元興寺の石仏・塔婆群。
中央の素焼の邪鬼がいつみても微笑ましいです。天気がいいのでお地蔵さんも気持ちよさそうです。

ご存じ「猿沢の池」。もう少し池の水が透き通っていたら、五重塔が綺麗に映るのですが…今日は少し濁っていました。

興福寺五重の塔。
京都の東寺の塔に次ぐ高さですが、屋根の反り返り方が力強く、こちらの方が大きく見えてしまう私…

興福寺で買った阿修羅グッズ。
阿修羅手ぬぐいの表情がイイ!
ハンドタオルの刺繍もイイ!
何か使うのが勿体ない…

元興寺付近からも見える五重の塔。
やはりデカイですね。

会社の同僚と行く満開の奈良

今回は会社の同僚二人を連れての奈良ツアーとなりました。
A君(20代)・B君(30代)私(40代)の三世代の混成ツアー。A君とはこれまで「初心者ツアー」をはじめ二人で何度か仏像巡りを行っており、B君とは3年前の「第1回初心者ツアーin京都」以来の参加となります。
実はその前日まで行先ははっきり決めておらず、京都の平等院、琵琶湖周辺、唐招提寺など…幾つか候補は挙がっていましたが、結局思い付きで決めたコース、法隆寺のあとで奈良公園周辺のお寺をブラブラ巡りという曖昧なコースに決めたのでした。
三人は当日の朝7時に会社の駐車場で待ち合わせて車(もちらん私の車)に同乗、奈良を目指して高速度道路を東に向かいます。
姫路を出発して約2時間後に法隆寺に到着。中門前の駐車場に車を停めて境内に向かいます。


「日本最古」の多い法隆寺

途中正面に見える中門で、私は二人に日本最古である「金剛力士」の説明をします。そして向かって左に居られる吽形の手つきが気になること、中門の柱がエンタシス様式(円柱の下部から上部にかけて徐々に細くした様式)であることを説明。するとB君が「なんでこのお寺の柱はこんな感じなんですか?エンタシスにする意味は?」なんて訊いてくる。建築学に疎い私は「え〜…よくわかりません、なんか見ていて安定感があるからなんでしょうかね…」なんて答えるのがやっと(あとで詳しく調べてみよう)。
早速境内に入ります。世界最古の木造建築である金堂と五重塔。メンバー二人はしげしげと見ます。特に二人が気に入ったのは金堂の屋根四隅を頭で支えている「邪鬼」や「獅子」でした。「あれって重たそうですね、大変だ」って呟きながら金堂に金堂に入ります。
いつものことだけど暗い堂内。暗さに慣れたところで二人に堂内の解説を始めます。日本最古の「四天王」、動きが無くそれが逆に不気味な存在感を出して本尊を守っているかのよう。そして「釈迦三尊」。正面性を重視した仏像で、頭の螺髪(らほつ:パンチパーマの様なブツブツ)は正面しか無く、後頭部には無いことなどを二人に説明しました。
「たしか歴史の教科書でみましたよこの仏像」とB君。そしてA君は金堂内の壁画に見惚れます。特に如来の横に描かれた観音像を差して「これ凄いですね」と。すかさず私は「そうなのよ!このお方は戦前、普通切手の図案になって、私は子供の頃切手マニアで、未使用切手が欲しかったけど高くて手が出なかったのよ〜」って反応。
続いて大宝蔵院に入ります。相変わらず名品揃いです。私は宝蔵院の部屋の中央にドーンって展示している国宝「玉虫厨子(たまむしのずし)」の説明しますが、A君は今一つ理解できないみたい。訊いてみると「玉虫って何なのか知らないです」…そうか20代のA君は玉虫を見たことが無いんですね。私が子供の頃は姫路市内ならあっちこっちで見られたのですが、最近は真夏に山間部まで行かないと見ることが出来ないんですよね〜ジェネレーションギャップを少し感じた大宝蔵院でした。
そして部屋続きにあの「百済観音」の居られる百済観音堂に入ります。久々に会う百済観音。見た瞬間いつものように「細っ!顔ちっちゃ!」と声が出てしまう。二人にはこの観音さんが1997年にフランスのルーブル美術館にお出ましをされて大人気だったこと。そしてフランス側から交換で有名な絵画「民衆を導く自由の女神」が日本にやってきたこと、光背を支える支柱が竹を模して造られていることを説明。すると二人とも「ほほ〜」っと感心している様子。他の多くの拝観者が正面から「美しいね」なんてうっとりしているのに、ヘンな三人組が観音さんのサイドにまわって「本物の竹のようだ〜」なんて支柱を真剣に見ている様子。完全に浮いている三人組でした。


