06年2月1日 第6回見仏ツアー 雨の中 それぞれの奈良
(薬師寺 般若寺 東大寺法華堂

それぞれの癒し

久々の3人揃ってのツアーです。
今回は奈良において、3人それぞれの思い入れのある場所を目指しました。

まず T 隊員は薬師寺。薬師三尊と、薬師寺の周りに広がる「西ノ京」のあの風景にもう一度、出会いたいとのこと。
私は般若寺。十数年前にバイクで一度行ったのですが、伽藍に配置されている優しいお顔の石仏たちが、なぜか最近気になって、もう一度逢いたくなりました。
そして N 隊員はもちろん大好きな東大寺法華堂。堂内の天平諸仏、特に「持国天」フェチの彼は、そこにおいて癒されるのが一番だとか‥

それぞれの奈良を抱いて、私たちを乗せた車は、朝の7時に姫路を出発し、雨の中を東へひた走ります。


雨の薬師寺にてありがたいナマ説法を受ける

薬師寺に到着。更に強くなった雨の中、傘を差して参道を歩いて行きます。
参道途中に、前回薬師寺に来たときに、 T 隊員が気になった西の京の風景の一つ、「木のトンネル」に再び出会いました。参道途中から脇道が出ていて、踏切を越えて「木のトンネル」が外に続いており、その先に西ノ京の田園風景が広がっているのでした。
我々3人は踏み切りを渡り、木のトンネルを通って、西ノ京ののどかな田園風景を見ていたのでしたが、何せ冬の雨の中、寒いし冷たいので3人とも長居はせず、無言で薬師寺の伽藍をめざして再び参道に向かいました(寒)。

薬師寺の中門をくぐると、なんとそこに薬師寺の執事である加藤 朝胤(ちょういん)さんが待ち構えていて「今から金堂で説法を行います。どうぞどうぞ」と言うではないか。
金堂、しかも薬師三尊の傍でありがたい「ナマ説法」を聞けるとなると行かねばなるまい。「イキマス、イキマス」と我々3人は朝胤さんに導かれるまま、金堂に入りました。
しかし平日、さらにシーズンオフの雨の日とあいまって、金堂には我々3人と老夫婦の二人、そしてお寺が好きそうな中年女性の合わせて6人だけ。
それだけに並べられた一番前の席で、朝胤さんの至近距離で説法を聞けるありがたさ。
「今日は6人だけですか。お寺の敷地を伽藍(がらん)と言いますが、今日は本当にガラン(伽藍)としていますな。」と笑いを誘う。いかにも師匠である、故高田好胤さん直伝(?)の「掴みはOK」で説法が始まりました。
やがて私たち煩悩の塊にはありがたい説法が終わり、薬師三尊におまいりしました。
やはり薬師三尊はいいですね。凛々しい薬師如来、そして悩ましい日光・月光菩薩の「プルンとした」お腹と、「クネッとした腰」に今回も見惚れました。
「大講堂」、そして前回のツアーで寄るの忘れていた「東院堂」に向かいます。そこで初めて見る「聖観音立像」、もうウットリ。腕にかかる薄い衣の流れをよくぞ銅で創ったものだと感心しました。ある意味、金堂の薬師三尊よりも「手間暇かけて創られた」そう感じずにはいられません。
今回は「玄奘三蔵院伽藍」が公開期間ではなかったので、そこで諦めて薬師寺を後にすることにします(平山郁夫画伯の壁画を是非見たかった)。
薬師寺を出て、参道を駐車場に向かって歩きながら、「さっき薬師如来に御参りしたとき、何か身体が暖かくなってきたよ」と二人が揃って言っていたのが印象に残りました(来てよかった)。
そして私は薬師寺で「写経セット」を思わず買ってしまいました。
「般若心経」を写経して薬師寺に郵送すると「勧進」として、金堂の二階に納めてくれるそうで、いつかはやってみたかったのですが、家に持ち帰って出来ることから今回ついに買っちゃいました。
ますます強くなる雨の中、車は次の目的地、般若寺に向かいます。


般若寺で癒される

般若寺に到着。やはり私たち以外、誰もいなかった。
入り口で「入山料」として400円払って入ります。
伽藍自体が「植物園」のような感じで、あちらこちらにスイセンが植えられていました。
般若寺は「花の寺」として有名で、季節によってコスモス・紫陽花・山吹・スイセンなど植えられています。この花たちは実は、住職さんたち自身が手入れをされているそうで、花の季節になるとたくさんの参拝者でにぎあっているようです。
入り口をすぎると目の前にすぐお目当ての「西国三十三観音」の石仏が並んでいました。
この中の「如意輪観音」が特に気になります。優しいお顔で見ていて飽きません。
しかし他の隊員が寒くて、早く本堂に入りたがっているようなので、もう少し見たかったけど私もあわせるように本堂に入ります。
私たちが本堂に入ると、住職さんが堂内の照明を付けてくれて、厨子の中にいる本尊の「文殊菩薩」との御対面です。
「文殊菩薩」は我ら昭和38年生まれ、つまり「卯年」の守り本尊で、学業の神様とも言われています。厳つい顔の獅子の上にちょこんと座ったとても親しみのもてる観音さまです。そして髷が八つあることから「八字文殊」とも言われています。
さすが学問の神様と言われるだけあって、いかにも賢そうなきりっとしたお顔。いつまで見ていても飽きません。
三人とももうオッサンなので、自分たちよりも子供の成績アップを願って、お祈りしました。
そして私と T 隊員は子供の成績アップを願って、「ミニ・ランドセル」のキーホルダーを買いました。中にお守りが入っている可愛いキーホルダーです。丁度今年、次男が小学生になるので、新しいランドセルにぶら下げてやることにします。


