「浄土堂」の瓦。受付のオバサンに教えてもらった、丸瓦に「南無阿弥陀仏」の文字が…

青空に映える鶴林寺「三重塔」。しかし暑かった…

浄土寺の朱印「瑠璃光殿」。
浄土寺の本尊は本当は阿弥陀さんではなく、「瑠璃光薬師如来」なんです。

鶴林寺仁王門。

今度こそ写真のような西日差し込む時間に来よう(ある本からのスキャン)…

2010年8月15日 プチ見仏ツアー 御盆の最終日のお寺巡り
       (小野市 浄土寺〜加古川市 鶴林寺)

「浄土寺本堂」。朝一番に行ったのでまだ浄土堂は空いていませんでした。

国宝の鶴林寺本堂。
時間がなかったので今回はパスしました。

突然の招集

御盆休みの最終日の8月15日、私自身時間を見つけてようやく行けることになったお寺巡り。半日だけの時間ですが、一人で行くより連れが居れば楽しいだろうと思い、御盆休みのさなかに見仏クラブの隊員たちに電話で訊いてみることに。
するとT隊員は家族と用事がありNG(そりゃそうでしょう)、N隊員は半日だけならOKということで今回も二人ツアーとなりました。
行先は半日で行ける距離ということで、快慶作の国宝「阿弥陀三尊」の居られる浄土寺に決定。
最近N隊員とは、これまで二人ツアーで舞鶴金剛院の「深沙大将&執金剛神」、安部文殊院の「文殊菩薩」と立て続けて快慶作の仏像を見てきたのですが、今回も彼にまたまた快慶作の仏像を見せることになったツアー。彼の反応はどうなるか…?
朝8時半、N隊員の自宅前で待ち合わせの予定で、車で迎えに行きます。彼は楽しみにしていたようで、10分前に到着したのですが既に家の外に出ていて待っていてくれていました。二人を乗せた車は、山陽自動車道を通って一気に浄土寺のある小野市に到着しました。


「動いているよこのお方たち」

拝観開始の9時半には浄土寺に到着して、早速境内に入ります。
阿弥陀三尊の居られる「浄土堂」はまだ扉が開いておらず、境内で掃き掃除していたオバサンが私たちを見つけ、「拝観されますか?」の問いかけに「お願いします」と頭を下げる二人。浄土堂の扉を開けてもらって早速入ります。
堂内に入ると否応なしに目に入る巨大な国宝「阿弥陀三尊」。いつものように堂内中央にドーンと陣取っておられます。まずN隊員は「う〜ん…凄い」と唸って、三尊の前に正座します。
私は彼の横に座って浄土寺と三尊の解説を始めます。
東大寺が源平の争乱で焼け、その再建を担った重源上人が、この地に勧進の中心地として浄土寺を創建し、この浄土堂および阿弥陀三尊を快慶とタッグを組んで創ったこと、そして阿弥陀三尊は、蔀戸から差し込む西日により西方浄土から来迎の姿として映るような演出が計算されて設置されていることなど簡単に耳打ちしました。
しかし彼はそんなことを聞いているのかいないのか解らないくらい、静まり返って三尊を見つめています。そして時より「凄い凄い…」と漏らすのみ。
「あの三尊はあのスナック菓子を食べるのだろうか?」と三尊の前のお供え品の中に、何故かスナック菓子があったのでそれを指差し突然突っ込みを入れたりするN隊員。真面目に本尊の前に対峙していると思えば、急に現実に帰って突っ込みを入れたりする。本当に掴みどころのないヤツですな〜
やがて体中から汗が滲み出てきます。さっきまで浄土堂は締め切っていたためか、堂内の熱気が私たちを包み込みます。しかし三尊のお方たちはクールな眼差しで、いつものように拝観に来た者たちを出迎えてくれます。
突然N隊員は「向かって左の菩薩さん(観音菩薩)が手に持っている蓮の花を上げり下げたりしているように見える。右のお方(勢至菩薩)は腰をクネクネ動かしているように見えるよ」と言いだす。
私「おお、アンタも動いているように見えたか?千年近くも立ちっぱなしでいると、さすがに運動もしたくなるんでしょうね〜私は三人とも雲に乗って、ゴゴ〜って音を立てながら前に進んでいるように見える」
次にN隊員を三尊の後ろに連れて行って、今度は後ろから見仏する。
特に彼は三尊が乗っている雲の複雑な造形に驚嘆する。
N隊員「しかしこの雲の造りは…凄い。本当に木を彫って作ったんだろうか?しかも継ぎ目が全く見えない、さすがは快慶」と唸る。


