行き先は一本の電話から…

ツアーの前日、T隊員から突然一本の電話が
T隊員「二つほどリクエストがあるんやけど」
私「なんでも言ってごらん」
T隊員「俺たちツアーでアッチコッチへ行くけど、いつも寺ばっかりだろう?たまには街を歩いてみたいなぁなんて思ったりして」
私「そうやな〜」
T隊員「それとあのコロッケが食いたい」
私「そうですか…了解!わかりました〜」
実はその時まで行き場所がまだ決まっていませんでした。ツアーの前日なのに全く決まっていない。候補地として、「安部文殊院」(文殊菩薩さんが修復中で、なんと獅子から降りておられる姿が公開中だそうな)、「唐招提寺」(金堂修復が終わって、中に居られた仏像たちが帰ってこられたそうな)、「元興寺極楽坊」(『TV見仏記』のDVDで見た如意輪さんに逢いたい)などが私の中で挙がっていましたが、T隊員の電話で決めました。
如意輪フェチのN隊員のためにも元興寺の極楽坊に決定。元興寺を出たあと奈良まちを歩いて風情に浸って、シメはいつもの法華堂、帰りに以前の奈良ツアーで立ち寄った「つよしのコロッケ」に寄って美味しいコロッケをゲットするという、「見・食・仏」満喫の、まるでTVの旅行番組のようなツアーとなりました。
先日T隊員のディーラーで買ったばかりの新車で奈良へ向かいます。


「地獄の裁判員」たちに媚を売る


いつものように高畑駐車場に車を置いて歩きます。
猿沢の池を東に通り越して、元興寺を目指します。しかし猿沢の池にいっぱいいるカメが全く見当たりません。
全員池の底で冬眠しているのでしょう、たまたま「冬眠しそびれた」2匹が甲羅干しをしているのを発見ました。二匹とも眠たそうに日を浴びていました。
しばらく歩いて元興寺に到着。
入り口である「東門」には10代後半の若いギャルたち(古い言葉だなあ)が数人いました。
私「おっ、最近お寺で若い女性をよく見かけるんだよね」
T隊員「シブイなぁ、彼女たちも仏像見に来たんだろうか?」
私「いや、きっと境内をウロウロしてそのまま帰っちゃうんだろうな」
その予想通り、彼女たちは本堂はおろか、宝物館も寄らずに出て行ってしまった。
私は「もったいないよな〜」なんて心の中でつぶやきながら、受付で朱印を預けて「極楽堂」とも呼ばれる本堂に突入します。
本堂内は中央の厨子に智光曼荼羅が飾られており、その周りを巡礼するシステムになっていました。丁度厨子の裏側には、「閻魔大王坐像」を中心に、数名の「地獄の裁判員」といえるお方たたちが勢揃いしていました。
私はすかさずN隊員を呼んで、耳元でささやく。
私「右端におられる人は、『司命』さんと言って、アンタが地獄に落ちて裁判するときに、『コヤツは生前にこんな悪いことしてしてまっせ』って閻魔さんにアンタの生前の罪状を伝える役目をやってるんや。左端は『司録』さん。筆を持って裁判の記録係をしています」
N隊員「へ〜っ」
私「だから今のうちに、このお方たちに媚を売っておいたら?アンタ高校時代に結構メチャしとったもんな〜」
するとすがさずN隊員は「ナムナム…裁判のときはヨロシクです」って合掌する。
その後クールな「薬師如来立像」や「地蔵菩薩」を流すように見て、本堂を出る。次はお待ちかねの「如意輪観音」さんが居られる宝物館に向かう。


