06年11月22日 第8回見仏ツアー あの仏像に逢いたくて
  
(奈良 秋篠寺 国立博物館 東大寺)

目的地は私の独断で…

今回の見仏ツアーの目的地は、私が独断で決めました。
私が今逢いたい仏像として、秋篠寺の「技芸天」、そして浄瑠璃寺の「馬頭観音」。このお二人に逢いたくて他の隊員に聞かずに勝手に決めさせてもらいました。
実は「技芸天」さんにはまだ逢ったことが無く、

  一枚の 障子明かりに 技芸天        汀子

  一獨に 春寧からむ   技芸天        青畝

  行春の 女身ゆたかに 技芸天        美穂女

というよに、多くの歌人がその美しさに惹かれて歌を詠むような、この「技芸天」に一目合いたいと思っておりました。

そして浄瑠璃寺の「馬頭観音」さん。
以前浄瑠璃寺に行ったときに、その凄まじい眼光の前で恐れをなしたことがありました。仏像好きの知り合いの方にと話すと、「あの馬頭観音にはたしか真後ろにも顔があるはず」と言っていました。浄瑠璃寺に居られた時は真後ろに回りこんで「第四の顔」なんて見ることが出来ませんでしたが、丁度今、「奈良国立博物館」の平常展にに特別展示されているそうな…このチャンスを逃す手はありません。
そんな私だけの勝手な思いを乗せて、三人の乗った車は、いつものように朝7時過ぎにに姫路を出発して、東に向かうのでありました。


どんぐり拾いに来たのか!?

秋篠寺は9時30分頃に到着。駐車場から東門に向かいますが、中々二人がついて来ません。何してんだろう?と思って振り返ると、二人が道端で何かを拾っているのでした。
「何拾ってるんや?」と聞くと、T 隊員は「どんぐり。リリーが好きやから」
リリー??なんでも今 T 隊員の家ではハムスターの「リリー」を飼っていて、どんぐりが大好物だとか…
N 隊員はなんでも庭に撒いてみるそうな。庭に撒いて木が生えてくると思っているのか?それ以上ツッコムのを止めて、二人が追いつくのを待って三人揃って東門から伽藍に入りました。
入って気がついたのは、まず苔の美しいこと。「とにかく庭園だけでも見る価値はある」というネット仲間の話どおり、庭園のあちこちに見られる緑の苔と紅葉の美しいさにツイツイ足を止めてしまいます。
伽藍に入っても隊員たちの「どんぐり拾い」は続きます。私は好きなだけさせてあげて、「もう一杯採れた?」と言って、隊員たちは「ハーイ」…(私は幼稚園の引率か?)
そうしている間に、あの「技芸天」の居られる国宝の本堂に到着。


ああ技芸さん…

本堂に入ってまず手前に居られる技芸天に目が行きます。
思ったより大きく感じられます。たしか像高2mくらいなのに、3mくらいに感じられる。意外に堂々とした印象。でも首を傾げてひっそりと立つこの技芸天を見ていると時間が過ぎるのを忘れてしまいそう。拝みに来た人々に向って、何か優しく語りかけてくれているように見えます。そしてこの技芸天の傾げた視線の方向に拝観に来ているオバサンたちが集まって、「わぁ、いいわ〜」って言っていました。私もこの技芸天と正面から見つめあいたくて、オバサンたちが移動してくれるのを待っていましたが中々動いてくれません。仕方なく離れて他の仏像を堪能しました。
地蔵菩薩、チョイ「タレ目」ですがそれがまた親しみを覚えていい感じ。
そして本堂の本尊である「薬師如来坐像」の両脇を固める「十二神将」達。鎌倉以降の像らしく、コミカルで本尊様を守っているのではなく、周りで華やかに踊っているといった印象。
そしてグッと来た「愛染明王」。「愛は大事、だが煩悩は絶て!」と私達に言っているようで、思わず「ハイッ!」って声にして言ってしまいそう…
そうしている間にも、時間が過ぎて次の目的地に向わねば。「ああ技芸さんまた来ます…」そう心の中で叫んで本堂を出ます。

次に本堂の向いにある「大元堂」。ここの本尊として、年に6月6日のみ御開扉の秘仏「大元帥明王」が居られます。怨敵調伏・鎮護国家を祈願する本尊らしく、逞しいお方。「是非逢いたかった」と大元堂の正面に飾られたこのお方の写真に話しかける私がいました。

