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この時間、大仏殿前は誰もいません。

円成寺にて。楼門と奥に多宝塔。

雨がやむまで二月堂からボーッと景色を見ていました

今回も大仏殿には寄らず。
大仏さんスイマセン、次回こそは挨拶に伺います。

私が大好きな写真家、故入江泰吉さんの写真と同じアングルで撮った三月堂の参道。石段の上に鹿が緊急参戦しました。
雨上がりの石段の濡れた所をもっとうまく表現しなくては…そして空が少し白トビ気味…反省することしきり

円成寺の庭園。池を挟んで楼門(重要文化財)を望む。
紅葉が本格的になったら庭園全体が燃えて楼門も美しく映えることでしょう。

般若寺の境内にて。不動明王とコスモス。

般若寺の中で私が一番好きな石仏の如意輪さん。コスモスに囲まれて探すのに一苦労。

3匹とも同じ体勢で食べています。面白いので思わすシャッターを押す。奈良公園にて。

再び「奈良夜明け前」

2日目(10月11日)は夜明け前の奈良からはじまりました。
5年前の一人旅同様、夜明け前の東大寺を撮りたくて朝3時半に琵琶湖畔(長浜)を出発。
奈良公園には5時過ぎに到着。曇っていましたが辺りは少しずつ明るくなりはじめています。猿沢の池付近にある24時間営業の駐車場に車を停めて東大寺に歩いて向かいます。
南大門周辺は、ジョギングやウォーキングをしているご近所の方々か鹿しか見られません。薄暗い世界で見上げる南大門の金剛力士たちは不気味で昼間以上に怖かった…
お気に入りのポイントである三月堂参道の石段から三月堂を撮影していると、石段の上からオジサンの4、5人の集団が降りてきました。石段の下からデジカメ&三脚・リレーズでシャッターチャンスを狙っている私を見て「すまんな〜ちょっと待ってな、ワシらの様なオッチャンやったら被写体にならんやろう」という関西人バリバリの言葉に「いやいや時間はたっぷりありますのでゆっくり降りてきてくださいね」と挨拶。少し肌寒かったけど心温まる時間です。しかしあいにくの曇り空、しばらくしてポツポツ雨が降り出しました。傘を車に置いてきたので二月堂に上がって、雨宿りすることに。二月堂にはご近所の傘を持っていないジイサンバアサンたちが集まっていました。ある人たちは世間話、ある人はジーッと風景を見ている。「お百度参り」として、二月堂を何周も回っておられる方もいました。みんなそれぞれの時を過ごしていた二月堂。雨によるマイナスイオンのせいか気持ちもリフレッシュすることが出来ました。
1時間ほどして雨が上がったので、一旦駐車に戻って車内で仮眠することに。
気がつけば9時を過ぎていました。そして東大寺ミュージアムの開館時間(9:30)に合わせて再び東大寺に向かうことにします。
さっきとは打って変わって東大寺の参道は修学旅行生の児童や、海外からの観光客で埋め尽くされていました。鹿のフンと人波を避けながら東大寺ミュージアムに到着。開館と同時に中に入ることにしました。


