大仏様とともに  音声菩薩 (奈良 東大寺) .

東大寺の大仏殿。その前庭の回廊に構える国宝「金銅八角燈籠」。
もう正面には大仏様が見えているので、訪れた人たちはこの燈籠には目もくれずに大仏殿の中へ‥
しかしこの「金銅八角燈籠」にはすばらしい4人の菩薩さまが居られるのです。

大仏開眼とほぼ同時期に制作された「金銅八角燈籠」。
総高は約4.6m、現在わが国に残る銅燈籠で、最大最古のものですが東大寺創建当時はさらに高かったそうで、天平時代の面影を今に伝える貴重な文化財なのです。

八面の火袋(ひぶくろ)の窓は羽目板になっており、そのうちの四面に浮き彫りにされている「音声菩薩(おんじょうぼさつ)像。
笙(しょう)・横笛・銅跋子(どうばつし)・尺八などをそれぞれ奏でており、健康的で豊かな表情。童子のようなお顔、風になびく衣の表現の美しさ。そして半彫りなのにとても立体的で、奥行きがあるように見えて当時の鋳造技術の高さを見ることが出来ます。

今にも素敵な音色が聞こえてきそうな音声菩薩の向こうには大仏様が座っておられます。そこで大仏様のお顔をみると、彼らが奏でる音色に微笑んでおられるようにも見えてきます、もう1200年以上も前からずっと‥

太平洋戦争後、進駐軍とともに日本にやってきた、文化財に詳しいアメリカのある高官が、この燈籠の音声菩薩を見て、「日本のアメリカに対する戦後補償は、この燈籠で充分だ」と言ったといわれています。
真珠湾の艦隊に大打撃を与えたりしてきた日本がこの燈籠一つで償えるとは‥凄い喩えですが、そう思える位に、彼はこの燈籠の素晴らしさに気づいたのでしょうね。

大仏様に会いに行く人たちにも、大仏殿の前で一度立ち止まってこの燈籠の素晴らしさを感じて欲しい、そう思えてなりません。

そして音声菩薩様、いつまでも素敵な音色を、大仏様や私達に奏でてくださいね。

横笛を吹く、南西面の音声菩薩。
200円切手で一躍有名に。

東北面の音声菩薩。一度盗難にあって、帰ってきたのですが、羽目板の一部破損により、現在は複製品が取り付けられております。

国宝「金銅八角燈籠」。
大仏殿に入る前にじっくり見てください。素晴らしい浮き彫り技術です。

■ BACK
■ HOME
※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。                                



■ HOME