阿修羅の照明にチョイ不満

法隆寺から車で30分ほどで奈良公園に到着。しかしナビにインプットした駐車場は全て満車。桜満開のこの時期、仕方ないですね。新たに付近を探してようやく「空」の駐車場を見つけました、しかも「猿沢の池」のすぐそばと言う幸運。丁度腹が減ってきたので、まず昼食を食べに行くことに。行先は奈良公園周辺に来たら必ず立ち寄るラーメン「天下一品」です。それぞれ定食を「ラーメン大盛り」で注文。満腹になったところで興福寺に向かいます。途中A君が車に荷物を忘れたそうなので、A君に車のキーを渡してB君と二人で猿沢の池の畔でベンチに座って暫く待つことに。
カメたちがのんびり水面から上がって日向ぼっこをしている…
「いいなぁ〜カメには仕事や残業もなく、一日中のんびりできる」なんてカメを羨ましく感じながら、中年二人はベンチに座ってボーっとして動かなくなる(まるでカメそっくり)…
暫くしてA君が戻ってきたので揃って興福寺に向かいます。興福寺は国宝館内がリニューアルされてから初めての拝観、早速入ります。入ってまず国宝「板彫り十二神将」が出迎えてくれます。そして「天燈鬼・龍燈鬼」と「金剛力士」がガラスケース無し、しかも並んで展示されているのが良かった!力が入った四人が並んでいるので、見ているこちら思わず力が入ってきます。しかし巨大な「千手観音」だけは同じ場所に展示されている。短いリニューアル工事の期間ではさすがにこの巨大なお方だけは動かせなかったということか…?そして国宝館のハイライト、「天部八部衆」の居られるセクションに。そのあたりから人が混雑しだして流れが完全に止まっている。それもそうでしょう八人が勢ぞろい、しかもガラスケース無し(上半身だけの五部浄さんはさすがにガラスケースでしたが)!
実は私が気になっていたのはライティング。阿修羅がどんなライティングで展示されているかの一点。期待しながらとうとう阿修羅の前に立つ。やはり予想通り上部からのライティングがメインで「優しく映る」ようなライティングでした。もっと下から蝋燭でゆらりと照らすような、阿修羅の凄味が出るようなライティングを望んでいましたがやっぱり無理でしたね。しかも強烈なライトで衣に残る僅かな文様・色彩も「白とび」気味で見にくくいなっていたのがチョイ残念。特に阿修羅は強烈なライトで、バックの壁に映るシルエットを演出に使うのもいいけど、もう少しゆるいライティングの方が良いかな?というのが正直な感想。仏像よりもそちらが気になりました。
国宝館を出る時に必ず寄るグッズショップコーナー。
A君は会社の同僚から頼まれていた「阿修羅ハンドタオル」を買いました。そして「i Phone阿修羅ケース」を見つけ思わずそれも買います。i Phone専用のプラスチック保護ケースで、背面に阿修羅がデザインされているではないか!これで3,500円。やはり阿修羅という興福寺オリジナルキャラを使っているだけにお高い。でもここだけでしか売っていないので価値アリ!です。私はクリアケースは全部そろえているので特に欲しいものは無かったのですが、新たに「阿修羅手ぬぐい」があったので思わず「阿修羅ハンドタオル」と共にゲットしました。


