円教寺の癒し度1 金剛薩坐像  (姫路書写山円教寺) .

端正なお顔。童子を思わせる表情に意志の固さは見られない。でも「神秘性」のオーラはビンビン放たれている
細やかな細工の宝冠を見よ。

台座の蓮弁の鮮やかな彩色。「わびさび」のある仏像もいいけど、鮮やかな彩色の仏像もこれまたイイものですね。

※ここに掲載する写真は神戸新聞出版社「書写山遊歩ガイド」第五巻からスキャンしたものです。まずかったらまずご一報を。                                
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金剛薩(こんごうさった)…密教独特の尊像で、普賢菩薩と同じ働きをする仏であり、悟りを求める意思が金剛石のごとく堅固なお方なのです。
別名金剛薩菩薩ともいいいます。
私の住む姫路市にある書写山円教寺。西国三十三か所27番札所で、年に数回訪れていますが訪れるたびに新たな発見がある、私にとって心のよりどころでもある素敵なお寺。
その円教寺は重要文化財級の仏像たちがワンサカ居られますが、そのなかで私にとって一番気になるお方がこの金剛薩(県指定文化財)さんなのです。
円教寺の開祖である性空(しょうくう)さんが、この金剛薩から「両界の法」を授かったといわれており、円教寺での信仰も熱かったことでしょう。現在展示されている食堂(じきどう)に来られるまでは金剛堂の御本尊でもありました。

台座の底板の裏には、延文4年(1359年)に東寺の大仏師である康俊(こうしゅん)作と記されてあります。康俊は運慶直系の慶派を引き継ぐ仏師で、奈良を中心に遠くは九州大分まで、各地に密教系の仏像を数多く残す。

像高40pにも満たない小さなお方ですが、見ているとドンドン惹きこまれます。
表情は端正で、まるで童子のような清らかさがうかがえます。「金剛」と言われるような意志の強さ・厳しさは表情に微塵とも出さず、逆に柔和さが滲み出たお方。
運慶直系とはいえ、運慶の仏像のような強い「吸引力」は感じられませんが、慶派の仏師たちが創る仏像らしく、何者かが潜んでいそうな「神秘性」はビンビンに感じられます。

宝冠の細かい細工や台座の蓮華の彩色(後補)はみごとで、私はいつもこの像の前で見仏スコープ片手に長時間かけて細かいところまで見入ってしまう。
特に彩色ですが、早稲田大学で調べたところ、台座の絵具が19世紀にのヨーロッパ製であることが判明。蓮弁の緑の部分にのエメラルドグリーン(花緑青)は1814年にドイツで開発された人口塗料。青の部分は鉱物のラピスラズリを検出されたそうです。

―調査した早稲田大学の名誉教授の宇田さんは「江戸時代の19世紀に修理し、色も塗り替えられた。大切な仏像なので欧州から輸入した高価な顔料を使ったのだろう」と考える―
(ネット上の朝日新聞、「asahi.com」2008年11月26日の記事より)

ある程度"やつれ"の入った、「わびさび」の仏像もイイけど、こういった華やかな彩色の残る仏像もイイかな?と思い始めた仏像であり、私にとって円教寺の癒し度bPのお方。

見るたびに、怒られるかもしれないけど、「欲しいなぁ〜!」と思わず声に出てしまいそう…

部屋に置いて、いつまでも眺めていたい(でも仏像泥棒はいけません)。




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