一つの「完成形」だと思う  十一面観音立像 (大阪 道明寺) .

大阪は藤井寺市にある尼寺、道明寺。
菅原道真ゆかりのこのお寺に本尊として祀られている国宝の「十一面観音立像」。
毎月、18日と25日に開扉し、拝むことができるお方です。
私は以前から逢いたく思っていて、先日開扉日に休みがとることが出来、大阪まで逢いに行ってい参りましたが思ったとおり素晴らしい観音様でした。

唐文化の影響をかなり受けた作風といわれるこの十一面観音。
頂上にある仏面から足もとの蓮華座までヒノキの一材から掘り出された、いわゆる「一木彫り」の傑作です。
両目に鈍い光を放つ黒石を嵌め、像の表面には金箔や彩色など施されておらず、全く「素の状態」。
しかし彫刻としての完成度は本当に素晴らしい。一つの「完成形」と言っていいほどだと思います。
衣文の流れの表現はとても柔らかみを感じられ、木ではなく本物の衣を纏っているのではないかと思うほどリアル。そして瓔珞(ようらく:装飾品)など細かい部分まで彫ってあり、仏師の技量の素晴らしさが1,000年の時空を超えて現代に伝わってきます。
そしてふくよかで優しそうなお顔、しかし見る角度によっては厳しい表情に見えるのはやはり「変化(へんげ)」する観音様らしいところか…

この観音様が造られた平安時代も飢餓や厄病に多くの人々が苦しむ時代でした。人々の苦しみを救うのが観音の役目。
「観音経」には観音様にすがれば救われるというあからさまな「現世利益」が謳われています。そのイメージを最も具現化したのが、千手観音とこの十一面観音だと思います。つまり十万世界すべてに目を向けて人々を救う…
優しくもあり、厳しくもあるこの観音様ならきっとその役目を果たしてくれるでしょう。

像高が1mも無いことを後で知って正直驚きました。
実際に先日お逢いした時は、それ以上に大きく感じられたのはこの観音様が私を包み込むようなおおらかさ、そして時として威厳に満ちた表情で私の前に立ちはだかった為なのか…

向源寺のお方と並んで「マイ・ベスト・十一面」と言えるこのお方。
何度でも逢いに行きたくなってきました…

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※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。                                

優しくもあり、時には厳しい表情にも「変化」するお方。
全体的に調和のとれた、「彫刻」として見ても素晴らしい傑作です。

衣文の流れがリアルで美しい!
仏師の技量も凄い!
そして瓔珞の精緻な表現には正直驚かせられました…




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