「マイベスト如意輪」

宝物館入ってまず目についたのが、まずガラスケースに入ったクールな「薬師如来坐像」。豪華な蓮華座の上に乗られており、薬師さんにしては目が細く、クールな印象。でもそれが前に立つ者の「心の病」まで目を細めて見透かしているようにように思え、見るほうもチョイ緊張してしまいそうなお方。
そして「地蔵菩薩立像」。露わになった顔の木目が、目から流れ落ちる涙のように思える。そして潤んだ玉眼の相乗効果で、本当に地蔵菩薩が私たち衆生のために泣いているように思えて、こちらも思わず合掌せずにはおられません。
2階に上がります。階段を上がったところに居られる、今回私がN隊員に是非見せたかった「如意輪観音坐像」が居られました。
ガラスケースの中で、ゆったり休んで居られました。ケースの中で専用のスポットライトを浴びて「色っぽさ」に溢れたお方。そして頬にそっと当てた指先がなんとも妖しくて気になります。こっちが一瞬でも気を離した瞬間、何故か動きだしそうに思えてしまう六本の腕。緊張感と怪しさと色っぽさを兼ね備えた凄いお方。さらに口元が超セクシー。この口元がこの如意輪さんの要素全てを物語っていると、私は見ました。この如意輪さんイイ!
今まで色々な如意輪さんを見てきましたが、私にとって「マイ・ベスト如意輪」と言えるお方になりました…
予想通りN隊員はこのお方の前から動きません。私とT隊員が先に行ってもじーっとこのお方に立ったまま。後から来た拝観者のオジサンが「早くどいてくれないかなー?」なんてN隊員の後ろをウロウロしているのを彼は知らない。
1階に戻るとN隊員が階段下に展示されていた、私はノーマークだった、八臂(八本の腕)の「弁財天坐像」のケースの前にしゃがみだす。
私「何してんの?」って訊いたら、
N隊員「この弁財天、しゃがんで下から見るとニッコリ笑っているように見えるんや」だって…
私もしゃがんで見てみると、確かにうすら笑いを浮かべたように思える弁天さんが、満面の笑みを浮かべているように見える。
私「ほんとや、にっこりしてるわ」
しかし中年男性二人が、小さな弁天さんの前で嬉しそうにしゃがんで見ている風景は周りの人にはどう映ったか…


「なーむくん」を探す


元興寺を出て、次にT隊員の希望でならまちを歩きます。
ところどころ気になる土産屋があったら、すぐ入ろうとするT隊員。店を出るたびに手に持つビニール袋が増えている。
T隊員「家族やお得意先に頼まれちゃってな…」なんて…
ならまちを歩いていると、時々興福寺の五重塔が街並みの隙間からのぞいて見えたりして、風情のあるならまちでした。
ならまちを通り過ぎて今度は、「奈良もちいどのセンター街」と呼ばれる商店街に入ります。
商店街は「せんとくん」や「まんとくん」のキャラで溢れかえっていました。
商店街のポスターも、ショップに飾られたキャラもこのお二人のキャラばかり。やはり第3のキャラ、「なーむくん」は見当たらない。
私「やーっぱ、『なーむくん』はいないんだなぁ」
隠れ「なーむくん」ファンの私のつぶやきにN隊員も同情して一緒に探してくれることに。
そしてようやく見つけたキャラクターグッズ専門店の、ショウウィンドーに遂に「なーむくん」発見!しかし「せんくん」バッグに入っている人形が一個だけ…
私「かわいそうに『せんとくん』に呑まれているなぁ…」とりあえず写真をポチリ。
そしていつものように「天下一品」でラーメンを食べる。私とT隊員は「ギョーザ定食のラーメン大盛り」、N隊員は「チャーシューメン」。特にN隊員はテーブルに置いてあったニンニクを大量にラーメンに放り込んで「スタミナを付けないとね」なんて言い、汗をかきながらラーメンを食べる。3人満腹になったところで、次に100円ショップ「ダイソー」に入ります。
奈良に行ったら何故か必ずこのラーメン屋と100円ショップ入る我々。
今回の購入品、T隊員は大量の乾電池(リモコンやラジオに使うとか)。私はイヤホンとTVなどのリモコンをラッピングするフィルムの2点。N隊員は「へへ…」って笑うだけで結局最後まで買ったものを明かさずでした…

