ご存じ「三つの堂」。映画ラストサムライのロケ地で有名です。

常行堂の本尊、重要文化財の「阿弥陀如来坐像」。

開山堂の屋根を支える力士の一人。うめき声が聞こえてきそう…

駐車場までの道のりはあえて畦道を遠回り。

5月4日は円教寺「新緑祭」

世はGWですが、私は用事が多く中々時間がとれませんでした。
たまたま自治会の用事で公民館に集合した際に掲示板を見ると、この時期書写山の麓にある「書写の里美術工芸館」にて、春季時別展示「入江泰吉の東大寺」として入江泰吉さんの写真展が開かれているではありませんか!そして5月3日から6日の間、書写山円教寺では「新緑祭」として、重要文化財である大講堂の「釈迦三尊」と常行堂の「阿弥陀如来座像」が開帳されるとパンフレットが掲示されているではありませんか!
なんとか用事をやりくりして4日は半日だけ時間を作り行ってまいりました。
本当は早朝から足で書写山を登ろうと思っていましたが、やはり年齢的にキツイと思って、ロープウェイの始発の時間(8:30)に合わせて書写山の麓に到着しました。
ロープウェイを一番乗りして、800mの山道(参道)を歩きます。いつもの様に参道脇に並んでいる西国三十三ヶ所の本尊のレプリカたちに挨拶しながら進みます。さすがにこの時期は新緑が美しい。特にモミジは緑色の葉が陽に映えて秋以上に美しく感じられてしまう…
30分ほど歩いて、ようやく本堂である「摩尼殿」に到着。お堂から美しい読経の音色が聞こえてきます。
堂内に入るとロープウェイから一緒だっ、た頭に頭巾(ときん)と呼ばれる多角形の小さな帽子を付け、手には錫杖を持った数人の行者の方たちが読経を行っていました。鐘をならし三鈷杵を振り回しながら読経する姿は見る者を圧倒し、何か近付き難いオーラが滲み出ているようでした。そのお方たちの参拝が終わった後で、私も開経偈、般若心経、普回向のワンセットを唱えます。
参拝が終わった後、摩尼殿の外側の欄干にでます。そこから見る景色はまさに緑一色の世界。秋には赤くなるモミジの葉も、陽に照らされて緑に輝いていました。暫く欄干から身を乗り出して景色を楽しんでいましたが参拝者が後からどんどん増え始めたので、とりあえず摩尼殿を後にします。


特別開帳「釈迦三尊」「阿弥陀如来坐像」に会いに

時間を見るとまだ9時半過ぎ。仏像の開帳までは時間がありましたが、大講堂と常行堂に向かう事にします。摩尼殿から歩いて10分ほどで、大講堂・常行堂・食堂(じきどう)が「コの字」に並んでいる「三つの堂」に到着。開帳まで時間があったので、まずは食堂に入ります。食堂の二階は宝物館となっており、多くの仏像が展示されています。
やはり一番のお気に入り「金剛薩坐像」の前で足が止まります。江戸時代末期に彩色が行われた蓮華の台座の色が素晴らしい。南北朝時代、慶派の流れを汲む康俊(こうしゅん)の作とされており、慶派の仏像らしく写実的&神秘的。童子のような優しい顔立ちですが、「金剛」といわれるように固い意志を持った表情にも見える、魅力的な仏像です。
「五大明王」も素晴らしい。特に円教寺の五大明王は、不動さん以外のお方は全て坐像という珍しい型式。
食堂2階で時を忘れ仏像を堪能してふと時計を見ると、とうに10時を過ぎていました。大講堂と常行堂に向かいます。
まず大講堂の「釈迦三尊」にお参りします。円教寺の開祖、性空上人の弟子である感阿(かんな)作と言われる三尊。本尊の釈迦坐像は体躯が引き締まり衣文の表現が力強く、どっしりした安定感が感じられます。脇侍の両菩薩も体躯が豊満で安定感があります。そういうことからか三尊を全体的に眺めると何か「安心感」があるんですよね。セットあるいはユニットの強みというか…三尊を眺めていると、堂内の係の方が「写真なら撮ってイイですよ」と。数年前の新緑祭の時も同じことを言われた思い出が。お言葉に甘えて一枚パチリ。
大講堂の向かいにある常行堂に入ります。入ってすぐ係の人が「写真OKですよ」。一枚だけ撮らせていただいてじっくり参拝。
重要文化財の「阿弥陀如来座像」。性空上人の弟子、安鎮(あんちん)作といわれる丈六の坐像。ちょっと「なで肩」の為かこじんまりじた感じがありますが、丈六だけに威圧感はビンビンに感じられます。常行堂とはその名の通り、修行僧が暗闇の中90日間、本堂に安置された阿弥陀仏の周りを名号を唱えながら歩く修行の場。本来は日の差さない環境の為か、金箔も良く残っております。そのためか入口が解放されていても薄暗い堂内では一層輝いている印象を与えます。