「Judge of Hell !」 ロックな寺、元興寺

次に歩いて向かった元興寺。実は興福寺から先の予定は白紙でしたが、私は何故か急にあのセクシーな唇の「如意輪観音」に逢いたくなって「次は元興寺に行きます」とメンバーに告げて行くことにしました。
興福寺から南に歩いてて15分程度で到着。まず極楽堂(本堂)に入ります。堂内は中央にある「智光曼陀羅図」を中心に右回りに拝観します。丁度曼陀羅図の裏手にある地獄の裁判員たち。「閻魔王」を中心に「司命」「司録」をはじめ勢揃いしています。
「地獄に落ちたら必ずこのお方たちに逢うから、その時は便宜を図ってもらうよう今のうちに媚を売っていたら?」の私の話で合掌してお参りする二人。
続いて「宝物館」に入ります。
一階でカッコ良い「薬師如来」をまず見る。何時見ても若々しく切れ長の目がクールです。そして奥に居られる「閻魔王」「泰山府」「司録」さんを見る。その時後ろから突然A君が「judge of hell (ジャッジ オブ ヘル)!」と叫ぶ。何言っているんだろう?と思って解説の掲示文を見ると「JUDGE OF HELL」と英文で書いてあるではないか!つまり「地獄の裁判員(ジャッジメント)」ということですね!
しかしなんとカッチョイイ名前ではないですか!洋楽ファンで、以前バンドでギタリストをやっていたA君に「まるでアメリカのメタル系ロックバンドが唄う曲名のようやな〜」と私。そうしている内に段々地獄の裁判員たちがロックバンド「ジャッジ・オブ・ヘル」で、司録さんが口を開けているところなんかいかにも「シャウト!」って感じがしてきました!
そして地獄の裁判員たちの横に、玉眼の「地蔵菩薩立像」が。そのお地蔵さん、右足を若干前に出し、前傾姿勢です。
ここで私の解説。「お地蔵さんって以前、みうらじゅんが言っていたけど、『三コマ漫画の二コマ目』なんだよね。悩める衆生の為に救済に向かおうと今まさに一歩踏み出そうとしてる瞬間なんだ。三コマ目では一歩踏む出している、その一歩手前を表しているんです。前傾姿勢もそんな気持ちを表している」という解説に、またA君が「まるでマイケル・ジャクソンですね!」と。マイケルのPV(smooth criminalという曲)で体が前姿勢になるシーンがあるけど、彼はそれを思い出したみたい、さすが洋楽ファン。そして2階に上がります。階段を上がりきったところにいつものようにガラスケースに収められた私は大好きな「如意輪観音」が居られます。セクシーな唇、そして右の頬にそっと添えた手の指が頬に当たりそうで当っていないこの距離感。もううっとり…しかし以前来た時と照明ゆるいスポットライトから、全身を照らす蛍光灯に換わっていました。スポットライトの時はお顔を緩やかに照らしていて、シルエットも美しく映っていたですが…興福寺の阿修羅同様、ちょっとライティングに不満の残る元興寺でした。
元興寺を出る時、A君と再び二人で「JUDGE OF  HELL!」と叫ぶ。
カチョイイ名前が忘れられません…


