勝持寺のご朱印「薬師如来」。

勝持寺辺りから長岡京跡が見渡せます。

勝持寺の山門。

思い立ったが吉日、突撃半日ツアー

9月30日は久々の平日休み。しかも昼過ぎから所用があるため午前中はフリー。このチャンスを逃す手はありません。「どこに行こうか?」と考えているとふと目に止まった仏像関連の本。その表紙に京都の西山地域にある願徳寺に居られる国宝「如意輪観音」。以前から会いたく思っていて、その願徳寺の隣のある勝持寺には本尊である重要文化財の「薬師如来」をはじめグッと来る仏像が多数あるようです。京都の西山、つまり長岡京跡辺りなら車で高速を突っ走って片道2時間程度、朝7時過ぎに出発すれば9時過ぎに到着、仏像を見まくって遅くとも14時には帰ってくることが出来る思い、なんと前日に決定(しかしハードな計画だこと)。
私の運転する車は姫路を予定通り7時過ぎに出発、山陽自動車道・中国・名神高速を経由して洛西地区の住宅地をひた走り、長岡京跡の西に広がる丘陵地に位置する願徳寺に9時過ぎ到着。駐車場(勝持寺の駐車場も兼ねている)に車を停めて早速願徳寺の山門に向かいます。


お厳しいご住職と思いきや…

しかし入り口の扉は閉まっており、「インターホンを鳴らして下さい」の貼り紙が…
拝観時間は9時半からなので「まだ早いかな?」と躊躇しつつインターホンを鳴らす。すると境内から「拝観ですか?この寺は庭園は無く、仏像だけになりますが」と御住職らしき声がする。
私「はい大丈夫です、お願いします」

ご住職「では扉を開けてお入りください」
ということで扉を開けて入ることに。
受付でご住職から朱印を頂いていよいよ国宝の如意輪観音の居られる本堂に向かいます。本堂前でまずご住職から「まずここで靴を脱いでお上がりください、そして本尊の前でお座りください」私はまず本尊の如意輪さんの正面に立ちます。写真で見たとおり凛としたお顔で厳し表情、一木造りである通り、重量感のあるどっしりした感じが出ています。
本尊の前の貼り紙には「仏像の写真撮影は禁止。肖像権があります。見つかればワンショット1万円頂きます」と…
そして如意輪さんのお顔を拝見しながら正座をします。
本堂内は私とご住職の二人きりです。
ご住職が語りだします「まずこのお寺の縁起、仏像のお話をさせて頂きます、質問があれば話の途中ではなく、話が終わった後にお願いします」とのこと。
ご住職のお話が始まります。このお寺の縁起、本尊の両脇に居られる「聖徳太子二歳像」・「薬師如来立像」・掛け軸の絵画「青不動像」の解説。そしていよいよ本尊の解説に入るときに「ちょっと電気を消しますね」とご住職がいきなり本堂内の照明を消す。そして本尊の如意輪さんの厨子内の上からの蛍光灯が点きます。すると
それまで厳しいと思っていた表情が一変、少し穏やかな表情に変わります。上下の唇の間の影で口が開いているようにも見えて、今にも如意輪さんが私に語りかけてくるように思えてしまう。
ご住職の解説の最後に「それではこの観音さんの前でお祈りください。自分のことについてのお願いだけでなく、あなた以外の方についても最後にお祈りください…」と締めくくる。
私は自分以外の家族のこと、母親の病気のことなどを暗闇の中で合掌してお祈りします。そのとき目頭が熱くなっていることに気付く。
暗闇の中で如意輪さんを見ると、何故か如意輪さんの頬も緩んで泣いてくれているように思えてきます…
堂内の照明を再び点け、仏像についての感想を語り合った後「ではごゆっくりしていってください」とご住職は私を残して音もなくすーっと本堂を出られました。
自分以外の人に対してお祈りすることの大切さを教えてくれ、その後如意輪さんと二人だけの時間を作るため本堂を出られたご住職。
最初はお厳しいご住職と思っていましたが(すいません)…
仏像の専門書を読むと、この如意輪さんは学術的に「虚空蔵菩薩ではないか?」とか「本尊ではなく脇侍として祀られていたのではないか?」とか色々書かれていますが実際にこのお方の前に対峙するとそんなことはとうに忘れて、時間を忘れるほどのめり込んでいく行く自分に気付きます。
20分ほど如意輪さんと向き合ってそろそろ出ることに。そして立ちあがってもう一度お顔を見ると今度は急に厳しい表情になる。斜め前から見るとそれに意志の強さが加わって見ている方も緊張します…さすが変化する観音さんです…感動しました。
本堂を出て、受付に居られたご住職に「感動しました、込み上げるものを感じながららお顔を拝見していると観音さんも泣いてくれているように思えて…お会いできてよかったです」と伝えると「そうですか、それは本当によかったですね」とご住職もにっこりして喜んでくれていました。
「TV見仏記」のDVDでもみうらじゅんが「最初はお厳しいお方と思っていたが、後から優し〜く伝わってきた」と言っていたっけ。
このお寺、来て本当に良かった…


