07年5月18日 一人見仏 ぶらっと大阪の観音さんめぐり  
(大阪 藤井寺市 葛井寺・道明寺 +道明寺天満宮 )

18日は開扉の日…行かねばなりません

5月18日は会社が休みでした。
18日・18日…
たしか「18日」ってのは昔から「観音さんの縁日」といって、秘仏の開扉の多い日なんですね〜これは行かねばなりません。
さっそく調べてみると、以前から一度会いたく思っていた葛井寺の国宝「千手観音」と道明寺の国宝「十一面観音」が丁度公開日。しかも同寺とも同じ藤井寺市にある〜これは絶対行かねばなりません。
普段よりチョイ早起きして、6時24分発の大阪行きの電車に乗り込みました。〜急いで行かねばなりません。
大阪に着いて乗り換えた、環状線の「通勤ラッシュ」に揉まれてヘロヘロになりながら、近鉄南大阪線に乗り換えてようやく着いた藤井寺駅。商店街を通って目的地の「葛井寺」を目指します。


千の手、千の目に魅せられて…

商店街の通りに面してあった「葛井寺」。まだ8時過ぎということで拝観者もまだまばら。朝早くから来ていたであろう「お百度参り」の人もいました。
境内で野菜や果物、物産など露店開きの準備をしている人たちを横目に、心は本堂の「千手観音」に向かっています。
そして本堂に上がって、いよいよ会いたかった「千手観音」との対面です。
祭壇や供物があるため、5mくらい離れて座っての拝観になりました。でもそんな距離感は何故か感じられない。
ある仏像巡礼の本に、「開扉した厨子の開いた幅が狭くて、千本の脇手が全然見えない」て書いていましたが、そんなこと全然気にならない。ちょっと位置を変えて見るとほとんどの脇手を見ることができました(拝観者が殆どいなかったので出来たのですが)。

そして思った通り、いやそれ以上にのめり込みました。
細い眼でこちらをじっと見据えている。こちらも負けじと観音様をじっと見る。
暫くして、「美しさ」「力強さ」「繊細さ」「女性的」「男性的」…なんて当初抱いていた概念は、だんだん無くなってきて、とにかくドンドン引き込まれます…
この観音さまの前にいる間は、色々な思い・悩み・概念など、頭の中にあるもの全てがどこかへ飛んで行ってしまった…いや飛んで行ってしまったことさえも感じられない、忘れてしまっている…これが「無」になることなのか…
30分くらい観音さんを見つめていたでしょうか、その時一人のおばあさんに話しかけられて、我にかえりました。
「ここを後ろに回ると、色んな資料があるわよ」
そのおばあさんに導かれるように、内陣の後ろに回ります。そこにはこの千手観音を解体修理した時の写真や「勧進帳」、境内から出土した創建当時の瓦、昔の伽藍配置図などたくさんの資料が展示されていました。そしてこの観音さんの解体修理の時に撮影された写真に釘付けになる。
正式名「千手千眼観世音菩薩」の名の通り、脇手全ての掌に墨で描かれた「目」や、普段は絶対に見ることが出来ない後ろにある、「暴悪大笑面」の写真など。
この観音様は、この「千の目」と「十一の顔」で私を見透かしていたのか?と思うと再び感動。
おばあさんありがとう、教えてくれてなかったら見過ごしてしまったかも…


とにかく明るいおばあさんでした

なんでもこのおばあさんは、ネットで秘仏開扉情報を調べて、一人で色々お寺巡りをしている仏像好きでした(私もそのひとりですが)。すぐに意気投合。
そしてこの葛井寺の後は、「法隆寺の夢殿の観音様は、たしか今日までだったでしょう?すぐ行かなくては」と本堂を出ていきます。私は朱印をもらって本堂を出ると、楼門を通って、ドドーっとツアー客たちがなだれ込んで来ました。やはり早く来て良かった。
境内を散策していると、楼門の所でまたおばあさんに出会いました。楼門にいる仁王(金剛力士)に夢中のよう。「仁王さんって足が太いでしょう、私そこが好きなの」って嬉しそうにバシバシ写真を撮っていました。本当に好きなんですね〜
それからまた二人で始まる仏像談義…
「そろそろ行かなくちゃ」っておばあさんは出ていきます。私はもうしばらく境内を散策しようと思いましたが、雨がポツポツしてきたので、そろそろ道明寺へ向かうことにしました。