目指すのは「光背」と「青面金剛」のみ

本日のお目当ては「青面金剛立像」&絶対秘仏である二月堂本尊の「十一面観音立像」の焼けて破損した光背です。国宝「誕生釈迦仏」や色々なお宝はパスして、一番奥に展示してある青面さんと光背に向かって突撃します。
その途中、中央の展示室に居られる宝冠を外された「不空羂索観音」さんの前で、一人の僧侶の方が「観音経」を唱えていました。東大寺の朝の法要でしょうね。拝観に来た方たちのうち数人が法要に合わせて合掌していたので、私も観音様に挨拶がてら合掌してお祈りをしました、「観音様、今日こそ阿修羅さんに会えますように…」と。
私が見たかった十一面観音の「光背」に関して、ある本に書いてあった文章…
「…絶対秘仏の光背には裏と表にそれぞれ仏の世界観が線刻されており、江戸時代に火災があって焼けて運び出された破損した光背の断片を繋げてみると、仏の世界と地獄世界の境目に当たる部分で太陽と月を持った異形の者が海の中で暴れているところが描かれているそうだ。それが興福寺の阿修羅のオリジンと言えるだろう。その断片の拓本が東大寺図書館に保管されている…」という部分。
前回(去年の11月)の見仏ツアーで東大寺ミュージアムにその焼けて破損した光背の実物が展示したあることに狂喜しました。その時の見仏クラブのメンバーと必死に線刻された阿修羅を探したが、時間内に見つからなかったため、今回は時間をかけて探すつもりでした。
しかし結局見つかりませんでした。見仏スコープを忘れてきたことが悔い…
次に「青面金剛立像」を見仏。写真で東大寺に存在していたことは知っていましたが(実際には国立博物館に委託)、このミュージアムで展示されているのには前回のツアー時に驚きました。今回は時間があるので「舐めまわすように」見仏できました。腕が六本で三目、腕・頭・腰・首・足とありとあらゆる個所に蛇がまきついている異形なお方。「異形好き」の私にはたまりません。専門家の中では腕の数(「陀羅尼経」の儀軌では四本)・三猿がいない・蛇の巻き方などから「青面金剛」ではなく、「金剛夜叉菩薩」ではないかと言われていますが、そんなことは気になりません。ド迫力の青面さんの前で直立不動となる私…ちなみに私の個人的な「会いたい異形なお方ベスト3」は、正妙寺「千手千足」・東大寺「青面金剛」・秋篠寺「大元帥明王」なので、今回のツアーで残るは秋篠寺「大元帥明王」のみとなりました。
館内の案内役のお姉さんも、他の展示物をあまり見ず、「光背」と「青面金剛」の間を行ったり来たりしている私を不審に思ったのか、こっちをチラチラ見ているのは解ります。これじゃまずいと思って「不空羂索観音」の外された「宝冠」と合掌して手に挟んでいた「宝珠(水晶)」(それぞれ展示されていた)を時々見仏することに…
時間もだいぶ過ぎたのでそろそろ出ることに。光背の阿修羅だけは悔いが残ります。
しかしミュージアムを出る時に、ミュージアムショップに置いてあった展示物の解説パンフレット(といっても電話帳並みに分厚い2,000円もする)のサンプル読んでいると、光背の表面と裏面の拓本が載っているではないか!しかも光背の裏面に阿修羅が描かれているではないか!菩薩さん達が居られる天上界と地獄(外道界)の間にある海の中で、月と太陽を両手にかざした異形のお方が描かれている。確かにこれは阿修羅だ!展示したあった光背は表向きなのでそりゃ解らないはずだ!
思わず値段も気にせず拓本の部分だけが見たくてパンフレットを買ってしまった私…背負うワンショルダーがデジタル一眼の重みと重量のあるパンフレットで更に重くなりましたが気になりません!
興福寺境内や奈良公園をブラブラしてお腹がすいてきたので、いつものラーメン「天下一品」で食事を済ませ、猿沢の池で景色を見ながら次の行き先を決めました。実はそこから先のスケジュールは全く決めていなかったのです(なんとまあ無計画だこと)…
今まで行ったことないお寺として候補として挙がったのは円成寺。ここから車で20〜30分で行ける手頃な距離。しかも何時かは会いたいと思っても中々機会が無かったあの運慶の「大日如来坐像」。こんどこそお会いせねば…そして次に般若寺。ネットお仲間が「今はコスモスがイイ!」って言っていたのを思い出しました。


