怒らせたら怖そうなお方  兜跋毘沙門天立像 (京都 鞍馬寺) .
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※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。                                

「天」が付くくらいだから、「守護系」の仏像でありますが、私は「攻撃系」の仏像に思えてなりません。

四天王の一人である「多聞天」。この「多聞天」が単独で祀られる場合は「毘沙門天」になります。その毘沙門天の特殊型といわれる「兜跋(とばつ)毘沙門天」。
唐伝来の、東寺の兜跋毘沙門天像を祖形として何体かの兜跋毘沙門天が平安時代に創られました。そのなかでこの鞍馬寺の兜跋さんが個人的に気になります。

胸に人面風の飾り、腰には獅噛(しがん:獅子が噛み付く様相の飾り)、金鎖甲(きんさこう)という鎖を編んで作ったコートのような鎧を着て、筒状の宝冠を被った独特のいでたちはまさに異国風。
そして左右に尼藍婆(にらんば)・毘藍婆(びらんば)という二人の夜叉神を従えた地天女に支えられています。

伝承によりますと、唐の「玄宗皇帝」の時代、西域の出城が異民族に襲われたときに、当時の密教の高僧であった不空三蔵(空海の唐での密教の師である恵果の師にあたる)が密教の経典「仁王経(にんのうきょう)」を唱えた功徳により、巨大なこの兜跋毘沙門天が空中に出現して、一撃で敵陣を壊滅させたそうです。
それ以来、この兜跋毘沙門天は王城鎮護の神とされています。

東寺の兜跋さまのように腰をひねったような動きがなく、静かに佇んでいますが、逆にそれが「静かな闘志」を光背の炎のようにメラメラ燃え上がらせているように思えてなりません。
チョット開いた唇から覗かせる歯、少し膨らんだ鼻、そして眉間に皺を寄せて睨みを効かせる表情は、守護しているというより、今から気合を入れて「いざ出陣!」という表情に感じられてなりません。
そして右手に持つ「宝棒」を振りかざして敵を撃滅させるシーンを思い浮かべます。

毘沙門天と言うのは元来、下級神であった夜叉の首領(ドン)であります。そして別名である「多聞天」は、四天王のうちで最強であると言われております。

怒らせたら、何をするかわからないような「危険な匂い」がプンプンする怖いお方‥
でも気になります。

昔、一度だけ鞍馬寺には行ったことがあるのですが、この「兜跋毘沙門天」に逢ったかどうかさえ覚えていないので(仏像好きとして失格か)、いつか機会を作って、じっくり逢いに行きたいです。

唇の間からチョット歯を覗かせて、睨みを効かせています。
怒らせたら怖そう‥
何をしでかすか判らない、本当に「危険」なお方。

右手に宝棒、左手に宝塔を持ち、二鬼(夜叉)を従えた地天女に支えられています。
「さあ、今から出陣!」




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