海を渡った女神様  百済観音  (法隆寺)

その微笑が私たちを魅了する。

霊水の湧き出ると言われる「水瓶」をつまむ手が優しすぎます。

誰もが知っている、飛鳥仏の代表「百済観音」さまです。

法隆寺といえば「止利仏師」。「釈迦三尊」や「薬師如来坐像」など止利派の金銅仏が有名なのですが、その中でこの百済観音は異質の仏像と呼べるでしょう。
冷たい微笑をたたえ(しかしなぜか癒されます)、少し平面的で正面観を重視した止利派の金銅仏と違い、背面や光背の支柱にいたるまでしっかりと創りこまれた造型には感嘆させられます。

お顔の表情は傷みのせいで細かい所までよく解りませんが頬をほんの少し膨らませ、優しく微笑むお顔は何時まで見ていても飽きません。

色んな人たちは正面から見たり、「斜め45度から見ると一番美しいのよ」といってうっとり眺めているのですが、私はなぜか百済観音の「手」がいつも気になります。左手の指は優しく軽く「水瓶」をつまみあげています。そのそっとつまんだ指の表情までなんと優しいことか。
右手はこちらにそっと差し伸べています。昔はあらゆる宝を産む「如意宝珠」を持っていたそうですが、その中指を微妙の曲げた様は「さあ、こっちへおいで、優しく救ってあげましょう」と誘っているようで思わず引き寄せられそうになります(ガラスケースに入っておられるのでそれ以上、引き寄せられることはないのですが)。不謹慎ですが、優しい女性が誘っているように感じてなりません。
とにかく手、指の表情だけでも凄く癒されます。

今年のゴールデンウィークに本当に久々にこの百済観音と再会して感動しました。20年位前に来たときの「大宝蔵殿」、たしか今よりもチョッとうす暗くて、しかも今以上に後ろの方に回り込んで見仏できなっかたことを覚えています。
今回はしっかりと光背の支柱や側面はもとより、背中までしっかりと舐めるように(イヤラシイ表現)見ることが出来ました。
特に光背の支柱、本当に竹で出来ているのかと思うほど精緻でリアルな造型には本当に驚きを隠せません。

御存知だと思いますが、今から十数年前、この百済観音様は海を渡ってパリの「ルーブル美術館」にお出ましになられたそうで、その時は「東洋のヴィーナス」と絶賛されてウン十万人の人々を魅了したとか。その代わりに次に今度はフランスから有名な絵画「民衆を導 く自由の女神」が交換で海を渡って日本にこられたそうな。

そう考えるとこの百済観音はやはり「女神」なのかなと思います。フランスの女神は力強さで民衆を自由へと導き、百済観音は優しさで人々を救う。
なんとも美しい話ではないか(われながら無理やり納得させる)。

これからも私たちを優しさで惹きつけ、自由(心の自由)へ導いてください‥

■ BACK
■ HOME
※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。

「さあ、こっちへおいでなさい‥」と誘っているようで‥




■ HOME