拝殿から鳥居を望む。
この鳥居に向かって「かわらけ」を投げます。鳥居の地面が白いのは、蓄積した「かわらけ」です。

国宝の「唐門」。もうチョットゆっくり見たかった。

次男も見惚れたこの景色

三重塔の朱色が艶やかでした。

この急な石段を汗をかきながら登りました。

長浜港にて。
この船に乗って、竹生島へ向かう。

黒田観音寺周辺の田園風景。
この畦道に車を停めて、子どもたちを待たせます。

黒田観音寺です。カワイイお堂です。

いかにも夏っぽい雲が流れている…
この風景もイイ!

今回は訳ありで親子見仏

最初は一人見仏で湖北を巡る予定でしたが、子供たち(長男&次男)の夏休みの思い出にと、16日に大阪の南港で、子供たちメインで遊んだ後に琵琶湖湖畔の長浜で一泊、翌日(17日)竹生島に渡り宝厳寺にて「弁財天」、そして湖北の黒田観音寺にて「千手観音」と出会うツアー。
実は以前からこのお二人は気になっており、今度湖北に行く機会があれば是非お会いしたかった。
まずは宝厳寺の「弁財天」。最初に写真見た時には「何か怪しげなお方だな〜」って思っていたのですが、見ているうちにだんだん惹きつけられた次第。宝厳寺には66年に一度御開帳である本尊の弁天さんが別に居られるのですが、私は御前立ち的な存在のこちらのお方が気になって仕方がなかった…
黒田観音寺の「千手観音」は、一般的な千手観音といささか趣が違います。脇手が太く頭上の「十一面」が無い。十八手であり、持物などから学者たちは「准胝観音」ではないかと言っているが、准胝観音の特徴である「三目」ではない(額の目が無い)…本当に怪しげなお方です。

この怪しげなお方達と出会う子連れの3人旅のはじまりです。


竹生島でヘロヘロに…

長浜のホテルを出て、長浜港に着きました。ここから朝一番(9:00)出航の船に乗って竹生島を目指します。後のスケジュールを考えて朝一番に竹生島に渡りたかったので、出航の一時間前に港に到着したのですが、お盆明が開けた後の17日ということで港の待合室はガラガラ。「もうチョイホテルでゆっくりしとけばヨカッタね」なんて言いながら子供たちと退屈な時間を待合室で過ごす。
予定通り9:00に出港、水面すれすれを飛ぶ水鳥達が連なって、まるで龍が空を飛んでいるような幻想に見える琵琶湖を進んで30分で竹生島に到着。
上陸して拝観料を払い、まず目の前に立ちはだかる急な石段に目が眩む。165段とパンフレットに書いてありますが、急過ぎて手すりを持たないと上がれません。予想以上に息が切れます。それでも我慢して登りきったところに本堂(弁財天堂)があります。
まず正面から入って、外陣と内陣を仕切る格子の左右に居られる巨大な2体の弁財天。
私は向かって左のお方に、以前からお逢いしたくなりませんでした。ある仏像本で最初に見た時はチョイ不気味で(失礼)、怪しげで、でも何となく気になるお方だな〜って思っていましたが、写真を何度も見ているうちに何故かだんだん惹かれていくのでした…
銘文を読むと、永禄8(1565)年に浅井長政が造らせたと記されている。
ふくよかなお方で、力強さと怪しげさを兼ね備えた迫力あるお方です。「逞しいお母さん」的な存在感。頭上の鳥居の奥でチョコンと座る「宇賀神」さんもイイ味出しています。
内陣の中には巡礼姿の人たちが入って、読経を始める。
「頭に載っているオジイサンは、宇賀神(うがじん)と言って、拝むとお金持ちになるんだよ〜」なんて見仏しながら子供たちに解説していると、この弁財天の脇の土産物売り場のオジサンが「あんた仏像のこと、よう知っていますな〜」と話しかけるもんだから、こっちもそれにつられてオジサンと仏像談義に花を咲かせる。「写真撮ってもええで〜」の一言に思わずバシバシ撮らせてもらいました。振り返ると子供たちが退屈しかけているので、「じゃあ次行こうか?」と子供たちを本堂から出す。
子供たちの竹生島でのメインイベントは「かわらけ投げ」なのです。
あちこちの観光地やお寺で「かわらけ」の看板を発見するとすぐ反応する我が子たち。国宝の「唐門」や重文の「船廊下」流すように見て通過(本当はじっくり彫刻などを見たかったが)。宝物殿もパス(涙)。お目当ての「かわらけ投げ」をやっている「龍神拝殿」に到着。200円払って2枚の「かわらけ」(素焼の杯)を貰う。一枚に名前、もう一枚に願い事を書いて、拝殿から岬にある鳥居に投げます。
一通り楽しんだら、子供たちは「さあ帰ろうか」だって…とりあえず子供たちを船着き場の土産物屋辺りに降ろして、「オトウサンはもう一度上がってくるから」と言って再び石段を汗をかきながら急いで上がる。実はこの時、帰りの船の出港10分前。再び本堂に入って秘仏の「弁財天」にお参り。息を切らせて「般若心経」を唱え、本堂脇に立つ石仏の「不動明王&童子たち」にも「般若心経」を唱え、急いで石段を降りる。土産物屋まで戻ると、子供たちはお土産の「試食品」をぱくついている所でした。「オバチャンに貰ったんや、オトウサンも食べてみ」と貰ったお菓子を私もぱくつついていると、向こうから迎えの船が来るのが見える。
今回は船の時間に合わせて80分間の滞在でしたが、次回は一日中居てもイイかなと?思わせる素敵な霊場でした。
帰りの船でも湖面を飛ぶ龍に似た水鳥たちを眺めていると、あっという間に長浜港に着きました。