桜と女性でにぎあう西大寺

駐車場に戻り、西へ向かっての帰り道にもう一寺向かうことに。
その時ふと西大寺に行こうと思いつく。久しぶりにあの「文殊菩薩」会いたくなった私。車の中でA君は自分の持っているi Phoneにさっき興福寺で買った「i Phone阿修羅ケース」を取りつけて「良いでしょう〜」と嬉しがっている。「俺の持っている携帯にドコモ阿修羅ケースなんてあったら絶対買うのにな〜」なんて羨ましがる私。
気がついたら西大寺の駐車場に着いていました。二人には西大寺の説明もろくにしないまま来てしまった。境内に入って気がついたのは、やけに着物を着た女性が多いこと。何でだろう?と思って境内内の立て看板を見ると、丁度有名な「大茶盛会」が開かれているそうです。TVのニュースでよく観る女性だけの茶会で、重さ数キロの大茶碗でお茶を振る舞う有名な茶会。着物女性と満開の桜で華やかな雰囲気です。
まず本堂に入ります。久々に逢う「文殊菩薩」。チョイ寄り目で幼さと力強さと美しさを兼ね備えたお方。先導役の「善財童子」も良い表情。「この表情、良いですね」とB君。大型の「弥勒菩薩」や「清涼寺式釈迦如来」も良い!そして何故か各仏像の前に置かれているお札が気になります。『祝い 32歳 ファン一同』と書かれたお札。「どういう意味だろうか?仏像が32歳って分けないし…」と三人で話し合います。「後でネットで調べましょう」というB君の提案でしたが、気になって仕方ない私は堂内にいた係のオジサンに訊いてみました。「それはね、kinki kidsのファンの方が誕生日を祝って納めたお札です」ということ。後で調べたら堂本剛クンが地元の出身で、何でもこの西大寺に桜(ソメイヨシノ)を植えたそうで、毎年桜の季節、彼の誕生日(4月10日)にファンが「つよしクンの桜」を見に来るそうです。大茶会と合わせて女性の多い理由が解りました。
「四王堂」に入ろうと思って向かうと、丁度本尊の「長谷寺式十一面観音」の前で護摩を焚いて、着物の女性参拝者相手に祈祷が行われている最中で入れません。時間稼ぎに「聚宝館」(宝物館)に入ります。実はいつもパスしていて今回私も初めてこの「聚宝館」に入ります。中でも私が特にグッと来たのは「塔本四仏坐像」(かつて五重塔の安置されていた四体の如来像)のうち展示されていた「阿關如来」「宝生如来」。一説によれば、西大寺を発願した女帝の孝謙天皇がお気に入りの若者を模して道鏡に造らせたと言われています。そのためか「如来」と言うよりも切れ長の目を持つ、若い人物像といった印象が強い。でも何者かが潜んでいるような「神秘性」がビンビンに感じられる。
次に訪れた「愛染堂」。奥に居られた「興正菩薩叡尊像」。B君が「あれ、この像って元興寺にもありましたね」と。彼は長〜い眉毛が特徴的な「叡尊さん」を覚えていたみたい。
愛染堂を出て四王堂に向かうと既に祈祷は済んでいて、自由に入ることが出来たので突入します。まず目に入る巨大な「十一面観音」。「護摩を焚いてよく火事にならないですね」と言うB君に、十一面観音の前に立つ「不動明王立像」を指差し、「火の神様である不動さんがお守りしているので大丈夫ですよ」と説明する私。そして四天王に踏まれる邪鬼の説明に入る。踏まれながも耐えて、主人である先代の四天王が火災で焼失してしまっても焼け残り、今は新しい主人に踏まれている「どっこい邪鬼」たち。ここでは四天王よりも「主役」なんですね。興福寺の「天燈鬼・龍燈鬼」のように頑張れ!って声を掛けたくなります。

今回はかけ足でアッチコッチ行ったツアーで、次回行く機会があったら今度は参拝客の少ないお寺でゆっくり仏像を見よう、二人には少し悪かったかなと思った次第。
しかし後部座席で嬉しそうな寝顔で寝ているB君(本人は寝てないと言っていたが)、嬉しそうに「阿修羅i Phoneカバー」を眺めているA君を見ていると行って良かったと感じた春のツアーでした。

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西大寺の桜。
女性参拝者たちがカメラで撮っていました。もしかしてこれが「つよしクンの桜」か?

猿沢の池ではのんびり日向ぼっこをするカメたちを見て、羨ましがる私とB君でした。

法隆寺中門の金剛力士。
毎回このお方の手つきが気になる私。

法隆寺金堂。柱に絡みついた龍や屋根を支える邪鬼・像などが気になるメンバーでした。

  2011年4月10日 三人見仏 桜の奈良をゆく
   (奈良法隆寺・興福寺・元興寺・西大寺)



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