3人ともビニール袋をブラブラさせて、さあいつものように東大寺法華堂に向かいます。


法華堂内でN隊員に説法する

東大寺の境内に入り、いつものように大仏殿をパスして法華堂に突き進む我々。途中小さい子供を連れた、たくさんの親子連れとすれ違う。
私「あれっ?今日は平日じゃなかったんか?学校休ませたらだめじゃん」
T隊員「みんなアジアの人たちだろう?言葉を聞くと」
耳を澄ますとあちこちで広東語やハングル語が聞こえる。
そうか、アジアのあちこちの国から観光に来ているのね。しかし海外からとはいえ、親子連れで寺とはシブイ。
そうしているうちに法華堂に到着。靴を脱いで堂内に突入します。
堂内はいつも以上に人出がなく、我々3人のほかに一人旅風の女性が一人だけ。早速いつものようにN隊員は本尊である「不空羂索観音」の正面に胡坐をかいて座り、瞑想にふける。私とT隊員はあっちこっち移動して見仏にふける。いつものようにお決まりのスタイルでしばらく過ごす。しかし底冷えする堂内にいると足が冷たくなって我慢できなくなる…
N隊員「足が冷たくなってきたよ、そろそろ出ようか?」なんて言葉にすぐ反応する私。
N隊員のほうを見るとまだ瞑想中。私は彼の耳元で「そろそろ行きましょか?」彼は小さくうなずいて目を開けます。
私「今日は本尊さん、ずーっと怒っているように見えるわ」
N隊員「そういえば怒っているように見えるな〜」
私「ある人の本に書いてあったけど『奈良の大仏さん、大きいと思った人には大きく見えて、小さいと思った人には小さく見える』この真理、解るか?」
N隊員「解らへんわ」
私「何事もそうやけど、どれだけ『敬う気持ち』があるかだよ。『すごいな〜ありがたいな〜なんて思う人には本当に大仏さんが大いなるものに映るし、『な〜んだこんなもんか』と思う人には小さく見える。これ深いで〜」
N隊員「ほ〜〜っ」
私「だからアンタにこの本尊さんが怒っているように見えたのは、それだけこの本尊さんに『帰依』しているってことやと思うで」
N隊員「へ〜っ」
理解したかしなかったかよく分からないN隊員と足もとが寒くて早く出たそうなT隊員を引き連れて法華堂を出ます。
二月堂にお参りしたあと、久々に四月堂に入ります。
T隊員は「俺は外で待つわ」って外で背中を丸めて北風に打たれている間にN隊員と四月堂の本尊「千手観音」をじっくり見仏する。
24本の太い脇手がぐにゃりと後ろから伸びている。しかし今回サイドに回って本尊を見ると、なんとさらに後ろから小さい脇手が何百本と生えているではないか!これには驚きました。千手さんの前で座ってお参りしているN隊員を呼んで二人で見仏。
私「昔は本当に千本あったのかもね」
とN隊員に囁いて先に四月堂を出る。「やっと出てきたか」って表情のT隊員と満足そうに後から出てきたN隊員と3人で東大寺を出ることに。
あまりにも寒いので、途中の休憩所で甘酒(私は運転するので缶コーヒー)を飲んで駐車場のある高畑に戻りました。
T隊員「おおー!奈良だけで14,000歩以上も歩いたよ!」っていう、万歩計を見た彼の叫びに驚く二人。確かに結構歩きました。でもその分、カロリー高い昼飯だったのでその分消費しないとね…


そろそろ車を出して欲しい(会長の願い)

帰りにT隊員のリクエストに応えて「つよしのコロッケ」に寄りました。
奈良市の西、学園大和町の住宅街にある「つよしのコロッケ」。
我々が到着した時には、ご近所の奥様達の夕食のおかず買い行列が。続いて並んで3人とも大量に生のコロッケを買い込む。
今晩は3人の各家庭で晩御飯にこれが並ぶんだろうな…

今回は予想通り「見・食・仏」と、いつも以上に充実したツアーになりました。土産のビニール袋をガシャガシャさせながら、車は西を目指して家路を走りました…

車の中での会話
私「そろそろ車を出す役、代わってくれないかな〜?もう14回連続にもなるとさすがにシンドイ」
T隊員「俺の車は後ろの席はこの車より狭いって!」
N隊員「俺の車は軽四だから……遠出はシンドイよ」
なんてこういう時だけ強気になる二人…
まあイイです、次からツアーの費用(いつも朝に二人から徴収する)を値上げしようか?と会長としての強硬策さえ考えながら、眠気と闘いながらハンドルを握る私でした。

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「外はカリっと、中はサクサク」
美味しかった〜

「何故か百均に入ると、ツイツイ買ってしまうんだよな〜」(T隊員談)。
百均の魔力にいつもとり憑かれる我々。

ご近所の奥様達が並ぶ「つよしのコロッケ」。
人気ですね〜

たった一人で頑張る「なーむくん」。
頑張れ。

東大寺の鐘楼(国宝)。
屋根の「反り」にいつもグットきます。

「奈良もちいどのセンター街」。
近所の奥様達で溢れかえっていました。

ならまちのあちこちにぶら下げられていた「身代わり猿(申)」。

元興寺の朱印「智光曼荼羅」。

この石仏にグッときた。

本堂をバックにT隊員とN隊員が何やらニヤニヤ笑っていました。

ならまちを歩いていると、時々興福寺の五重塔がちらちら見えます。

元興寺の境内にはいたるところに石仏が並んでいます。
可愛い石仏とクローバーの葉がイイ味出しています。

彼らの眼先には素焼の「邪鬼」が。
表情が面白い。

元興寺「東門」。

「冬眠しそびれた」カメ2匹発見。

09年12月9日 第14回見仏ツアー ならまちを歩く
(奈良 元興寺極楽坊 〜ならまち〜東大寺法華堂・四月堂)




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