怪しげな千手観音にノックアウト

長浜港で車に戻って、まず観光協会に電話する。「黒田観音寺」の現在の「世話方」(お堂を管理する地元の方)の人の連絡先を教えてもらうためです。
すると「月曜日はお寺は開けないそうです」と悲しい返事が…
私も引き下がれず「ダメ元で良いから連絡先だけ教えてください」といって、教えて貰った世話方(Oさん)の電話番号に連絡すると
Oさん「いいですよ〜近くまで来たらもう一度電話下さいね」って!
喜び勇んで車を黒田観音寺まで走らせます。
黒田観音寺の周辺は、のどかな田園風景が一面に広がって、「これぞ日本の原風景」といえる場所でした。車を停めて周りを見渡す。
田圃の畔道では、カブに跨ったオバアサンが近所の人と話をしている。琵琶湖から着たであろう水鳥が、水路に入って獲物を狙っている。何時までも見ていて飽きない景色が目の前に広がっている…
しかし騒がしい子供たちをそのままお寺には連れていけないので、「チョットだけ待っててな、車の中でニンテンドーDSしていて良いから」と言い残して私は一人で車に子供たちを残して再びOさんに電話で連絡、歩いてお寺に向かいました。
先にお堂に着いて暫くすると後ろから「ようお越しになりましたなぁ〜」って声が。世話方のOさんでした。笑顔の素敵な50歳くらい奥さんで、早速お堂を開けてもらうことに。お堂に入るとまずパンフレットを貰って、解説の「カセットテープ」を流してくれます。そしてOさんが厨子を開けてくれると同時に思わず「おお…」って小さく叫んでしまいました。怪しげな観音さんの登場です。もうカセットテープの声なんか聞こえません。独特の「釣り眼」。その眼と眼があった瞬間、私はもう釘付け状態。目を逸らそうとしても中々逸らせてくれない…凄い魔性を秘めたお方でした。
テープが終わるとOさんが「どうぞ近くまで来てみてください」と言うが何故か恐れ多くて近くに来れない。申し訳なさそうに近づいて見仏を開始。
まず脇手の太さに目が行きます。18手のすべてが太く力強い。でも暑苦しさはない。これは東大寺四月堂の「千手観音」に似た印象。しかもこの脇手が今にも動きだしそうな錯覚を覚える。
そして千手観音の特徴の一つである頭上の十一面は無く、宝冠が乗せられている。髪型も東寺の「帝釈天」のようなタワーのように高い髻(もとどり)。密教のニオイもビンビンにします。准胝観音にも見えますが額の三眼が無い。謎の多い怪しげなお方…
私「この観音さんってスゴイですね…どう表現したらイイか分からないけどとにかく凄いですね」
Oさん「ここに来られた皆さんそういいますわ〜でも私らこの観音さん、皆さんがスゴイ、スゴイというまでそれほど凄い観音さんだとは…観音さんには申し訳ないけど、お守りしていて正直思っていませんでしたわ〜」
私「最初見た時は、『上から目線』で厳しそうな目だと思いましたが、こう近づいてみたら優しい目ですね」
Oさん「そうでしょう皆さんそう言いますわ」
私「姫路から来た甲斐があります」
Oさん「実は最初に電話貰った5分後に、丁度畑仕事に行こうと思っていたんです。あなたとこの観音さんと何かご縁があったのでしょうね」
私「御縁ですか…」
Oさん「姫路といえば黒田勘兵衛が治めていましたね。この黒田観音寺は黒田勘兵衛の祖先がこのお寺に多額の寄進をして再興させたのですよ。このお堂の前の宝篋印塔は黒田家のゆかりのものと聞きます」
私「そうですか。後でその宝篋印塔にもお参りします」
Oさん「それとこの観音さんの足元には、5体の仏像が置かれているでしょう」
見ると痛みが激しく、もう如来か観音か分からないような仏像や、焼け焦げた仏像達がこの観音さんの厨子に中で一緒に祀られているのが見えました。激しい戦や廃仏がこの地であったことが偲ばれます…
気がつくと、子供たちとの約束の時間(30分間)を大幅に過ぎていることに気付く。早く子供たちのもとに帰らねば。
私「惜しいけどそろそろ帰ります、忙しい時間に来てスイマセンでした」
Oさん「またいつでもいらっしゃい」
朱印を貰って、Oさんに厚くお礼を言って私はお堂を出ました。
お堂の脇の宝篋印塔にお参りをして、小走りで車の元に帰ります。

車に戻ると子供たちは声を揃えて「遅い!」

長男「どうやった?仏像」
私「良かったで〜良かったで〜」と連発する私。
次男「オトウばっかり楽しんで!」
私「うるせ〜昨日はお前らの好きな場所に連れていってあげただろうが」

さあ姫路に帰りましょう。
退屈モードの子供たちとニンマリと満足げな私の乗る車は姫路に向かって北陸自動車道をひた走る。

今度は一人でゆっくり来よう…

09年8月17日 親子見仏  湖北の怪しげな仏像
( 滋賀 竹生島宝厳寺〜黒田観音寺)

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左:宝厳寺「弁財天」(写真撮影OKでした)、右:黒田観音寺「千手観音」(「週刊日本の仏像」よりスキャン)。
私が以前から気になって是非逢いたかった湖北の「怪しげな」お方たちです。




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