三井寺の大門(仁王門)。
大寺の門らしくどっしりした造りです。

いつ見ても長〜い三十三間堂です。

六波羅蜜寺の朱印「六波羅堂」。
もうすぐ2冊目の朱印帳も終わります。

「力餅食堂 加藤商店」。
これから京都に行ったら、昼飯はここに決まり!

09年11月1日 二人見仏 パンチのある仏像巡り
(大津 三井寺〜京都三十三間堂〜六波羅蜜寺〜東寺)

雨の東寺金堂。
この頃が一番雨も激しかった。あちこちに水溜りが出来て、ホップステップで歩かなくてはいけませんでした…

「パンチのある仏像が見たい」

久々のお寺巡りになりました。
11月1日は丁度予定のない日、久しぶりにお寺に巡りに出かけます。
私の勤める会社にいる若手社員のA君を連れての二人見仏になりました。
彼曰く、「パンチのある仏像が見たい」とのこと。若いくせに中々渋いことを言う彼の運転する車で、滋賀に向かいます。
今回の目的地は大津にある三井寺(園城寺)。実は私自身も三井寺は初めてで、金堂内の内陣周りには文化財指定を受けてはいないけど、中々「パンチのある仏像」がワンサカ居られるとの情報が…。みうらじゅん&いとうせいこうの「TV見仏記」のDVDでも見たことがあり、是非ナマで逢いたいという思いで今回のツアーに組み込むことに。そして丁度西国三十三か所の札所に当たる、観音堂の本尊「如意輪観音」が31年ぶりの御開帳で、見どころ満載の三井寺を出た後、京都のお寺(三十三間堂・六波羅蜜寺・東寺)を回ろうという贅沢ツアーです。
実はA君とはこれまで何度か寺巡りを行っており、「第一回初心者見仏ツアーin京都」でこの3寺はすでに行ったことがあるのですが、その時の「パンチのある仏像」たちの印象が忘れられないとのことで、この3寺も回ることになりました。
A君の車にはナビは付いておらず、私が地図を片手にナビを務めることに。
しかし名神高速大津インターを降りて、すぐに道を間違える(スマヌA君)。なんとかUターンできる道を見つけて20分くらいのロスでようやく三井寺に到着。駐車場に車を停めて、目の充血した怖い仁王さんたちが待ち構える重文の大門(仁王門)をくぐります。