そして伽藍をぶらっとしていると、なにやら気になる石仏が…
よくみると高下駄に杖、髭を蓄えたお顔を見ると「役の行者」っぽい。
石碑には「修験道行者ナンタラカンタラ…」(詳しく字が読めない)
多分「役の行者」だろうと思って写真をポチリ。

さあ、そろそろ次の目的地、「奈良国立博物館」で「馬頭観音」さんに逢いに行きましょう。


逸る心を抑えて…

車は秋篠寺を出て、更に東に向います。
お決まりの高畑駐車場に停めて歩きます。目標はモチロン「奈良博」。
奈良博の本館に入ってお目当てのお方に会いたくて先に先に進んでいこうとする私に、「せっかく来たのだから、もっとゆっくり見て行こう」と静かに諭す N 隊員.。
そう言われてハッとする私。確かに N 隊員.の言うとおり、でも早く見たい。
そんな感じで逸る気持ちを抑えながら N 隊員の「ゆっくり拝観ペース」に合わせていよいよお目当ての、浄瑠璃寺「馬頭観音」の居られる部屋に来ました。


馬頭さんが笑った!??

う〜ん、やっぱ良いですね馬頭さん。目が活きています!
二度目の出会いになりましたが、前回と同じくこのお方の目(額の目を合わせて三目)と合ったとき金縛りを食らったような感覚に襲われます。
そして後ろに廻って観ることができた「第四の顔」。

「どう?凄まじい形相でしょう」と N 隊員に言うと…
「う〜ん、俺には馬頭さんが笑っているように見えるんだけどな〜」
なんと彼には笑っているように見えるそうな!
でも、でも、でも…この馬頭さんのお顔をよくみていると…
「ワッ、ハッ、ハッ。どうだ、俺の形相に恐れをなしたか?」と勝ち誇って笑っているようにも見えるではありませんか!
ただ私が感化されやすい為なのか、それともこの馬頭さんが本当に笑っているのかは謎のままです…しかし N 隊員、いつも訳のわからないことをやっているようで、時として鋭いことを言ったりもする。謎の多い男…
別れを惜しむように馬頭さんから離れて、他の仏像を見に行きます。


グッとくる仏像の多いこと。奈良博、侮れません…

興福寺の「天部八部衆」の一人、「緊那羅(きんなら)」。
あの「阿修羅」を除いて、私が気になる八部衆の一人です。古代インドの異教の神であったことを示す「角」が額から生えており、額にある「第三の目」もイイ!顔なんかもう「インド人」ぽくてグッときます。

そして法隆寺の日本最古の四天王、その一人である「多聞天」。こんな所で逢えるとは…ヌボーッとした「前川清」風の無表情さがチョイ不気味なんですが、何故か惹きつけられます。通常の四天王は仏敵を睨みつけて威嚇しているのですが、この四天王は「不気味さ」で威嚇しているようです(多聞天さんスイマセン)。踏みつけられている邪鬼もとぼけた表情でいい味出しています。

さらに奈良博収蔵の「兜跋毘沙門天」。
東寺のオリジナルである、兜跋さんはまだ見たことありませんが、それのオリジナルに最も近い造形と言われるこのお方。東寺のお方ほど腰を捻っていませんが、それでもあのアニメちっくな目の表情は独創的で惹きつけられます。そして防具もカッコイイ。胸当てにある「鬼人面」の表情もカワイイ!

室生寺の十二神将。まだ行ったことのない室生寺の十二神将たちとここで逢えるとは…鎌倉以降の十二神将はコミカルな表情であまり好きにはなりませんが、この室生寺の十二神将は躍動感が漲っていてイイ!

まだ他にグッとくる仏像がいくつもありました。流石は奈良博、侮れません…


猿沢の池にて「うどん屋」探し

奈良博を出ると T 隊員が思い出したように言い出しました。
「こないだラジオで言っていたけど、猿沢の池あたりに美味しいうどん屋があるそうやで」
丁度お腹も空いてきたので、三人で猿沢の池に向うことに。しかし猿沢の池に着いてからも周辺を散策しましたが、うどん屋さんらしき店も無く、アッチコッチ歩いているうちに商店街に入り込んで、近鉄奈良駅付近まで来ている事に気づく。仕方ないので、すぐ目に付いたラーメン屋(天下一品)に入ることにしました。「ガセネタか?」なんて歩き疲れてツッコム気力も起きずに、ラーメン屋を出てまたトボトボ東大寺方向に歩いていきました。
途中ニューヨークから来たと言う、謎の白人オバアサンと孫らしき男の子の二人に捕まり、「依水園」への道を聞かれ、途中まで道案内したり、仏像写真で有名な「飛鳥園」に入って、あの小川光三撮影の仏像写真や絵葉書を買ったりしてかなり時間がロスしましたが、ヘロヘロになりながらようやく東大寺到着。