多宝塔内は密教宇宙

車を柳生方面に向かって走らせます。円成寺の駐車場に着いたのは25分後。駐車場には私の車以外に1台だけでした。受付を済ませて境内に入ります。
境内は私一人。早速大日如来坐像の居られる多宝塔に向かいます。多宝塔初層は扉が開かれておりかなりオープンです。しかし内部の暗さや外が曇り気味で、多宝塔初層内部が外からは窺いきれません。近づいてようやく大日如来さんのシルエットが解る程度。ふと足元を見ると「ガラスに押し当ててのぞいてみてください」と手書きで書かれた怪しげな双眼鏡っぽい紙製のスコープが。「これがネットで聞いていたガラス反射防止スコープか」と心の中で頷く私。そうです、ガラスの板で内部と仕切られているので、バックの景色が映り込んで内部が見難いという事で、円成寺さんが用意してくれた手製のスコープです。早速これを使って内部を覗いてみることに…
おもわず「うおっ」って声を出してしましました…まず大日如来より内部の煌びやかさに目が行く。四本柱には諸菩薩が。内部の壁には「真言八祖」、大日如来の後ろにある背板の「蒼色」は深く、海の底、いやそれだけに留まらず「宇宙」の果てさえを想像してしまう。
大日如来に目をやる。これまで色々な大日如来を見てきましたが、全く異質であることが感じられます。ホトケというより人が大日如来の印を組んで座っているように思えてしまう。
私論ですが…若き日の運慶はまず人間の写実性を追求して、自分の納得した到達点に達すると、仏像としての精神性・神秘性を付加していったのではないか?「ベースは人間」私はそう思います。なにかレオナルド・ダ・ヴィンチと通じる部分がありそうで…ダヴィンチも医者時代に人体を解剖した時にスケッチを取り写実性を追求しそれをベースとして、精神性を加味して作品を創っていったと聞きます。運慶20歳の時の作品とされる大日如来は彼が写実性の到達点としての一作品だと思います。異形ではく、人間的だからこそ感じられる神秘性…そこに運慶の狙いがあったのかもしれません。
境内を出て庭園を見て回ります。受付のオバサンも言っていたけど、あと2週間もすると紅葉が映えて庭園も美しくなるみたい。池を挟んでみる楼門。紅葉の季節になるとさらに美しく見えるだろうな…
そう思いながら円成寺を後にします。


般若寺で花の写真を撮りまくる

般若寺に入ると境内は拝観者で溢れかえっていました。ほぼ全員咲き乱れたコスモスをバシバシ撮影していました。私も最近手に入れた、中古の一眼レフを構えて負けじとバシバシ花を撮ろうとしましたが、あまりにも人が多いので構図に別の拝観者がフレームインしてしまいます。「おっこのアングルで撮ろうか」なんて構えても構図の端っこに、カメラを構えたオバちゃんの後姿が入ったりして…
境内に並べられてある石仏の中で、私が一番のお気に入りである「如意輪観音」もコスモスに埋もれていて中々拝めませんでした。
本堂に入って本尊の「文殊菩薩騎獅像」に3年ぶりに挨拶に向かいます。拝観者が文殊菩薩の前に立つとセンサーが感知して、スポットライトが点灯するシステムにいつの間にか変わっていました。おかげで以前より文殊さんのお顔を良く拝めるようになりました。相変わらず可愛いお方です。乗っておられる獅子も力強くてイイ!阿部文殊院の獅子は少しとぼけたような可愛い表情ですが、般若寺の獅子は吠えて周りを威嚇しているように思えますね。凛々しい獅子です。
本堂を出ると、境内に溢れていた拝観者たちが若干減っていたので、私も花の撮影を再開。花を見るとツイツイ写真を撮りたくなる…年のせいか?


般若寺を出て、向かいにある植村牧場の有名なソフトクリームを食べて車に乗り込みます。
ちょっと早いけど(15:00)予約していたビジネスホテルにチェックインしました。

予約したホテルは高畑にあったので、一旦荷物を置いて近くにある「奈良写真美術館」に歩いて向かいます。丁度その時、入江泰吉の写真展示会が開かれていました。写真を撮るというより、風景や仏像の「精神性を撮る」といった入江さんの思いが一枚一枚からビンビンに伝わってきます。寺をフレーム内に取り入れた風景写真からは奈良時代の人々がフッと現れてきそうな予感。仏像写真からは仏像が何か語りかけてきそうな予感が…結局閉館時間(17:00)ぎりぎりまで居ました。

再びホテルに戻って、でそれまで(2日間)撮ってきた写真を家から持ってきたノートPCで確認しました。
全然ピントが合ってなかったり、フレームが傾いたり…反省することしきり。もっと腕を磨いてデジタル一眼を使いこなさなくては…入江さんの精神性なんて雲の上の世界ですね。

朝早かったのでその日も早めに就寝。

次の行き先はなんと翌朝決めたのでした(本当に無計画だなあ)。

これが円成寺手製のガラス反射防止スコープ。
これが有ると無いとでは大違い。

  2012年10月11日 奈良夜明け前
   (東大寺ミュージアム 円成寺 般若寺)



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