悪魔と相討ちした守護神  伐折羅大将 (奈良 新薬師寺).

逆立つ髪、仏敵の悪魔に宝剣で立ち向かい、最後の雄叫びをあげた一瞬のまま「石化」したとさえ思えてしまう、迫力に満ちた伐折羅大将像…
悪魔と相討ちして本尊を守ったのか…?
しかしこの気迫は今も健在。


しかし「バサラ」というネーミングは現代でもカッチョイイと素直に思う。

奈良高畑にある新薬師寺。
本堂に居られる本尊「薬師如来坐像」を守るように周囲を固める、日本最古の「十二神将像」たち。

最近あるTV番組で、造られた当時の彩色が再現されて話題になりました。
当時の彩色は、カラフルな色使いや金箔で、今私たちが見るイメージとは全く違います。
でもやはり私は十二神将は今の青白い塑土が似合うと思うのです。


「動と静」・「穏やかさ・激しさ」色々な表情をしている十二神将達ですが、私は彼らが何か呪縛にでもかけられて、一瞬の動きのまま硬直(石化)したかのような硬い印象を受けるのを禁じ得ません。

特に伐折羅大将の動きの硬さが気になります。
硬い下半身、後ろに引いた左手など。硬さと同時に「ぎこちなさ」さえ感じてしまうのは私だけだろうか?


想像の世界ですが…
仏敵である悪魔が、薬師の苦行を妨害しようと攻めてきている。
薬師如来を守る十二神将達はそれに全く気付かない。
やがて悪魔の呪縛により、堂内の下手(しもて)である因達羅から順番に石化していく…
宝剣を抜こうとしたまま(宮比羅)、矢の反りを見たまま(アニラ)、斧を持って一休みしたまま(摩虎羅)、両手に払子を持ったまま(安底羅)次から次に石になっていく…
最後に伐折羅が悪魔の気配に気付き、硬直しかけた下半身や左手(石化して後ろに突っ張ったように見られる)をもろともせず、右手に持つ宝剣で悪魔に一撃を喰らわせて撃破。
そして彼は雄叫びをあげたまま石化してしまった…

自分と引き換えに最後に本尊を守った伐折羅。


しかし彼の内面から発せられる気迫は、1200年以上も経つ現在でも対峙する者を圧倒している。
まさに彼の「残留念」が成せる技なのか…


今も彼の発する怒り(気迫)は、闇にうごめく仏敵以外にも向けられているように思うのです。
それは現代に生きる我々の心の中の闇に向けてなのか?


「何をそんなに怒っているのですか?」
今度新薬師寺に行った時に彼に訊いてみたいと思う。


怒りの表情とは対照的に、左手や下半身が硬直したかの印象…

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