ノーベル健脳器"とは違いまして、きちんとした正しい広告でありまして、やはり、私達の世代にとっては、非常に懐かしい“シチズン時計"の広告です。シチズンの関係者の皆様には申し訳ありませんが、絶対値記号をつけて正統派かマガイモノ派かという視点を外してしまえば、その懐かしさという意味合いでは、実は、“ノーベル健脳器"も“シチズン時計"も変わらないわけであります。
何が懐かしいといっても、まず、この挿し絵であります。私達の世代は、このタッチの絵を見ると、学習研究社から出ていた「中1コース」「中2コース」「中3コース」という「コース」シリーズを思い出す人が多いのではないかと思います。何故、「コース」シリーズを思い出すのかは、自分でも、よく分かりませんが、恐らく、表紙回りで、このタッチの絵描きさんを使っていたのか、中の読み物企画などで使われていたのか、もう覚えていません。とにかく、パブロフの犬のように、私の場合、この絵を見ると、条件反射として、「中1コース」なのであります。
当時の中学生向けの学習雑誌(?)としては、この学研から出ていた「コース」シリーズと、旺文社から出ていた「中一時代」「中二時代」「蛍雪時代」の「時代」シリーズの2種類がありましたが、私は、「コース」シリーズ派でした。「コース」シリーズ派でした、とは言え、多分、これを読んでいたのは、中学に入った初めの頃だけで、最初は、我が家が百科事典などのシリーズものの本を買うときに何時も利用していた長岡駅の裏にあった太陽堂という書店から配達してもらっていたように記憶していますが、私が殆ど読まなくなった頃から、恐らく、その配達も止めてもらってしまったのだろうと思われます。その後は、本屋で「コース」を買ったり、「時代」を買ったりという感じで、「蛍雪時代」を買う頃には、最終的に「時代」派に転向してしまいましたが…。
毎度のことながら、本題の広告とは関係ない話が続きましたが、地域の風習として、私達の世代は、高校に入学する時に初めて時計を買ってもらっていたものでありまして、毎年、3月に入って進級・進学のシーズンになると、あの当時のことを思い出してしまうわけでありますが、特に、こんな広告を見てしまうと、あの頃の雪解けの長岡の風景やら何やらが浮かんできて、一気にタイムトリップしてしまいます。
今時は、もう、そういう儀式として、高校に入学する時に時計を買ってもらうということはなくなってしまったようで、かつては、2月から3月にかけては、進学・進級祝いのプレゼント需要を狙って時計と万年筆の新聞広告やTVCMが集中したものでありましたが、最近は、その手の広告やCMはめっきり見られなくなりました。おもちゃの液晶時計なら、コンビニでも数百円で売っているご時世であり、かくいう私も、長女と長男が幼稚園の頃に、近所のコンビニで時計を買ってあげたことを思い出しました。
ということで、例によって長い長い前振りとなってしまいましたが、今回のテーマである「シチズン・セブンスター」の広告のお話に入っていきたいと思います。
この広告は、『週刊少年マガジン』の1968(昭和43)年3月17日号に掲載されていたもので、昭和43年3月といえば、私が長岡市立川崎小学校を卒業して同じく長岡市立の東北中学校に入学した年の春のことであります。
私達の世代は、中学校に入る時には万年筆を買ってもらっていたものでありまして、時計の広告は、そういう意味では時期的に関係はないということになりますが、冒頭に申し上げましたように、この広告の挿し絵は、私に「中学コース」シリーズを思い出させるものであり、この広告が掲載された時期は、まさしく、私がピカピカの「中学1年コース」“進級お祝い号”辺りを手にしていた頃のはずであり、そういう意味では、全く関係ないわけではありません。
この広告では、3種類の時計が写真で紹介されており、日付と曜日の表示のされ方は同じですが、文字盤とバンドのデザインは3つとも異なっています。写真の左側の広告本文はご覧になれないと思いますので、例によりまして、私が、下に、打ち込ませていただきます。
「もうすっかり1人前になったキミの腕に。出ました!〈若い個性〉の時計セブンスター。若さいっぱいのキミを一層すばらしくします。
●若さにぴったりのデザイン。行きとどいた機能です。●時計やバンドの種類がぐんと豊富。個性で選べます。●高精度を伝える“軽やかな音”。高い技術の表われです」
青いセブンスターの文字の上には、「強力防水・自動巻・日付・曜日つき」の説明もついています。今時は、電池で動く時計ばかりで、多分、若い人達は「自動巻」と言っても何のことだか分からないでしょうが、昭和30年代までは腕時計というのはネジを巻いて動かすものでありまして、この昭和40年代初めに、時計の中に分銅のようなものが入っていて、日常生活の中で腕を動かしていると自然にネジが巻かれる仕掛けの時計が登場し、そういう時計が自動巻きと呼ばれていました。
私が中学3年の時、担任だったT先生は、授業中でも、一定の時間が来ると、左手を横に伸ばして、話をしながら、腕をねじって、わざわざ自動巻きの時計を巻くという珍しい習性をお持ちの方でありまして、私は、自動巻きという言葉を聞くと、このT先生のことを思い出します。
今時は、本当に、電池で動く時計ばかりになってしまい、私には、困っていることが一つあります。朝の苦手な私は、海外出張に行く時には、必ず、コンパクト型でフタが開閉式のトラベル・ウォッチを持っていくのですが、ピピピ…という電子音が嫌いなことと、夜、寝るときにセットしても、夜中のうちに電池が切れてしまう可能性は否定できず、そしたら寝坊してしまうと考えてしまう心配性の性格であること、などから、長い間、ネジ巻き式のジリジリジリとベルが鳴るトラベル・ウォッチを愛用していました。しかし、数年前に、ネジを巻きすぎてネジが切れてバカになってしまい、それ以来、時計屋さんはもちろん、バッタ屋さんや質屋さんまで見かけると、必ず、立ち寄ってネジ巻き式のトラベルウォッチを探していますが、いまだに見つかりません。時計メーカーは、もう、ネジ巻き式のトラベルウォッチなんて製造する気はないでしょうから、どなたか、古道具屋か何かでネジ巻き式のトラベルウォッチを見つけられたら、ぜひ、私に教えてください。
最後になりましたが、このシチズン・セブンスターのお値段を見てみますと、21石が8000円、デラックス(クリスタルつき)21石が8800円ということになっています。当時の物価水準なんかを考えると、今の値段に置き換えたら、多分、3〜5万円くらいの感じではないかと思います。まだ、職人芸が生きていた時代の時計の値段なんだなあという気がしますし、オーディオ製品などもそうですが、液晶やマイコン関係の部品が安くなったことで、相対的な値段はもちろん、絶対的な価格で比較しても、時計は、間違いなく、1960年代よりも大幅に値段が下がっている安くなってい珍しい商品の代表格ではないかと思うわけです。

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