狂気に満ちたお方たち  十二神将像 (奈良 興福寺 東金堂) .

現在は奈良公園の一角にある興福寺。
鹿たちが休んでいる落ち着きのある風景が佇むこの地に、かつて春日大社の実権を握り、官寺である東大寺をも凌ぐ広大な寺領を持っていたのでした。また僧兵数万を擁し、朝廷への強訴や他の社寺との抗争も絶えなかったと聞きます。
治承の兵火で焼け崩れ、その後再建された東金堂の本尊として、興福寺の東金堂衆が飛鳥の山田寺から薬師三尊を強奪する暴挙に出る(なんと恐い)。
新しく迎え入れた(といっても盗んできた)本尊を守護するために、造立されたのがこの「十二神将像」なのです。
しかし室町時代に落雷で再度東金堂は火災。東金堂内の仏像は、本尊のみ「仏頭」をのこして焼失してしまったわけです…

この十二神将像たちを見ていてまず思うことは…
当時他社寺との争いごとが耐えなかった、興福寺を象徴しているかのような「狂気」。
強奪した本尊を、再び取り戻されないように守っているのか、凄まじい迫真の形相で武器を振りかざしています。

例えば「伐折羅(ばさら)」。情け容赦を持たず、弱りきっている相手に止めをさすかのように、刀を振りかざしている。
そして「波夷羅(はいら)」。顔なんかもう「鬼」です。牙を剥き、今まさに刀を抜いて襲い掛かろうかという表情。
「摩虎羅(まこら)」は雄叫びを上げながら斧を振り回している。
そんな感じで「目が逝っている」連中ばかり…

しかしそんな恐ろしい彼らでも、室町時代の落雷による火災では、本尊を守れませんでした。やはり「自然」には彼らも歯が立たなかったのか…

私は鎌倉時代以降の十二神将像はあまり好きになりません(あくまでも個人の好みですが)。コミカルな動きで、本尊を守っているというより、本尊の周りで「戯れている」感じがして、思わず「しっかり本尊様を守らんかい!」って言ってしまいそう(鎌倉以降の十二神将さまスイマセン)…
しかしこの興福寺の十二神将は全く異質で、見ているだけで恐ろしく、本尊だけでなく興福寺に刃向かう全てのものに強烈に威嚇している…そう見えてなりません。

さあ十二神将たちよ、こんどこそ本尊様を守ってやってください。
今、「国宝館」で一人寂しく佇む「仏頭」さんが寂しく思えてなりません…

あんまり言うと、今度東金堂に行ったときに狂気に満ちた十二神将たちに襲われるかも…(恐)

毘羯羅(びから)。
上空からやって来る敵に対して、雄叫びを上げて迎え撃っているのか…
なんか目が恐い。

伐折羅(ばさら)。
今まさに刀を相手に突き刺して、止めを差そうかいう気迫に満ちています。

波夷羅(はいら)。
十二神将というより、もう鬼です。
当時の興福寺の「東金堂衆」たちは、こんなで形相で山田寺から仏像を強奪したのだろうか…?

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