パンチのある仏像群にグッときた三井寺

大門をくぐって正面にある国宝の金堂に入ります。
内陣の周りはまさに仏像ワールド。まずは入ってすぐに目に入る「大黒天」。通常大黒天と言えば、大きな袋を担いで優しいお顔をしているのですが、この大黒天と言えば睨みを利かせた四天王っぽいお顔でちょっと怖かった。次に「役の行者坐像」。青色と赤色の鮮やかな彩色が残った「前鬼・後鬼」を従えた、老いさらばえた写実的な姿に息をのむ。そして私の逢いたかった「大日如来坐像」、と思っていたら台座と光背を残して何処かに行かれた模様。貼り紙には「ただ今○○博物館へお出かけ中です」と…
A君「何で本人だけ行ってしまったんでしょう?普通はセットでしょう」
私「きっと光背や台座まで持っていくとなると、運搬費用が割り増しになるからだろうなぁ」
なんてくだらない会話をして、いよいよ私の一番逢いたかった「尊天」の前に立つ。別名「妙見菩薩」。四臂で片足を後ろに上げて雲の上に立ち、独特な印をする。頭に鹿を乗せ涼しいお顔に癒されます。光背には七個の赤と白の丸い物体(多分北斗七星を表しているでしょう)に象や虎などの動物が絡んでいる。このお方イイ!
A君が特にグットきたのは「不動明王立像」。「火焔光背」が前にも流れて、不動明王が炎に包まれている表現。
A君「この不動明王の炎、凄いですね」
私「熱いだろうな〜でも不動さん自身も熱くなっているので大丈夫でしょう」
私「それと不動の両脇にいる子供、つまり童子たちは、眷属(けんぞく)と言って、不動のお世話をしているんや」
A君「へ〜」
私「昔、不動は大日如来の世話係、つまり『使いっぱしり』をしていたけど、今は出世して自分に『パシリ』が出来たってことなんだよ」
A君「た、体育系ですね…」
私「だから二人の童子に『おい、カレーパン買ってこい』って言っているかもな」
A君「……」
なんてショーもない会話を展開する二人。
この金堂内には数体の「不動明王」がいて、それぞれの時代(平安〜鎌倉)の特徴(牙や目の向き)をよく表しているので、「もし不動明王を勉強したいのなら、是非三井寺へ」なんてフレーズが頭に浮かぶ。
次にグットきた「阿弥陀三尊」。死者を迎えに来た「来迎阿弥陀三尊型式」で、連弁を差し出す「観音菩薩」の構え方(立って足を開き、少し前かがみに連弁を差し出す)にグットきました!
私「ああ、この観音さん、持って帰りたい…」
予想以上にパンチを打たれてグッときまくりの金堂を出て、次に向かうのは三井寺境内にある「微妙寺」。ここには毎月の土日祝日、17・18日に開帳する、五等身のいわゆる「SDガンダム」チックな重文「十一面観音」が居られます。
しかし思うにはこれって「秘仏」なんだろうか…?毎月の土日祝日、17・18日って、このお寺の名前のように「微妙」な開帳の仕方をするなあ…なんて考えながらお堂の中に入ると中央の厨子は閉められたまま…入り口を振り返るとまた、「ただ今○○博物館へお出かけ中です」と金堂内と同じ貼り紙が…
私「しかしこのお寺の仏像たちって、お出かけするの好きだなぁ〜」なんてA君と話しながら向かって右の厨子を見ると、素敵な十一面観音が居られました。首から信者がかけたと思われるペンダントや手首には数珠のブレスレットが…。
A君「この観音さんイイですね〜カッコ良いペンダントをしていますね」
本尊のお方には逢えませんでしたが、素敵な十一面さんに出会えてチョイ満足げに出ることに。
その後インド孔雀の檻(三井寺では何故か孔雀を飼っていました)の前でA君に、「孔雀明王と役の行者の関係」の授業をして、次に「弁慶の引き摺り鐘」を見学、そして最後に西国三十三か所の札所である「観音堂」に到着。
31年ぶり開帳の「如意輪観音」。派手派手の宝冠を頭に載せてゆったり寛いでいるように思えます。頬に当てた指が艶めかしくて気になります。それよりも気になったのは本尊の右側に居られる重文「愛染明王坐像」。うす暗い内陣の奥でふっと浮かびあがる怖いお顔。頭に載せた獅子の顔も不気味でした…
観音堂を出て、展望台に登る。そこから見た琵琶湖は霞んで遠くまで見渡せませんが、癒される景色に暫くボーっと眺めている二人…。