仏像ワールドで圧倒される…勝持寺にて

続いて願徳寺のお隣にある勝持寺(別名『花の寺』)に歩いて向かいます。
受付で朱印を渡して仏像が居られる収蔵庫(瑠璃光殿)に入ります。
収蔵庫の扉を開けて目の前に広がる「仏像ワールド」に圧倒されます。
本尊の重文「薬師如来」を中心に、重文「日光・月光菩薩」、さらに「十二神将像」が勢揃い。壇上の両脇には巨大な重文「金剛力士像」のお二人が…
まず本尊を見る。特に印相が気になります。右手で左手で持つ薬壺(やっこ)の蓋をつまみ上げようとしている。口が小さく幼ささえ感じてしまう不思議なお方…
この本尊の前に小さい別の重文の「薬師如来」さんが居られます。何でも本尊の「胎内仏」だとか…。しかしこの小さい薬師さんの光背が凄い。10cm程度の薬師さんの光背には「七体の化仏」や「十二神将」まで彫られている。最近使っていない「見仏スコープ」をバッグに入れとくのを忘れたことを悔やむ…
本尊の脇、特に向かって右の日光菩薩にグッと来ました。口をちょっと開けて微笑んでいるように見えます。そして掲げた「日輪」にはあの八咫烏(やたがらす)が描かれています。「神仏習合」のニオイがします。衣の朱色も鮮やかに残っており、腰の捻りもセクシーです…
いつもは「日光・月光」さんを見ていると「月光」さんに惹かれる私ですが、この勝持寺では日光菩薩にうっとり〜
コミカルなフィギュア感たっぷりの十二神将達ももイイ!
そして両脇に立つ、像高3mの大きな金剛力士のお二人に圧倒されます。鎌倉後期の慶派の仏師の作らしく、全身真っ白で筋肉の隆起が凄まじい。全体のまとまりよりも、アバラや血管の浮き出し・筋肉の盛り上がりなど、部分部分をこれでもか!と強調するのはやはり運慶・快慶以降の「慶派」仏師の特徴ですかね…
そして再び中央の本尊の前に立つ。すると丁度両脇の金剛力士のお二人の視線がこっちに向いており、ただ圧倒されるのみ…この大きなお二人が居られた仁王門を思うとかなり大きな伽藍があったことが想像できます(後で調べてみると仁王門は参道の先に現存するそうです。見落としていました)。


竹林公園で竹に癒される

さあ姫路に帰ろうかと思いましたが少しだけ時間に余裕があったため、もう一か所寄ることに。ここ西山の洛西地区を車で走っていて気付いたのは竹林が多いこと。
最近竹林を見ているとなぜか癒される私。「竹林浴」って言葉があるように、竹を見て癒される人が意外に多いという話。丁度持ってきたガイドブックを見ると近くに「京都市洛西竹林公園」なるものが在ると知る。しかも入場無料(セコイ)、これは行かねばなりません。勝持寺から車で10分くらいで到着。公園に入ってまず竹の香りが漂ってきます。公園内のエントランスは「竹の資料館」で展示物がいっぱいありました。エジソンが初めて作った電球、京都の竹をフィラメントに使った「竹電球」を始め、竹の工芸品などを堪能した後、公園内の散策路を歩きます。平日なので公園内の散策路は誰も居らず私だけ。他に造園業や公園関係のオジサン・オバさんばかり。
でも竹の小道を歩いていると本当に癒されます。暫くデジカメで竹の写真をバシバシ撮っていると小雨が降り出したので慌てて車に戻りました…

さあ姫路に帰りましょう。


今回は結局京都の滞在時間は3時間弱と短い時間の中で、仏像に感動・圧倒され、最後に竹に癒された思い出に残る一人ツアーになりました。

次回はもっと時間をかけて願徳寺の如意輪さん、竹林公園等を堪能したい…

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お寺巡りの後に寄った洛西竹林公園。「竹の小道」でのワンショット。
最近竹を見ると癒される私。
京都っぽい風景、わずかな時間の中で「竹林浴」してきました。

願徳寺のご本尊、国宝「如意輪観音坐像」(ポストカードのスキャン)。
仏像を見て思わず込み上げたのは唐招提寺の「鑑真和上像」以来でした。

竹林公園でのワンショット。
もう少し時間に余裕があれば、そして雨が降らなければもう少し居たかった。

願徳寺のご朱印。
「大照殿」と書くのか?ご住職に訊けば良かった(悔)…

  2011年9月30日 一人見仏 京都西山の国宝仏を訪ねて
   (京都 西山 願徳寺・勝持寺 洛西竹林公園)

願徳寺の山門。向こうに見えるのが本堂です。




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