完成された完璧な「十一面観音」に怒られました。

再び電車に乗って道明寺を目指します。
二つ目の「道明寺駅」を降りてまた商店街を歩いて、10分位すると道明寺の入り口である「山門」着きました。
山門をくぐってまず境内一杯に敷き詰めた白い砂利に目が行きます。
そして季節はずれてしまったけど、木蓮・梅や八重桜など木々が植えられた、いかにも尼寺らしい美しい庭園。狭いけどホット出来る「大阪の奥座敷」といった印象です。
さっそく本堂に入ります。
本堂奥に立つ、漆黒の国宝「十一面観音」。すでに先に入っていた老夫婦が「観音経」を唱えてお祈りをしていました。それが済んでから今度は私が前に座って覚えたての「般若心経」を唱えてじっくり向き合います。
一言で言うと、彫刻的に見ても「完成された」観音様。精緻な装飾品、両腕から流れ落ちる衣の力強さ。瞳には黒石をはめられていると聞きますが、それが鈍い光でこちらを見つめている。そしてなんと指が細いこと。力強さと優しさが同居している観音様…そう思いました。
今度は祭壇まで近づいて、わずか1mの至近距離で見る。像高1mに満たないお方なのになぜか大きく感じられます。黒く鈍く光る瞳が私を威圧している。すると後ろのほうでお経をあげる人が…私は申し訳なく、観音様からまた離れます。観音様が、「後ろでお経上げている人がいるではないか」って怒っておられたのか…
私は申し訳ない気持ちで本堂を出ました。そして本堂前の受付で朱印を貰って受付にいた尼さんにそれを話すと、やさしくにっこり笑っておられました…

そして「大師堂」「護摩堂」にお参りをして、境内でのんびりしていました。
天気も回復して、時より雲の合間から日差しが…
敷き詰めた砂利をならして、紋を描くおじさん、腕章には「ボランティア」。
風が時より植えられた木々を優しく揺らしている。
やさしいお寺でした…

しばらく休んでから、道明寺を出ました。


道明寺天満宮にぶらっと立ち寄り

姫路に帰るのにまだ時間があったので、寄り道としてそばにある「道明寺天満宮」にぶらっと寄りました。
平日お昼過ぎの境内には、近所のじいさんばあさんたちの憩いの場となっていて、みなさんベンチや木陰でのんびりしていました。
境内に入るとまず目につくのが天神さんの使いとされている牛。
「撫で牛(なでうし)」として、自分の体の弱いところをさすると効き目があるということで、やはり頭が摩耗した牛が多かったです。頭が良くなりますようにと祈る人が多いのは、やはり菅原道真ゆかりの神社だからか?
「本殿」横の休憩所で缶コーヒー飲みながら、じいさんばあさんたちの楽しい会話を聞いていました。
さあ今からまた電車に乗ってそろそろ帰りましょうか…

のんびりぶらぶらしながらリラックスできた大阪見仏でした。




葛井寺の西門(重文の「四脚門」)前にて。
自転車に乗った大阪のオバチャンがいきなりフレームイン。このお寺、商店街のど真ん中にあって、いかにも「庶民のお寺」っぽくて居心地が良かった。

今回の見仏を象徴する写真と言って良いかも?

南大門にあたる「楼門」。

楼門の仁王さんをレースクーンを撮るかのようにバシバシ撮るおばあさん。それを後ろから「盗撮」してごめんね。

雨がポツポツ…
物産の露店の人たちも大変です。

朝8時過ぎの境内。まだ拝観者はまばらでした。

本堂を出るとツアー客がなだれ込んで来ました。やはり開扉日は早く来るべきです。

道明寺の「山門」。

砂利に美しい「紋」を描くおじさん。ボランティアの人たちに守られてきた素敵な尼寺です。

道明寺の境内で初めて見た「魚藍観音」。手に持つ籠にたくさん魚が。大漁です。

ぶらっと立ち寄った「道明寺天満宮」の本殿。

やはり頭がさすられまくりの「撫で牛」。

本殿前の狛犬。
立った「トサカ」がカッチョイイです。

右:葛井寺の朱印「大悲殿」。
左:道明寺の朱印「十一面観音」。
そして道明寺で貰った美しい花が描かれた「散華」。

■ 戻る



■ HOME