凛々しいお医者さん  薬師三尊 (奈良 薬師寺) .

薬師如来「お薬出しておきますから」
日光・月光「お大事に」
と言う声が聞こえてきそう。

奈良薬師寺。
南大門をくぐり抜けると正面に金堂が見えます。左右にあの有名な三重塔である「東塔」・「西塔」が見えますが、金堂の正面の扉が開かれており、金堂内に居られるこの「薬師三尊」が常に丸見え状態で「三重塔をもっと見ていたい、でも早く金堂にも行きたい。」と悩んでしまいます‥

薬師三尊。昼も夜も二十四時間、衆生を病の苦しみから救おうと「日光・月光菩薩」を脇侍として両側に従えております。

まず中央の「薬師如来」。どっしりとしてバランスがよく、銅像ですがなぜか「やわらかみ」が感じられ、触って見ると弾力があるかもとさえ思ってしまうほど、金属らしさ、冷たさが感じられない不思議な仏像です。
こちらに向けた左手にはくっきりと水かきである「縵網相」(まんもうそう)が見られます。これまで色々な如来像を見てきましたがこれほど大きな水かきがあるのはこの薬師如来くらいで、指の第一関節からすでに水かきが出ているところを見ると、出来るだけ多くの衆生をもれなく救ってあげようとする気持ちさえ感じられます。

そして「日光・月光菩薩像」。本尊の薬師如来に向けて腰をひねって左右対称に立っております。
そしてプルンとしたお腹が気になります。薬師如来とおなじくやわらかみがかんじられ、たるんだお腹を指で押したくなるのは私だけでしょうか‥
そして両菩薩とも内側の手から下がった天衣が途中で折れてしまって無くなってるのも気になります。それと本来持っているはずの薬師如来に向けて差し出している「蓮華」の花もなくなっております。薬師寺、特にこの金堂は台風で倒壊したり、何度も戦火に合ったりしたのですがそのたびに僧たちが命を懸けて運び出していたため無くなったり、破損した為なのか‥
しかし、1958年の修復調査で両脇侍でさえ3トン、本尊は12トン(台座を含め)もの重量があることが判ったのですが。どうやって運び出されたのか?とても気になります。

この三尊をセットで見ると「薬師寺医院」の先生と看護婦に思えてきます。
凛々しく、厳しそうですが患者のことを気にかけてくれる先生とチョット怖そうな看護婦さん。
造立当初は鍍金(ときん)によって黄金に輝いていたと言われますが、現在は金箔は完全に無くなっており、黒光りしている薬師三尊像。
しかし私は金色よりもこの黒光りが好きです。金ピカは「ありがたみ」は感じるかもしれませんが「大病院の先生」的感じで、黒いほうが地味ですが、「町の医院の先生」で親しみが感じられるのです(あくまでも私的ですが)。

診察を終えた後で「じゃあ、薬を出しておきますのでしっかり飲んで早く直してください」という先生。「お大事に」と昼は日光さん、夜間は月光さんの看護婦が声をかけてくれます。

私たちの病気(心の病も)を確実に直したいがため、厳しいお顔になるのでしょうね。


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