絶妙のバランス、のめり込みました 千手観音坐像 (大阪 葛井寺) .

「グッと来る」を通り越して見るたびにドンドンのめりこんで行きます、引き込まれていきます。こんな感覚は久々です。
そしてとにかく美しい‥

千本近い「脇手」が後ろから観音様を覆いつくしているように見えます。「脇手」が観音様に救いを求めているようにも見えます。

最初に申し上げると恥ずかしながら、まだこの仏像をナマで見たことがありません。
ですが仏像の専門書でこの仏像について知れば知るほど、写真や映像などで見れば見るほど「のめり込んでいく」感覚を覚えます‥。

私事ですが、実は先日ある病院で人間ドックを受けたのですが、その合間の待ち時間にNHKのある番組(西国三十三箇所の霊場を吉本新喜劇の女優が巡るというもの)でこの仏像の映像が流れたとき、とても心が落ち着いてなおかつ引き付けられる感覚を覚えました。以前からこの仏像は写真などで見たことはあるのですが、テレビの映像をじっくり見ているうちに、なぜかだんだん落ち着いてきたのでした。
丁度胃カメラ待ちの合間で不安な気持ちだったので、落ち着けたのもこの千手観音様のおかげかなと、少し感謝の気持ちになりました。

大阪の藤井寺市にある「葛井寺」。その本尊である秘仏の千手観音坐像です。
葛井寺は「西国三十三箇所」の五番目の霊場で、毎月18日のこの御本尊御開扉に合わせて、巡礼者や参拝者でにぎあうそうです。

何といって表現したいいか、よく分かりませんがあえて一言で言うと「絶妙のバランス」。
力強さと優しさ、男性的と女性的、おおらかさと繊細さ、この全くベクトルの違う方向性を兼ね備えて、なおかつそれらを絶妙のバランスで保っている(一言では難しい)。
そして美しい‥。
ただ美しい、簡単に一言で「美しい」では片付けられない何か心の底からにじみ出るような溢れる美しさがこの仏像から発せられている。そう感じずに入られません。
そして見ているうちになぜか引き込まれていきます。ここまで私が引き付けられる仏像は私的には興福寺の「阿修羅」以来です。

日本最古といわれるこの千手観音。
他の数多くの千手観音の千本の脇手はありとあらゆる衆生の願いをかなえてくれると言われ、いかにも御利益のあるような力に溢れた手をしていますが、この千手観音像だけは違う(と思う)。
光背の役目も兼ね備え、この観音様の後ろから覆いつくすように伸びてくる脇手を見ていると、助けを求める「衆生の手」、そのもののようにも見えます(そんな感じしません?)。
その助けを求める千本もの手に囲まれながらも絶妙のバランスを保った美しい表情で衆生の願いをかなえようとしている千手観音さま。

正面の合掌している二手はなぜか指先だけ合わさっています。
これは何を意味しているのだろうか?
私的に考えると、多くの救いを求める人々の苦しみをこの合わさった二手の先の指に集中させて救ってあげようとしているのではないかと考えます。そしてこの指先で絶妙のバランスを保っているようにも見えます(うーん、うまく表現できない)。

この仏像は厨子の奥に居られるようで、御開扉のときでも厨子の中は暗くて全体までよく見えないそうですので、今まで通り写真だけでじっくり見ていたほうがいいのかも。
でも機会があれば一度毎月18日の御開扉に合わせて、逢いにいきたいと思います。

「グッと来る」を通り越して久々に「ヤラレタ」。そんな仏像です。

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