2006年イタリア総選挙

 4月3日 ベルルスコーニ VS プローディ テレビ討論(第2回目) =随時改稿

  2回目、そして最後の両雄対立は、前回とまったく同じルールで、司会だけがミムンか
 らブルーノ・ヴェスパ(ライ第1チャンネルの看板番組である長時間討論ショー「ポルタ・
 ア・ポルタ」の司会で有名)に変わっただけでした。質問する二人のジャーナリストも同じ、
 ただし質問する順番と答える候補の順番が逆になっていました。公平性を徹底的に追求
 した結果がこの2回の討論ということなのでしょう。カメラは常に話している方しか写しま
 せんでした。発言権のない方が突っ込みを入れたり首を振っても見えません。
  改めて気づいたのですが、視聴者から見てプローディが左、ベルルスコーニが右に座り
 イデオロギー通りになっていて、両者にそれぞれより近そうなジャーナリストが同じ側に
 座っていました。そういう意図ではないかもしれませんが、2回目なのに、この位置は
 逆になっていませんでした。
  安心したのはアメリカの大統領選のように両方が赤いネクタイを着けたりはしなかった
 こと。顔の血色が良く見え、戦う意思が見えるというあのダサさがイタリアの両候補に
 なかったのはよかったです。

 全体の印象
  今回は最終対決ということもあり、ベルルスコーニは、やはり制限時間は破りましたが、
 前回ほどひどくなく、越えたときは謝ったりして、前回の反省が少なからず見えました。
 しかし、1回目の討論の後、ベルルスコーニが「馬鹿な奴らは左翼に入れろ」と失言した
 こともあって、両者の応酬は前回よりも言葉を極め、プローディがベルルスコーニの反省
 のない大風呂敷ぶりをバーナード・ショウの作品の引用とはいえ、「酔っ払い」と例え、
 一方、ベルルスコーニは左派側のイデオロギーのバラつきを漫画風に描いてみせました。
  スタミナは明らかにベルルスコーニのほうにありました。整形手術した顔は揺るがず、
 プローディの発言中にも「嘘だ」などと何回も突っ込みを入れました。司会に制されては
 いましたが、メディアを知悉した彼のこと、計算ずくのことでしょう。
  それに対し、プローディは、最初から重い質問だったせいか、声も枯れていて息切れ
 気味
でした。なんども発言を噛んだし、攻勢に出るときも逆にそのときに言葉の間に「間」
 が空くのです。今回は大学教授の癖が出たのか、学校の先生が生徒に言い聞かせる
 ような押しつけがましさ、くどさ
も出てしまい、提案にも具体性がなく、迫力不足が目立ち
 ました。引き分けとの評価も多いのですが、私の印象ではこの回はベルルスコーニに分
 があったように思います。

  最初の質問は、『スタンパ』の記者が最近起きた児童殺害事件を踏まえて死刑について。
 ベルルスコーニは左派政権時代の取り組みが不十分であったとして、当時の司法相で
 あったディリビエルト共産主義者党書記長の名前を挙げて批判、続けて彼の天敵である
 司法官たちも対応がまずいと攻撃しました。これに対し、プローディも治安の強化は訴え
 ましたが、やや声も枯れ気味で一般的な対策を述べるに留まりました。
 
  次に質問したのは、『メッサッジェーロ』の記者。問題の多かった今回の選挙戦について。
 プローディは左派は「フェア・プレイ」を望んだのにベルルスコーニが挑発的な発言を続けた
 ことを批判し、女性が統治するようになれば選挙戦も変わってくるだろう、と女性登用に慎重
 な右派に皮肉なコメントを入れました。ベルルスコーニは、激しくこれに反論し、プローディ
 は優しそうに見えるが実態は違う、として、左派の自らやトレモンティ経済・財務相への批判
 根拠のないものだとして謝罪を要求。左派支持の監督が作った司法官やベルルスコーニ
 を思わせる人物が登場する映画も意図的なものだと決めつけました。プローディはベルル
 スコーニが「左翼に入れるのは馬鹿者だ」と言った言葉を引いて、笑い飛ばしました。ベルル
 スコーニは、自分が言っていないことを作られたと釈明、自分は「コリオーネ」(馬鹿者)
 は言っていないと断言しました。

  第3問は、プローディが課税強化する豊かな人とはどんな人か、という質問。これはむしろ
 左派寄りの第3チャンネルの番組で彼が定義の甘さをジャーナリストに指摘された問題です。
 プローディは改めて、それは「何百万ユーロも持っている人」で、自分が課税するのは一般大
 衆でないと強調。前回討論の締めの言葉、イタリア全体の「幸福」が目的としました。ベルル
 スコーニは、プローディはこう言っているが、左派は全然違う考えでいる、共産主義者たちは
 大規模な所得再配分を計画している、とカットコムニスモ(カトリックと共産主義の混合)が
 増税を準備しているというイメージを聴衆に植えつけようとしました。プローディは、ややイラ
 つきながら、自分の考えは明確であるとして、単語ごとにゆっくり言葉を分けて先の定義
 を繰り返しました。「これでいいですか。」これはやや押しつけがましい感じでよい印象を残さ
 なかったと思います。ベルルスコーニは左派はやはり信用できない。中道・左派には100人
 以上の最左派(旧共産党系)の議員が含まれていると、左派陰謀説をさらに展開しました。


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(最終更新=2006.4.15 以下は以後に更新)

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