06年5月1日 「ダブル如意輪」ご開帳 (姫路市 書写山 円教寺)

行かねばなるまい円教寺

今年に入って、円教寺で「如意輪観音像」が発見されました。
鎌倉時代の作といわれ、これまで本尊の後ろにあった、昔から閉じられていた厨子が、このたび開扉されて発見されたと聞きます。
しかも今年は、円教寺の開祖である「性空上人」の没後千年に当たる、「開山上人壱千年御遠忌」の年。期間中は「特別開帳」として、年に一日(1月18日)だけ開帳になる本尊の「如意輪観音」とダブルご開帳になるそうで、まさに「行かねばなるまい」状態。
デジカメ、見仏スコープ、朱印帳を持って書写山に、朝一のロープウェーの時間に間に合うように車を走らせました。そしてロープウェーの山麓駅に到着。朝始発(8:30)のロープウェーには私を入れて10人くらい乗り込んでおりました。
ロープウェーでグッと来たのは乗務員のお姉さん。今までは年齢の高そうな(失礼)、いかにもベテランの乗務員で、マイク片手に書写山案内していましたが、新入社員が入ったためか、今までより遥かに平均年齢が下がったみたいで、若い綺麗なお姉さんに替わっておりました(喜)‥(まさに「スケベオヤジ」状態)

ロープウェーを降りて円教寺に向かう参道(というか山道)をひたすら歩くのですが、私と一人のおばあさん以外はみんなバスに乗って、一気に円教寺に向かいました。
西国三十三箇所の本尊のレプリカが配置されている参道を、ゆっくり見仏しながら上っていくと、サッサと息も切らさず仁王門あたりで私を追い越していく元気なおばあさん。「こやつ、歩き慣れているな」と思ってそのおばあさんの後姿を見ていました。


オペラグラス1個200円 by 円教寺

そうしている間に本殿である「摩尼殿」に到着。ここに発見された「如意輪観音」と本尊の「如意輪観音」のダブル如意輪が居られるわけです。
摩尼殿入り口の横に、内陣に入る扉が開けてあって、中にお坊さんが待ち受けており、「お清めをいたします、合掌」と言って、合掌する私にお清めの水を振り掛けてくれました。そして入り口で販売していた「オペラグラス200円」。買おうか迷いましたが、丁度スコープも持っていたのでやめました。オペラグラスに「円教寺」なんて書いてあったら、買って自慢するのですが‥(セコイ)
しかしオペラグラスをお寺で販売するとは‥それだけ小さい?それとも拝観位置から遠い所に置いてあるのか?チョット不安になりますが、早々に内陣に突入して「ダブル如意輪」と対面します。


さすがにグッとくる「ダブル如意輪」

内陣の中央にガラスケースに厨子ごと収めてあった秘仏「如意輪観音」。
一言で言うと、美少年が「うたた寝」しているかのよう。薄暗い本陣内で、ガラスケース内の両サイドからの柔らかいスポット光で「ふわっと」浮き上がるお姿。
頬の張りがあり、ちょっと面長。衆生の悩みや願いを叶えてあげてホットして「一休み」しているかのよう。「如意輪さま!」って言ったら、パッチリ目を開けてくれそうな感じがしました。
像高は30pくらいで本当に小さい如意輪様ですが、「見仏スコープ」を使うのを忘れるくらい、引き込まれました。衣や台座の金箔もかなり残っていて、とにかく美しい。
そして後ろに鎮座する本尊の如意輪さま。
大正時代の本殿火災の後に作られた、白木の如意輪さま。逞しい表情で、あらゆる衆生を救ってくれそうな力強いお顔です。秘仏が「美少年」なら、本尊のほうは「力強い女性」と言う感じ。参道に配置されているレプリカで見るより、やっぱり本物はイイ!
そして周りを固める重文の「四天王」。
持国天以外の3人は歯をむき出して、「俺たちが守る!」って言い出しそうな強持ての表情が力強い。邪鬼の踏まれっぷりもイイ感じです。
「本当に良いものを見せてもらいました」状態で大満足。


謎の「見仏ばあさん」と意気投合‥

本陣内でただ一人うっとりしていると、参道で私を追い越したおばあさんが入ってきて、しばらく秘仏の如意輪様を拝んでから私に話しかけてきました。
「この如意輪さまは本当に若々しいですね。色々な如意輪さまを見てきたけど、この如意輪様はすばらしい」から話が始まって、そこから本陣内で私とおばあさんの立ち話が始まりました‥
なんでもこのおばあさんは、私と同じ姫路に住んでいますが、日本中の有名な仏像を見て廻っており、「西国三十三箇所」はもちろん、「秩父三十三箇所」「若狭三十三箇所」など。そして「四国八十八箇所めぐり」も満願しており、琵琶湖の「湖北地域」の十一面観音めぐりも何度も行ったと言う凄い人でした。そして私も大好きな故西村公朝仏師の本も全て持っており、仏像に関して本当に詳しい人でした。秘仏の観音様の前に置かれた、密教仏具の説明もしてくれて恐縮しまくりです。
立ち話が始まって15分(如意輪さま、騒がしくてスイマセン)くらいして、どっと拝観者が本陣内に入ってきたので、私とおばあさんは本殿を出て、一緒に三堂(大講堂・食堂・常行堂)に向かうことにします。