受付のオバサンと盛り上がる

すると堂内の入口に座っているオバサンが、拝観者が私たちだけだったせいかこっちにやって来て、色々解説してくれました。
オバサン「私は特に脇侍の両菩薩の手が優しく大好きなの」と。
私は負けじと「実は私は両菩薩の足の甲が柔らそうで萌えますよ。いつもタッチしたい衝動に駆られているんですよ」と返す(なんか飲み屋での下品なオッサンの会話のようだ、三尊さん申し訳ありません)。
こんな感じで盛り上がる私たち。その後オバサンから浄土堂の堂内の梁が角材ではなく、丸いのは光の反射を考えてのことなど、堂内の建築構成が浄土の演出を考えて創造されたことを教えてもらいました。凄いぞ快慶&重源上人!
そして最後に、「他の人には内緒だけど、西日が差してきた時にこの位置から見ると、三尊が神々しく輝いて本当にステキなのよ〜」って三尊の『秘密のベストビューポイント』まで教えてもらいました。私は既に4、5回この浄土時に来てるのですが、恥ずかしながら西日の差す時間に訪れた事はまだ無いのでした…
私「今度こそ日没時に来ますね、ありがとうございました」とオバサンに熱くお礼を言って、私たちは浄土堂を出ることに。実はこの時、私はもう一寺向かうことに決定していました。
浄土堂を出るときN隊員に「今度は夕暮れにカミサンを連れてきたらイイよ」と彼に申し送りしました。実は彼は私の知らないうちに、彼のカミサンと夫婦で二人アッチコッチ仏像を見に行っているようです(先日も夫婦で宇治の平等院にも行って、定朝作の阿弥陀如来を見てきたらしい)…


鶴林寺へ向かう

浄土寺の駐車場で
私「今からもう一寺行く。さっき脇侍のお二人の腰の捻りを見てて『あいたた観音』に急に逢いたくなりました。時間があればもう一寺行きたいと思っていたので鶴林寺に行きます。今なら鶴林寺に寄っても昼過ぎに姫路に帰れそうです」
N隊員「了解、お任せします」
ということで今度は浄土寺のある小野市から南下して、加古川市の鶴林寺に向かいます。車中でも「あの腰のクネクネが良かったなぁ」と言っているN隊員…
私「数年前に流行った、音や声に反応してクネクネ動く人形があったでしょう、あんな感じなの??」
N隊員「そうそう、そんな感じですよ」って会話しながら走ります。
25分くらいで到着した鶴林寺。拝観料500円(宝物館含む)を収めて入ります。
N隊員「確か幼稚園の遠足で来たと思ってたんだけど、お弁当を食べたあの広い芝生は無いなぁ…」
私「このお寺の境内には広い芝生なんて無いよ、隣接の『鶴林寺公園』か、他のお寺と間違えてないか?」
N隊員「いやいや、ここの境内だよ!」なんて激論しながら、本堂や太子堂を時間の関係で今回はパスして、一気に「あいたた観音」の居られる宝物館に向かいます。