法華堂にてオバサンたちを羨ましがる

東大寺はやはり混んでいました。紅葉&修学旅行シーズンと言うこともあって、いつものように混雑した人ごみ、それを目当ての鹿、そして参道に転がった鹿のフン、この三つを避けながら法華堂に向いました。
法華堂内に到着するといつものように N 隊員は、畳の上で胡坐をかいて目を閉じます。T 隊員は私と同じようにアッチコッチ動いて諸仏を堪能します。
いつも目にするのですが、「この仏像何処にいるのだろう…」って受付で貰うパンフレットを見ながら「執金剛神」を探すオバサンたち。パンフレットには「12月16日御開扉」と書いているのですが、薄暗い堂内なので中々字が読めない。いつものようにお節介を焼いてオバサンたちに説明する私。
「タナカさん、12月16日だって。今年のその日は…あっ、土曜日だ、タナカさんまた来月の16日に行きましょうよ」なんて騒がしいオバサンたちは法華堂を後にするのでした(来月も来れるなんて羨ましいなぁ)。
今回はここに辿りつくまで時間が掛かったこともあり、30分くらいで法華堂を後にします。次に向うのは、すぐそばにある「四月堂」です。


「普賢菩薩」見るのを忘れた四月堂

久々の四月堂です。ここには脇手が合掌する手と同じ太さの千手観音がいます。つまり脇に生えている手が太い為、普通なら暑苦しい感じがするのですがそれをあまり感じさせないところがイイ。他の二人は外でお賽銭上げているので私だけ堂内に入りました。狭い堂内で私一人が千手観音と対峙します。周りには何体か仏像があるのですが、「私だけを見なさい」って迫力で迫ってくる千手さまの前では、目を逸らすことが出来ません。しばらく経って受付のおじさんに朱印書いてもらって四月堂を出ました。

さあ日が傾いてきたことだし、色々寄り道あったけど「仏像で満腹」(N 隊員談)になったので、大好きな「奈良漬け」でも買ってそろそろ帰りましょう…

しかしその後、帰りの車の中で気が付く。
「四月堂で象に乗った普賢菩薩を見るのを忘れた!」
受付のオジサンに言えば開扉してくれる秘仏の普賢菩薩。可憐なお顔のあのお方に逢うのを忘れるなんて…

でもイイか。今回は私がただ「逢いたい」だけで組んだコースでしたが、他の隊員たちも結構満足してくれたみたいで「実りのあった見仏」ということで、締めくくりましょう…

駐車場から秋篠寺へ向かう道。オッサン達がどんぐりを必死に拾っています。通りすがりのオバアサンにはどう映ったか?

この緑の美しい苔だけでも一見の価値ありです。

手前 N 隊員、奥 T 隊員。
変なオッサン達のどんぐり拾いは伽藍に入っても続きます。

国宝の秋篠寺本堂。なんか新薬師寺の本堂に似ていますな…

是非逢いたかった「大元帥明王」。
逞しそうなお方です。

高下駄に髭、杖とくると、多分あのお方でしょう…

「社務所」前では、モミジの葉を拾うオジサンたちがいました。天ぷらにでもするのか?
何か我々に似ているなぁ(N隊員談)…

奈良博の前にある、古びたお店、「古美術写真  永野鹿鳴荘」。
奈良公園に来る度、いつも気になっています。仏像写真を販売しているのか?中を覗くと誰もいない。

再び奈良公園方面に歩くときに足がヘロヘロになってきたので、近道として興福寺の伽藍内を横切りました。
「国宝館」を通り過ぎる時に、横目で「阿修羅さん次は絶対逢いに行きますから…」

「飛鳥園」で買った仏像写真。
買ったのはもちろん私が大好きなこのお二人です。

東大寺はいつものような混み具合。人と鹿と鹿のフンを避けて通ります。

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