2005年04月18日 あいたた観音に魅せられて (加古川市 鶴林寺)

「ご近所見仏」として加古川市の鶴林寺に行きました。

鶴林寺は飛鳥時代に建立され、聖徳太子とゆかりのある「播磨の法隆寺」と言われ、地元でも「刀田山の太子さん」と親しんで呼ばれている古刹です。

20年位前に一度訪れたことがありましたがその時はただ友人たちと伽藍内をブラブラしていただけでどんな仏像があったのかも詳しく覚えていなかったので(仏像好きとして失格か?)今度こそ じっくり時間をかけて見てやるぞと意気込んで車を走らす私でした。
家から30分弱で到着。駐車場は鶴林寺公園の駐車場と兼ねていて無料(エライ)。平日の朝9時過ぎで誰もおらず、ちょっと得した気分で鶴林寺へ向かいました。

まずは仁王門。仁王さん並みににデカイ草履が飾ってあって、はっきり言って仁王さんが迫力負けしていました。
ちょっとかわいらしい仁王さんに挨拶して門をくぐって拝観料と宝物館の入場料を合わせて500円払いって、伽藍に入ります。

鶴林寺は五木寛之の「百寺巡礼」、そしてつい最近、人気TV番組の「トリビアの泉」で「ウインクしている仏像(十二神将)がある」で知名度がアップして拝観者が多いだろうなと思っていましたがやはり平日の朝一番ということで、私以外2、3名位しか伽藍にはいませんでした。

まずは正面にデンと構える国宝の「本堂」へ。
本堂内陣には中央に固く扉が閉められた宮殿があり、中には秘仏「薬師三尊像」がおられるようですが、なんと60年に1度の開扉で50年近くも先でないと拝めないそうで、「秘仏」という言葉にトキメキをおぼえる私にはちょっと不満が残りました。たしか20年位前に来たときも「開けろ、開けろ」コールを心の中でした覚えがあります。
その宮殿の周りには像高が1m位の「十二神将像」が周りを囲んでいましたが、宮殿前に柵がしてあって近くで拝めないという状態だったのでフラストレーションがつのる一方でした。
まあ仕方ないと思ってそこで御朱印をもらい、次に「新薬師堂」へ向かいました。

「新薬師堂」は江戸時代にある医者が60年に一度だけの開扉の薬師三尊だけではなく、衆生のためにいつでも拝めるようにと新たに薬師三尊と十二神将をこの「新薬師堂」を建立して納めたということで、中に祭られている薬師三尊も十二神将も江戸時代の作らしく、人々を救うためというより、人々に親しまれるような作風であって、何かコミカルな表情で私としては「グッ」と来るものがあまりありませんでした。「トリビアの泉」で紹介された「ウインクする十二神将像」の摩虎羅さんもコミカルで本尊の薬師如来さんをお守りするというより親しみを優先するような表情で一般的にウケても私には何か「グッ」とこないなというのが残念。

不満が増えつつもメインディっシュであるお目当ての聖観音像、別名「あいたた観音」めざして「宝物館」に到着。  
まず部屋の中央にお目当ての聖観音像がありますが最初はわざと無視してその他の仏像を鑑賞しました。
平安時代の作品が中心ですが視界に入るこの聖観音像が気になって集中出来ません。阿弥陀三尊像の脇侍である「文殊菩薩」の乗っている獅子の表情がかわいらしい位しか思えませんでした。

※この聖観音像には伝説があります‥。その昔この像を純金で出来ていると思い込んだ盗人がこの寺から盗み出して溶かそうと思い、火にかけたがなかなか溶けない。業を煮やした盗人が槌でこの像を叩いたところ「あいたた‥刀田山へ帰ろう‥」と言ったそうな。盗人は怖くなってこの像をそっと寺に返したため、「あいたた観音」と呼ばれるようになったそうです。

まず正面からこの像を見る。白鳳時代の仏像であり少年のような微笑をたたえており、平面的ですがとても親しみの湧く顔立ちです。腰の辺りから胸にかけてグニャット曲がっているのが良く判ります。お腹の辺りに擦り傷があり、盗人がここを叩いたために曲がったのかと思わせる感じがします。
今度は横から見ると全体的に後ろにかなり反り返っていてすごいアンバランス。次に真後ろから見るとなぜか正面から見たときのように曲がっておらず、まっすぐ立っているように見られます。また正面から見る。製作過程で曲がってしまったり、本当に槌で叩いて曲がったのなら、両腕や衣まで影響がでるはずなのに胴回りのみ曲がっているので仏師が意図的にそう設計したのか?? 全く検討がつきません。
何度も像の周りを回って見ているうちに何か平衡感覚がなくなってきて、そのうち宝物館入り口に座っている係員のおじさんと目が合い、ちょっと恥ずかしい思いをしました(この人、何ぐるぐる回ってるんだろう?と思っているのか)。

しかしそれにめげず今度は観音さまのお顔を見ながら回っていると、微笑をたたえた観音さまが「ウフフ、私の謎を解いて御覧なさい」と言っているように見えるではないか!
ヤバイ、この観音さまは逆に私に謎かけをしてきているではないか!
そう思いながらも観音さまのペースにはまってしまった感じが否めません‥。

宝物館を出て「太子堂」や「三重ノ塔」など神社仏閣好きの人にも感動を与えそうなすばらしい堂宇を見ながらまたさっきの「あいたた観音」の謎かけが気になって再び宝物館に戻りました。
「また来たんかい?」というような表情の入り口のおじさんを横目に再び「あいたた観音」に逢いに行く私でした‥。

振り返ってみると「あいたた観音」に逢うまでのフラストレーションは何処へやら、今までのコミカルな仏像たちもブッ飛んで、わたし的にこの仏像だけでも充分「お釣り」が来る加古川の空の下の一人見仏でした。
そして私の好きな(気になる)仏像ベスト10に食い込む勢いの仏像と出会えた一日でした。

小野市の浄土寺の時と同じで、まだまだ播磨地域には私の出会っていないすばらしい仏像たちがいるのだと感じさせられました。

さあ、次の「ご近所見仏」は何処へ行こうか‥‥。

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仁王門。仁王様の迫力に負けないくらいデカイ草鞋が飾ってありました。

国宝の本堂。

摩虎羅さん。ウインクしています。笑いはとるが「グッ」ときません。

国宝の太子堂。奥は本殿。

「あいたた観音」こと重文の聖観音像。
腰がグニャリと‥

三重の塔。この角度から見るのが好き。

※ここに掲載する写真は一部、パンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を



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