いまだに「現役」で頑張っています。
これからも御本尊様をお守りください‥。
しかしやっぱり金網で見にくいなあ。
この仁王さんを「仏像」と思っている人、意外と少ないと思います。
だって南大門を通るほとんどの人が心は既に「もうすぐ大仏さんに逢える」モードに入っているからです。年間約三百万人と言われる東大寺参拝者のほとんどがこの南大門を通るわけですが、通過する人たちのほとんどが心は大仏さんに飛んでいて、「仁王さんは大きいなぁ」くらいの印象しか残っていないと思います。しかも人の流れが激しいので、じっくり見仏と言うわけには行かないと思います。
仁王さんも仁王さんで、本尊の大仏様を守るため鳩や小鳥のフン(金網で少しマシになりましたが)、風雨にも耐えながらいつまでも「現役」でいなければいけない、そろそろ「隠居」して博物館や国宝館といったところで、のんびり余生を楽しみたいと考えても余りにデカイ為、出来ないという悲しみを抱えているはず。もっと仁王さんを仏像として東大寺を守る「主役」として認識してあげましょう。
慶派、つまり運慶と快慶が「黄金タッグ」を組んで、それぞれ製作に当たって、なんと69日間の短期間で作り上げたといわれる、この二対の「金剛力士像」ですが私なりに勝手に色々解釈してみました‥。
まずお顔がとてもデカイ。しかし仁王さん自体がデカイ為、大抵は下から見上げることになるので、丁度顔の大きさが遠近法で体躯とマッチして見事なバランスとなる。それも計算して作られたのか、さすがは慶派。
そしてなぜか向き合っています。通常は2対の金剛力士像は門の外に向かって立っており、外に向かって「気」を発してお寺やご本尊を守っているのですが、なぜかこの南大門の金剛力士像はお互い向き合っています。なぜかよく分かりません、仏像解説の本を色々読んでもあまりこれに関しては書かれていないようで(顔が外に向いていると風雨が当たる為と一部の本には書いていましたが)、私なりに考えると、ちょっと仁王の目線が南大門の内側、つまり大仏殿の方向に向いているように見えるのです。つまり大仏殿の方向にも「気」を発しながら「あなたをお守りしていますよ」と無言のアピールをしているように思えるのです。そのために大仏様にお尻を向けるのではなく、向かい合っているのかもしれません。もしこれも計算されているのであれば、さすがは慶派!
それと同じ慶派の製作とみられる興福寺の金剛力士のような血管浮き出しのようなリアリズムは無いのですが、意図して作られたと思われる固い表情から来る迫力、威圧感を感じずにはいられません。
しかもこのような7mを超える慶派の彫刻が鎌倉時代には他に何体も東大寺にはあったそうな‥それらの仏像も戦火にあわず残っていたら‥ぜひ見てみたかった。
現在は金網でちょっと見にくくなっていますが、皆さんも東大寺に行ったときはこの金剛力士像にも注目してあげてください。きっと新たな発見があるはずです。
これも見仏の醍醐味‥