60年代のTVCM

レナウンシリーズ肌着

前回の「はっぱふみふみ」に続きまして、いわゆる好感度の高いタレントを起用したCMの流れに入ろうかと思いますが、放送作家から俳優、参議院議員までこなし、直木賞なんかを取った上に、東京都知事にまでなってしまった青島幸男のCM代表作とも呼ぶべき作品であります。放映は1967(昭和42)年です。

画面に現れた青島幸男が次のようなセリフをしゃべりながら、着ている背広のズボンの裾や上着の袖裾をちぎりとっていき、しまいには下着姿になってしまいます。

「おしゃれな奴は、下着着ないっていうけどね。
レナウンのシリーズ肌着、こいつは別だ。
こんなところからぶざまに出てこない。
見ろ、ほら、ちゃんと履いてんだ。
上も同じだ。
見ろ、この七分袖、ね。
袖だけじゃないよ、ザマアミロ。
レナウンのシリーズ肌着、覚えたかな」

で、最後にラクダの下着を着込んだ画面に変わっての捨てゼリフ。

「今時、こういうの流行んないんだよ、ネ」

当時のCMとしては、それなりに「なるほど」という感じなのでしょうが、今見てみると、特に、どうということもないのですが、CMとしての面白さがどうのこうのということより、私が個人的に思うのは、例えば、「はっぱふみふみ」の大橋巨泉にしても、この「レナウンシリーズ肌着」の青島幸男にしても、恐らく、年齢的には、現在の私よりも若い、恐らく30代の頃のCMだと思うのですが、もちろん、CMとしての台本なり演出なりというものはあったのでしょうけれども、自分を写しているテレビカメラの向こう側の大衆というか世間というか、つまり、ブラウン管の前にいる多くの人々を相手に、臆することなく「わかるネ」とか「ザマアミロ」と言い放ってしまう、その自信は一体どこから来ていたのだろうということであります。

もちろん、80年代で言えば、たけしやタモリ、最近で言えば、ダウンタウンなんかが、そういう存在なのかもしれませんが、でも、やはり、ちょっと、何かが違うような気がします。

「僕も、大人になったら、あんな大人になりたい」と思いながら60年代を過ごした少年が、気がつけば、自分はなりたくなかったはずの、ただの「うだつのあがらぬサラリーマンおやじ」になってしまった後悔がそう思わせているだけなのかもしれませんが…。

ということで、今回は、中年男の切なく寂しい思いを漂わせながら、幕となるのでございます。











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