次に開山堂に向かいます。開山堂では現在本尊の「性空上人坐像」と、近年発見された「性空上人坐像」とダブルで公開されています。
まず堂内に入る前に、開山堂の屋根の四隅を支えている「力士像」を見ます。この力士像はあの伝説の彫刻家、左甚五郎作と言われており、北西の屋根を支える力士があまりに屋根が重いので逃げ出してしまった為、現在は3名で支えております。南東の力士を見ると苦しんで知る表情がよくわかります。
堂内に入ります。本尊の性空上人坐像は厨子内にあるので全体は見えませんが、手前の内陣に安置している近年発見された性空上人坐像はよく窺い見ることが出来ます。両手先は欠損しており、虫食いが全体的に激しく痛んでいます。しかし写実的に「生気」がこちらにビンビンに伝わってきます。全体的に痛みが激しい像ですが「性空さん」って語りかけたら、閉じた目がぱっちり開くのではないかと…そう思ってしまうほど生身の性空さんでした。


入江泰吉に会いに書写の里美術工芸館へ

書写山を下りて、ロープウェイ駅から歩いて10分ほどで到着した書写の里美術工芸館。
奈良東大寺の別当であった、姫路出身の清水公照氏の遺作や、姫路の民芸品などが展示されている工芸館です。今まで何度もこの美術工芸館は来ていたので、今回は2階の展示室に一直線に向かいます。
今回の展示は入江泰吉の写真集小学館「東大寺」から抜粋して展示されているそうです。
私も入江泰吉の写真数は数冊所持しており、奈良写真美術館には何度も足を運んでいますが、初めて見る写真も数枚展示されていていました。特に「お水取り」期間の練行衆たちの写真に見入りました。お水取りを取り仕切る練行衆11人を密着して撮り続けた入江。そのため東大寺から「12人目の練行衆」とまで言われた彼が撮り続けた思いがヒシヒシと伝わってきました…
東大寺境内の写真にはいつもため息をつきます。私も東大寺境内の写真を撮ることが好きで、早朝から東大寺に出かけて写真をいくつも撮っていますが、入江泰吉の描き出す「空気感」なんて到底届きません(あたりまえですが)。展示されている写真を見ていると、ふと自分がその場所(撮影した時代・時期)に立っているのではと言う錯覚に陥ってしまう。そんな魔力がある写真ばかり。

入江泰吉の写真集小学館「東大寺」。欲しくなってきた…しかし展示室に前に写真集、紙のケースと共に実物が飾られていましたが、紙のケースに「定価38,000円」と記されていました…(無理だな、ネットで中古を探すしかないか)

美術工芸館を出て、ロープウェイ駅にある駐車場までの道をまっすぐ行かず、わざと脇道(農道)を歩ことに。水路には菜の花が咲き乱れ、モンシロチョウやアゲハたちが飛び回っていました。段々夏が近づいている。


忙しい中、なんとか時間を見つけて短い間でしたが、充実した書写山でした…

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摩尼殿の欄干から新緑を臨む。

新緑に囲まれた本堂の摩尼殿。

大講堂の本尊、重要文化財の「釈迦如来三尊」。安定感のあるお三人です。
写真撮影OKもらいましたので、一枚パチリ。

緑の中に見えてきた仁王門。

  2013年5月4日 新緑を求めて書写山へ   (書写山 円教寺)

書写の里美術工芸館。モダンな建物です。




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