いつ来てもパンチがある三十三間堂&「空也手拭い」


三井寺を出て20分も車で走るともう京都市街地。
三十三間堂に車を乗り入れます。駐車料金はなんと無料!しかし駐車場のオジサンが「40分で車を出してくださいね」と念を押される。
慌てて堂内に突入。私は三十三間堂はもう5回目になりますが、堂内にに入って千体の千手観音と対峙した時の驚きは何度来ても味わえます。
時間がないので、A君には「二十八部衆」の説明を簡単にしながら見仏を始めます。
今回私が特に気なったのは「難陀龍王(なんだりゅうおう)」。体に龍が巻きつき、その龍が頭上でこっちを睨んでいる。竜王の不敵な表情にも惹かれます。
そして「五部浄(ごぶじょう)」。腕を前でクロスして、刀をかざして千体の千手観音を守っている。今までは堂内に入ると真っすぐ本尊の国宝「千手観音坐像」や「婆藪仙人(ばすせんにん)」のところに馳せ参じ、うっとり見惚れている私ですが、その他にも魅力的なお方が沢山あることを再認識させられた今回の三十三間堂でした。
三十三間堂から車で六波羅蜜寺に向かいます。しかしナビもなく、京都の駐車場状況なんて全く知らない私たちは、とにかく目に付いた駐車場に停めようとして走り回りました。すぐ目に付いた1時間300円のパーキング。しかし1時間しか止められないので急いで帰ってこなくては。三十三間堂にいたときから降り出した雨は激しくなり、傘の持っていない私は、途中で見つけたコンビニでビニール傘を買うことに。
六波羅蜜寺はいつも以上に賑わっていました。本堂から向かった宝物館も沢山の人で、以前のようにじっ仏像との対話を楽しむ余裕がありません。しかも新しくなった宝物館内では、各仏像をガラスケースに収納しており、今までガラスケースなしで身近に感じられた「閻魔大王坐像」や「運慶坐像」が若干遠くに感じられてしまう…
特にいつも私が恐怖を感じる「運慶坐像」もガラスケース越しに見ると、いつも感じる魔性、オーラが感じられません。今までは運慶さんと1メートル以内まで近づいて、睨めっこをやるたびに目が離せなくなって恐ろしい思いをしたのですが、今回はそれが無くなってひと安心。でもかえってそれがチョイ寂しい…
本堂に戻って土産を物色します。前回の「初心者見仏ツアーin京都」でA君が買った六波羅蜜寺オリジナルの手拭い。阿弥陀を口から吹き出す「空也」さんが描かれた激シブのデザイン。彼が首に巻いて使っているのを見て「シブいなぁ〜」って以前から思っていました。その手拭いをついにゲット!
パンチが少し無くなった宝物館でしたが、パンチのある手拭いをゲットして六波羅蜜寺を出ることに。
時計を見たら、もうすぐ車を停めてもうすぐ1時間が経とうとしている。腹が減ってきたので近くにある、本日行く予定の食堂に寄ろうかと思いましたが、「やっぱり戻りましょう」のA君の一言で車に戻ることに。急ぎ足で駐車場に戻ると、今まさに駐車違反の監視員のオジサンたちが1時間以上停めている人がいないかチェックしている最中。駐車場が発行したカードを見ると1時間になる5分前でした(ホッ)…


「衣笠丼、一丁」が言いたくて…

実は今回の見仏で、是非寄りたかった食堂がありました。
前回の「初心者見仏ツアーin京都」で寄った食堂で、メンバーで昼ご飯を食べていると、粋な和服を着こなした30代位の男女が入ってきて、男性の方が店員に「衣笠丼(きぬがさどん)一丁」と言ったのでした。その粋な男性の、いかにも「京都風」な言い方もカッチョよく、衣笠丼とは何なのか興味があって、A君とはその後に寄った清水寺では「あの和服の男性、粋でカッコよかったなぁ〜、今度京都に行ったら、絶対あの店で『衣笠丼、一丁』って注文しような〜」なんてずーっと話していたのでした。
そのお店は「力餅食堂 加藤商店」。チョイ寂れかけたお店(失礼)ですが、中々味のあるお店です。今回はそのお店に寄るために、わざわざそのお店の近くの駐車場を探してまで寄っていく執念。A君と私は車の中で「衣笠丼、衣笠丼…」と呪文のように口ずさむ…
運よく近くに駐車場を見つけて、一年ぶりに「力餅食堂 加藤商店」に突入。レトロなテーブルに腰を降ろす。店内は我々以外誰もいませんでした。店主と思われる頑固そうなオヤジさんが注文を聞きにやってくる。
私は早速何も考えず「衣笠丼、二つお願いします」と言ってしまった…
「シマッタ」と思ってももう遅い、「衣笠丼一丁って言うの忘れたぁ」って苦笑いの私。暫くしてやってきた「衣笠丼」は、親子丼の鶏肉の代わりに厚揚げが入っているシンプルな丼ぶりでしたがそれがまた旨い!
美味しく頂いていると、瀬戸内寂聴さん激似の尼さんが、着物を着たご婦人たちを引き連れてお店に入ってきました。「おっ、いかにも京都っぽいシチュエーションだね〜」なんて話をしながら、丼ぶりを平らげる。それでもまだお腹には余裕があったので、珍しいメニューを注文してやろうと思って、私は「のっぺりうどん」なるものを注文。
「のっぺりうどん」は湯葉とシイタケ・コンブなどが入った、いかにも「和」っぽいうどんでした。A君はなぜか中華の「チャンポン麺」を注文。「なんで京都まで来てチャンポン麺なんだぁ〜」なんてツッコミはやめて二人美味しく京都の味を堪能しました。