大講堂のお釈迦さまと繋がる

三堂のうちの「大講堂」。今回は内部も公開されており、本尊の重文「釈迦三尊像」も公開されていました。
中尊の「釈迦如来」は堂々とした体躯で、引き締まったお顔。右手は中指と親指をつなげた印を結んでおり、そのくっ付いた中指と親指から五色の細い糸が出ており、それが大講堂入り口の格子窓で五色の布のテープに繋がっていて、さらにそのテープが大講堂前に立ててある巨大な「卒塔婆」に巻きつかれて、垂れ下がっている。その垂れ下がっている五色のテープを触ると「ご利益」があるそうです。
ここでおばあさんの「解説」が入ります‥
「五色の布」は大宇宙、つまりお釈迦様の教えを表したそうで、それを触ることによって、お釈迦様と「繋がった」ことになるそうです。(そういえば平清盛が死ぬ時に、阿弥陀如来像と結んだ五色の布を握り締めて往生したって話聞いたことあるぞ)思わず五色の布テープを触りまくる私‥さすがはおばあさん、一緒に大講堂に拝観に来ていた老夫婦と共に感心する私でした。
その後、常行堂の本尊で重文の「阿弥陀如来坐像」を拝観して、外に出るとおばあさんの姿は見えません。
そのまま一人で奥の院にある、「開山堂」の「性空上人像」を拝みに、さらに奥へと向かいます。


「性空上人像」にもグッときました

三堂から歩いて5分ほどで奥の院「開山堂」に到着。
いつもは閉まっている「開山堂」の扉が開いており、お賽銭箱の横にぽつんと座っておられる「性空上人像」。
この像と向き合う形でこちらも座ります。わずかその距離2m。
なんでもこの像も最近(平成12年)になって発見されたそうで、虫食いや腕の剥落など痛みが激しく、それがかえって「風雪や苦行に耐えてきた性空上人」といった感じで、心打たれました。こちらから「性空さん」に問いかけると返事が返ってきそうなリアルな像です。
そして「開山堂」の屋根の四隅を支えている、左甚五郎作の「金剛力士」。あまりの重さに耐えかねて四人のうち一人が逃げ出した伝説。残りの三人は本当に苦しそう。早く帰ってきてあげて‥そう思いながら開山堂を後にしました。


「引き出し」の多い円教寺、恐るべし‥

本当に円教寺は「引き出し」が多くて感心します。
今まで何度も来ていますが、その度に「新たな発見」があり、飽きることがありません。今回は「ダブル如意輪」のご開帳もありまさにグットタイミングでした‥

ところで書写山を降りるまで、結局あの「謎のおばあさん」と会うことはありませんでした。「もしや何かの使いでは?」と変なことを考えながらロープウェーで下山。
ロープウェー乗り場横の駐車場で、車の中で持ってきた弁当(カミサンが作ってくれた)を食べていたら、駐車場内を歩いているおばあさんを発見。「日産キューブ」を運転して駐車場を出て行くのを見ながら、「やっぱ人間だったか、でも面白い凄いおばあさんだったなぁ」と弁当食べながら感心しました。

円教寺と同じく、「引き出し」の多いおばあさんと出会えた、楽しい「一人見仏」でした‥

参道では普段見られない各お寺の本尊たちが拝めます。興福寺南円堂の「不空羂索さま」です。

仁王門で、その後意気投合するおばあさんに抜かされる。

新緑の綺麗な摩尼殿。この時期、円教寺は「新緑まつり」の時期でした。

秘仏「如意輪観音」(円教寺で買ったパンフレットより)。
グッときました。まさに「国宝級」のお方。

大講堂の「釈迦如来」。(撮影許可もらいました)
写真では見れませんが、右手の指から細い五色の糸が出て‥

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大講堂外の卒塔婆に繋がっています。きつく握り締める私(撮影:謎のおばあさん)

謎のおばあさんと一緒に大講堂に向かいます。大講堂から五色の布が出ています。

「おっ、重たい‥逃げ出したヤツ早く帰って来い」と苦しそうな「金剛力士」

※ここに掲載する写真は一部パンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。

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平成12年に発見された「性空上人像」(円教寺で買ったパンフレットより)。傷みが激しいですが、それがかえってイイ味を出しています。今にも何か語りかけてきそうなリアルな像です。




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