ワイルドだけど何か妖しげ  降三世明王 (京都 東寺) .
※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。                                

小指を絡めて、人指し指をおっ立てる「降三世印」、思わず真似てしまいそう‥

四つの顔に八本の腕、異形の姿にただ圧倒されます。
踏まれている二人もいい苦しみっぷり。
決めポーズもカッコいい。

京都の東寺、
空海が最大の保護者である嵯峨天皇から下賜された寺院であります。
空海が入る前は金堂に薬師三尊を本尊とする寺院でありましたが、下賜されてからまず彼は東寺を真言密教の根本寺院に再編成すべく、金堂の北側に講堂を建設してその中に密教の理念にもとづいて、独特な教義と構成を持つ21体の尊像作る、これがいわゆる「立体曼荼羅」なのです。

立体曼荼羅は須弥壇中央に密教の根本仏である「金剛界大日如来」を中心にした5大如来による如来部、東には「金剛波羅蜜菩薩」を中心にした5大菩薩による菩薩部、西には「不動明王」を中心とする5大明王による明王部、そして四方を「四天王」に守らせ、左右を「梵天」と「帝釈天」に守らせるという黄金の配置。
その5大明王の中でもこの「降三世(こうさんぜ)明王」が特に惹きつけられます。

四面八臂(四つの顔に八本の腕)の異形の仏像で、ヒンズー教の最高神でもある自在天(シヴァ)と妃の烏摩(ウマ)を踏みつけています。
これは密教では自在天は三世(根本の三つの迷い・欲)の主と言われ、それを降伏する為に降三世明王は彼を踏みつけている、つまり我々衆生の三世を打ち砕いてくれる明王と言うことなのです。
そしてこれら異形でいままで見たことのないような仏像を空海より製作依頼を受けた仏師たちは最初は大変戸惑ったことだろうと思います。仏像が完成して、開眼供養が行われたのが空海が亡くなって4年後のことを考えると、色々仏師たちの試行錯誤の繰り返しがあったことでしょう。


髪の毛をおっ立てて、牙をむき、いろんな武器を持ち、光背にはメラメラ赤い炎が燃え上がっております。憤怒の表情にはただ圧倒されるばかり‥
そしてこのポーズになぜか魅せられます。烏摩(ウマ)に変わって私も踏みつけて欲しいとさえ思ってしまいそう(やはり私はMなのか)、歌舞伎の決めポーズのようでカッコいいです。

しかし密教系(特に明王など憤怒系)の仏像を見ていつも思うのですが、怒りに燃える表情でありながら、体は「まろやか」というか豊満な肉体描写でなにかアンバランス。
それがかえって、妖しげ、官能的な雰囲気がにじみ出ている感じを受けるのです。
かつてみうらじゅんが「密教って何かワイルドで、湿っぽい」と言う表現をしていたのはこういうところからくるのではないかと思うのであります。

「ワイルドだけど何か妖しげ」なこの仏像、先日久々に京都で会ってきたのですが、また会いに行きたくなりました。

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