ここは異国か東大寺

最終目的地の東大寺に到着しました。
いつもなら駐車場も一杯で、「高畑駐車場」に停めてテクテク歩くのですが、今回はサスガに「大仏殿前駐車場」に余裕で駐車できました。
早速法華堂に向かいます。しかし南大門から法華堂に向かう参道は人もまばらで、すれ違う人たちはみんな広東語やハングル語、つまり海外からの観光客ばかり。もしや日本人は我々だけではないか?と言うような不安もよぎる平日の東大寺でした。たまに日本語を話しながら歩く人とすれ違うと、思わずホットしました。
「東大寺はシルクロードの終着駅」と言われるだけあって、まさに国際感覚です(?)。
南大門下には雨宿りする鹿たちで一杯でした。
今回も大仏殿には寄らず、あくまでも法華堂オンリーです。
法華堂に上がる頃には雨ももう「土砂降り状態」で、靴下まで雨が染みてくるし、寒いしもう早く堂内に入りたい一心で、川のように水の流れ落ちる階段を上がっていきました。


法華堂で「ボランティアガイドさん」になる

法華堂入り口で朱印を預けて、今から入ります。
入った途端、 N 隊員は彼の「ワールド」に入ったようで、畳の上にあぐらをかいて、本尊の「不空羂索観音」と向き合いジッとしています。時々瞑想したかのようにジッと目を閉じて、何かを感じ取っているかのよう‥
その間、私と T 隊員は堂内を歩きながら諸仏を細かく見て行きます。
いつものように思い思いのスタイルで、法華堂を「堪能」していました。
しばらくして、老夫婦一組が入ってきました。何やら堂内に貼ってある「執金剛神像」の写真を見ながら、「あれとチョット違うね」「何所にいるんだろう」という話声が聞こえてきます。
久々の「日本人」と会った喜びも手伝って、いつもの「お節介虫」が騒ぎ出し、「このお方は、本尊さんの後ろの黒い厨子に居られて、12月16日しか見れない秘仏なんですよ」と私は老夫婦に説明を開始。
すると今度は、御主人から話しかけてきました。
「私は以前、中国で兵馬傭を見てきたのですが、ここの四天王と同じような服装をしていて、よく似ていますね。ここの仏像も土で出来ているのですか?」
から話が始まって、私の方からは、各仏像の造型方法や年代など、私の知る限りを教えてあげました。
最後に奥様から「あなた、良く御存知ね。このお寺の関係の方?」
私が「いえいえ、ただの仏像好きの者ですよ」と答えると、ニッコリ笑って頭を下げてくれました。
このやり取りを後ろで聞いていた T 隊員は笑っていましたが、N 隊員は「ん、何かあったの?」と、完全にトランス状態に入っていた為か何があったか知らなかった様子‥


まあ良かったんじゃない。

法華堂を後にして、駐車場に向かいます。
途中の参道で、あまりの寒さに甘酒の飲む N 隊員。私と T 隊員はホットコーヒーとホットカルピス。
寒くて冷たかった冬の奈良だったけど、「まあ良かったんじゃない」と各隊員が言ってくれたんで、ホットーコーヒー以上に「ホット」しました。
いつもは忙しくて「見仏ツアー」以外は殆ど顔を会わせない三人ですが、「まあ良かったんじゃない」の言葉に表れるように、今回のツアーでも充分「息抜き」が出来たんじゃないかなと思った雨の奈良でした‥

あっ、二月堂横の茶屋に寄って、「ワラビ餅&抹茶セット」食べるの忘れてた!!
次回のツアーまで「お預け」ということで‥

雨の中、「木のトンネル」を行ったりきたりする怪しげな中年たち。

雨の金堂。加藤朝胤さん(中央)に導かれるように入っていきました。

いつかはやりたかった「写経」。筒の中に写経セットが入っています。筒がそのまま封筒になっていて、そのまま薬師寺に郵送することが出来るスグレモノ。

西国三十三観音の石仏たち。スイセンはもう少しで満開か。

この「如意輪」さまに会いたかった。

「ミニ・ランドセル」のキーホルダー。お兄ちゃんが怒るので二つ買ったのは言うまでもありません‥

参道から南大門を望む。こんなに人が少ない東大寺は初めてです。しかも日本人の少ないこと。

雨の中、法華堂に向かう階段にて。中年たちはトボトボ歩きます。

南大門には雨宿りする鹿たちがたくさん避難中。T 隊員が避けながら歩いていました。 

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雨の二月堂。
後から考えると、雨の奈良も「しっとり」していいもんですなぁ(そのときはそんなこと考える余裕なんて‥)




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