京都の大原三千院(正式には『三千院問跡』)。
その根本的な中心といえる「往生極楽院」。
船底天井と呼ばれるアーチ型の天井や壁には阿弥陀如来が25菩薩を従えて出現した「二五菩薩来迎図」などが鮮やかに描かれております。
その往生極楽院の中央に居られる国宝阿弥陀三尊のお三人さんです。
中尊である像高2.3mの阿弥陀如来を中心に、向かって右に観音菩薩、左に勢至菩薩を配置しております。この配置は「来迎阿弥陀三尊」と呼ばれ、阿弥陀の国である極楽浄土へ往生したいと願う人々を、今まさに阿弥陀が菩薩たちを従えて迎えにきた様子を表したものです。
檜の寄木造りで、勢至菩薩の胎内から久安4年(1148)の墨書が発見され、平安後期を代表する三尊像であります。

両脇侍の菩薩のお二人は、少し身を乗り出して正座をしておられます。これは「大和座り(やまとすわり)」と言われる座り方で、「さあ今迎えに来ましたよ」と身を乗り出して浄土に向かう者に語りかけてくれる姿を表したもの。
通常仏像というのは目を開けているのが普通ですが、両脇侍の菩薩たちは人々の死を悼んでいるためか目を閉じています。
さらに観音菩薩の差し出した「蓮華台」は死者が乗るもので、観音菩薩にこの台に乗せてもらって観音・勢至の説法を聞きながら極楽浄土へ旅立つと言う。

通常は寺院の本尊といえば、拝観者に対して高い位置に祀られているのが通常ですが、この往生極楽院の阿弥陀三尊は低い位置に檀に座しており、これは今往生した者の枕元に到着した姿を表現したものと考えられます。しかも両菩薩は等身大なので親しみを感じないわけにはいきません。
まさに死を悼み、優しく極楽浄土に導いてくれるありがたいお三人です。

ありがたや ありがたや…

と思っていても現実はそう甘くはありません。

阿弥陀如来が菩薩たちを従えて迎えに来るのは、死者の生前の功徳にによるもので、実は功徳の高さによって9段階の「ランキング」があるのです。

例えば最高位の「上品 上生(じょうぽん じょうしょう)」では阿弥陀如来と比丘衆(びくしゅう)、つまり楽器を奏でた25菩薩を従えた阿弥陀のフルメンバー。
中の下、つまり「中品 下生(ちゅうぽん げしょう)」になると阿弥陀さんのみ。
最下位の「下品 下生(げぽん げしょう)」にもなると誰も迎えに来ず、普段は観音さんが持っている蓮華台だけがポツンとやって来て、観音さんが乗せてくれるわけでなく、死者が自ら「よっこらしょ」って乗らなければならない。 

自分がもし死んだら誰が迎えに来てくれるだろうか…
蓮華台だけがぽつんと着たら悲しいだろうな
やはり日ごろの行い(功徳)が大事ですね。

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フルメンバーで迎えにきてね 阿弥陀三尊  (三千院) .

大和座りの観音菩薩が差し出す「蓮華台」に乗って死者は極楽浄土に向かうと言われます。
「さあ、これに乗せてあげましょう」と優しい言葉が聞こえてきそう。

※ここに掲載する写真は朝日新聞出版社「日本の仏像 京都編」からスキャンしたものです。まずかったらまずご一報を。                                

国宝「阿弥陀三尊」。
天井や壁には「二十五菩薩来迎図」や「両界曼陀羅」・「雲中供養菩薩」などが描かれており、船底天井と相まって極楽浄土に向かう舟(シップ)の中にいるように錯覚してしまう空間です。




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