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      イタリア共和国憲法(1948年)の要点

   日本との違いが大きい事項、よく話題になる事項の要点を書き出してみました。
  
  
  
 [制定事情]1946年の体制選択国民投票で共和制を選択、同年選出の制憲議会で審議されたのち、
  1948年1月1日に施行された。

・基本原理

 [政体] 「労働に基礎を置く民主的共和国」(第1条)→制憲議会での左派、中道の妥協的規定

 [勤労]全ての市民に勤労の権利を認め、共和国がその条件を整備。各市民は「その能力と選択に
  応じて」活動する義務がある(第4条)→完全雇用の保証や労働強制にはならないよう留意。
  
 [マイノリティー]少数言語民族の保護を規定(第6条)

 [国家と教会]各々の領域において独立、最高の存在。教皇庁とのラテラノ協定(1929年締結)を
  尊重(第7条)。ただし、同協定にあったカトリックの国教規定は1984年の改正により効力停止。
  カトリック以外のすべての宗教も自由(第8条)→国家の世俗性確保に留意。

 [文化]共和国は文化、学術を奨励し、景観、文化財を保護する(第9条)

 [外国人の法的地位]政治犯罪を理由とする外国人の引き渡しは不可(第10条)

 [国際関係]他国民の自由の侵害、国際紛争解決の手段としての戦争を否認、国際制度(組織)に
  必要な主権の制限(委譲)が可能(第11条)

 [国旗]緑、白、赤の等幅、垂直の三色旗(第12条)→国歌についての規定はなし


・第一部 市民の権利および義務(略)


・第二部 共和国の組織

 [国会]普通・直接選挙による上下両院の二院制(第55条)。任期は両院とも5年(第60条)で、
  大統領により両院とも解散あり(第88条)。被選挙権は下院25歳(第56条)上院40歳以上(第58
  条)。退任後の大統領は終身上院議員となり、大統領は社会、科学、芸術、文学で祖国の名誉を
  高めた市民5名を終身上院議員に任命できる(第59条)。定員は下院が630人(第56条)上院が
  315人(第57条)→現在、下院の選挙権は18歳以上、被選挙権は21歳以上になっている。上院の
  は憲法の規定の通り、選挙権25歳以上、被選挙権40歳以上。

 [立法]議決は両院対等(第70条)。委員会に議決付託が可能だが、憲法、選挙、立法委任、条約、
  予算関連は本会議議決が必要(第72条)。本会議では法案を逐条採決後、法案全体を採決するが、
  緊急の場合は略式採決も可能(同条)。大統領は教書により法律の再議を求めることができるが、
  両議院が再議決した場合は審署しなければならない(第74条)。

 [国民投票]法律(租税、予算、条約関係を除く)の発案(有権者5万人以上により草案を提出)
  と廃棄(有権者50万人または5つの州議会の要求)に限る。成立には有権者の過半数が投票し、
  過半数の賛成票が必要。→実際の制度確立は1970年。

 [大統領]任期7年(第85条)の国家元首(第87条)。両院議員と州議会代表(各州3人、ヴァレ
  ダオスタ州は1人)による間接選挙(第83条)、被選挙権は50歳以上の全ての市民(第84条)。
  軍隊の指揮権(第87条)両議院の解散権(第88条)を有し、最高国防会議、最高司法会議を主宰
  する(第87条)。→首相は議会指名ではないので、議会が安定しない局面では大統領の判断も組
  閣の成否に大きく影響する。

 [内閣]大統領が首相を任命、その他の大臣は首相の提案に基づき大統領が任命(第92条)。首相
  には各大臣の罷免権はない(規定なし)。内閣は両議院の信任が必要(第94条)。→議院内閣制
  といえるが、首相や各大臣は日本と異なり国会議員でなくてもよく(規定なし)全閣僚が非議員
  の内閣も前例がある(1995年1月発足のディーニ政権)。

 [地方自治]州、県、コムーネに区分(第114条)。20州(第131条で明記)のうち5州を特別自治
  州に指定(第116条)。→規定にもかかわらず、現在の州制度が確立したのは1970年。


・経過および補足規定

 [ファシスト]ファシスト党の再組織の禁止(第12項)

 [旧王家]サヴォイア家の家族、子孫は選挙権を有せず、公職につけない。前国王とその配偶者、
  男子孫の入国、滞在は禁止(第13項)

 [貴族称号]貴族の称号は認めない。ただし、1922年10月28日以前(ファシスト政権以前)に存在
  した称号は氏名の一部とみなされる。(第14項)



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