薬師如来の前でガイドのお姉さんに突っこみを入れる

車で雨の東寺に到着。
東寺も賑わっていました。まずは立体曼陀羅は後に回して金堂に突入。内部は拝観者で満杯状態。ようやく本尊の薬師如来の前で座り込むことが出来て、ゆっくり堪能しようと思ったら、「東寺」と書かれた法被を着た二十歳前後と思われる可愛いお姉さんが突然本尊の前に現われて、「只今より、東寺のご説明をさせていただきます」と解説を始める。時々上を向いて思い出すように、棒読み風に言うものだから「あっ、きっとあの娘は文章を覚えて棒読みしているだけだなぁ〜」なんて私が言うと、A君が「そんなことないっスよ、きっと考えながら言っているんですよ」ってすかさずフォローする。沢山の拝観者の前で一生懸命、説明をしている彼女に突っこみを入れて申し訳ない…
しかし金堂のライティングにはいつも感心します。薄暗い堂内で日光・月光さんの優しい表情が柔らかく際立つライティング。ライトも「一体何処から照らしているんだろう?」と探してしまうほど目立たない位置から照らしているので仏像鑑賞に集中できます。A君は「日光菩薩、イイですね〜」私「いやいや私はやっぱり月光菩薩だな〜」
次に講堂に入る。講堂内も大繁盛でした。そして若い女性が目立つようになりました。「仏像ガール」をはじめ「阿修羅ガール」など、女性にも仏像が浸透してきたことでしょうかね…私の前を「ここのお堂は、『踏みつけ系』の仏像が多いわ〜」なんて若い女性がしゃべりながら通って行くのを見て、思わず吹き出しそうになる。四天王や降三世明王を見てそう言っているのか?数年前では考えられない状況です。
私は「降三世明王」の前に立ち、暫く見つめあう。知らず知らずのうちに手が勝手に「降三世明王」の印である「降三世印」をしてしまう。A君も五大明王のエリアからず〜っと離れない。A君「やっぱりこのエリアですね〜」って。癒される仏像もイイけど、パンチのある仏像にやっぱり惹かれるんですよね〜…
五重塔内部が(1階のみ)公開されているので、入ることに。入口には若い男性が数名案内役を務めている。金堂内の若い女性といい、学生ボランティアなのか?
私「お寺の解説のアルバイトやボランティアなら是非やってみたいよなぁ」って言いながら入ります。五重塔の1階内部は、大日如来を除いた「五智如来」の4名が中央の大柱を中心に外向きに並んでいる。壁には「真言八祖」をはじめ、蓮華や龍が描かれており華やかな印象でした。


帰りの車の中。
私「どうですか?今回のツアーはパンチがありましたか?」
A君「はい、ありました、ありました」と満足げな彼。
しかし彼を見るとチョイ寝むそう。聞くと昨夜は、遅くまでPCいじりと見仏に行けることで興奮して2時間くらいしか寝ていないとのこと…(スマヌ、こっちが車を出してやればよかった…)
彼の眠気を吹き飛ばそうと、何か面白い話をして笑わせようとしましたが、滑ってしまって効果なし。
帰りはサービスエリアがあるたびに缶コーヒーを飲んで、渋滞の道に突入して行く私たちでした…(A君お疲れさまでした)


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目が充血(血走り)した迫力満点の仁王さんが出迎えてくれます。

ビミョーな本尊の開帳のしかたをする「微妙寺」。

三井寺の「百体観音堂」に貼られた千社札が気になりました。
演歌歌手の宣伝も狙ったのか?
しかし画鋲を使って貼るのはいけませんね〜文化財に傷が付きます。

三井寺の展望台から見る琵琶湖は一見の価値あり。
曇って遠くが見渡せなかったのが悔い。

ついに手に入れた!以前から欲しかった、6体の阿弥陀を口から吹き出す空也さんが描かれた六波羅蜜寺の手拭い。
赤の色使い、デザインもカッチョイイ! 
空也さん、激シブです!!




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