いつものように館内の中央のガラスケースに居られる重要文化財「あいたた観音」こと「聖観音立像」。右手を上げ、「久しぶり、いらっしゃい」と挨拶してくれているように見えます。にっこりした優しい表情、今回は女性っぽく見えます。私はN隊員と二人で観音さんの周りをぐるぐる回りながら「あいたた」の謂れを解説します。
私「どうでしょう、この腰のぐにゃり感もイイでしょう?」の問いかけに、
N隊員「う〜ん、たしかに曲がっていますね〜」と彼は唸るだけ。先ほど行った浄土寺勢至菩薩の腰の捻りの方が彼にはグッと来たのでしょうか?それよりも彼は重要文化財の「釈迦三尊」を囲むように守っている四天王達の腰の捻りにグッと来たようです。「この腰の捻りはまた…イイなぁ」と言いだす。
私はいつもは他には目もくれず、「あいたた観音」に突進するので、今回はあえて他の仏像を中心に見仏することしました。
重要文化財の「釈迦三尊」の脇侍である「文殊菩薩」。乗られている獅子の顔が、いつも見る獅子のような、いわゆる獅子舞のような「日本調」な顔ではなく、遠くペルシャのリレーフに描かれているような、よりライオンに近いお顔であることに気付く。
次に「大黒天」。全身真っ黒で、本来のにっこりした優しい大黒さんではなく、リアルな表情で逆に何か怖い…。私は「これはきっとモデルがいるなぁ。夜中にこの大黒さんに出会ったらきっとギョっとするだろうな」そう呟きながら、次に絵画の重要文化財「聖徳太子絵伝」や、国宝「太子堂」内でX線撮影で発見された壁画「九品来迎図」&「釈迦涅槃図」(摸写)の説明をN隊員にする。
彼は「釈迦涅槃図」を特に気に入ったようで、仰向けに入滅する釈迦は珍しく、この鶴林寺と高野山金剛峯寺の2例だけということと、釈迦の周りにいる「十大弟子」や「菩薩」たち、釈迦の母である「橘夫人」などの説明をする私の話を真剣に聞いていました。
しかし鶴林寺は「あいたた観音」以外にも素晴らしい文化財が満載で、本当に「引き出し」の多いお寺だと実感。


受付のオネエサンに圧倒される

すると受付いたオネエサンが私たちの所にやってきて「結構お詳しいですね。もしかしてお寺関係のお方ですか?」と話しかけてくる。坊主頭の二人が真剣に語り合っているのを見て、お寺関係の人と思ったのか?
「いえいえ、ただの寺好きのものですよ」と私たち。
そこからオネエサンの独り舞台が始まる。話し相手が欲しかったのか、鶴林寺の縁起から、ドンドン話しだして、果ては最近行った韓国旅行で、財布を無くしてしまった話など…私たちは圧倒されて「ハイハイ」と相槌を打ったり、頷いたりするのが精一杯。
「そ、そろそろ行きましょうか?」の私の合図でようやく出ることにしました。
宝物館を出ながら、
私「あのオネエサンはたしか以前、一人で来た時も、今日のようにドンドン話しかけられて困っちゃったよ」
N隊員「そうやな…さっき隊長の表情見ていたら困っていたもんな」
外は体が干し上がってしまうほどの暑さ。すぐにエアコンの効いた車に乗りたかったのですが、さっきオネエサンが言っていた「今日は終戦記念日です。境内に特攻隊の鎮魂の碑がありますので是非手を合わせてくださいね」の言葉を思い出し、境内マップを頼りに「特攻隊の碑」を探し当てました。講堂と新薬師堂の間にひっそりとある碑。
この地の出身で、特攻隊として散った若者達がいたということなんでしょうね…
腕時計を見ると時間は丁度お昼の12時。
私「そうか今日は終戦記念日だったのか。今頃高校野球をやっている甲子園では黙とうの時間か…」
と二人で碑に向かって手を合わせる。


その晩私のPCにN隊員からEメールが…
内容は、家に帰って用事を済ませた後、昼寝をした時の彼の夢は「浄土寺の阿弥陀如来たちが動いているような夢」だっとそうな。
「あーしんど」と腰を動かしたりしているように見えたとか…
やはり腰のクネリが気に入ったみいですね。

T隊員からは電話があり
「結局N隊員と二人で行ったのか?イイなぁ〜でもこっちは家族で境港まで行って今流行りの『水木しげるロード』を楽しんできたよ〜」という内容でした。


これで御盆休みは終わり。
明日から三人とも仕事が始まります。
御盆の最後はそれぞれ満喫出来たみたいです。

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