1月18日は御開帳&「鬼追い会」の日

今日は1月18日。
書写山円教寺にて修正会(鬼追い会式)が開かれると同時に、この日だけ本尊である秘仏の「如意輪観音」と重要文化財の「四天王立像」が御開帳されます。
丁度今年は日曜日に当たりますので、これは行かねばなりません。
現在、西国三十三ヵ所の開帳が次々に行われており、第27番の札所である円教寺も、今年長期間本尊が御開帳されますが、やっぱり一年に一度の、この「1月18日」に逢いに行ってこそ、意味があるのだ!と思って、朝早くから車を書写山方向に走らせるのでした…(といっても、たまたま午前中は暇なだけでした)
朝一番にロープウェイに乗りたかったので、始発の8:30には書写山麓の「ロープウェイ山麓駅」に到着。天気予報では昼から雨、もしくは雪ということで、お日様も雲に隠れてとにかく寒い。山の上にあるお寺なので、かなり着込んで来ましたが、それでも風が身にしみてロープウェイに乗るまでガタガタ震えていました…

ロープウェイを降りて、参道を進みます。時折景色が開けて姫路平野が見渡せますが、曇り空でしかも霞んでいて、市街地がほとんど見えません。とにかく歩いて体を温めようと、参道に並んでいる西国三十三か所の本尊のレプリカも、山門の仁王さん達もゆっくり見仏せずに、ドンドン進みます。とにかく立ち止まると寒いのです…
そうしているうちに本殿(摩尼殿)に到着。もちろん参詣者では一番乗りで入ります。開帳日には外陣と内陣を分けている仕切りが外されていて、内陣の中央に居られる如意輪さんと四天王たちに会うことができます。
火災で焼失した本尊の代わりに、昭和時代に造られた本尊の如意輪さん。白木の逞しいお顔がイイです。
周りを固めている重文の四天王たちもグッときます。持国天以外は露歯(ろし)で、口を開いて「オラオラ、俺たちは怖いんだぞ!」って威嚇しているようで、見ているこちらも硬くなります。踏まれている邪鬼たちは対照的にユーモラスな表情です。怖い四天王にユーモラスな邪鬼、いかにも平安期らしいい四天王です。


「常行堂」で覗き見する

次に「三の堂」と言われる、食堂(じきどう)・常行堂(じょうぎょう堂)・大講堂に到着。大講堂に居られる重要文化財の「釈迦三尊像」を入口の格子戸の隙間から見る。中が暗いので輪郭しか分かりません。
次に食堂に二階ある「宝物館」に上がります。「五大明王像」・定朝作といわれる「大日如来坐像」など素晴らしいお方たちを見ますが、私のお気に入りの「金剛薩(こんごうさった)」さんが居られません。
去年の11月に新聞に載ったのですが、この金剛薩の彩色に使われている顔料には、なんと19世紀のヨーロッパに使われていた顔料を、使用していたことが早稲田大学の調査でわかったそうです。14世紀の室町期に造られたこの像に、江戸時代の修復時に高価なヨーロッパから輸入された顔料を使っていたとは…いつもこの像に会うたびに、私は彩色の素晴らしさが気になっていたのでした。受付のオジサンに聞くと、現在は九州の佐賀県立美術館(「運慶流」特別展)に出展されているそうな…チョイ残念です。
次に常行堂。お堂の正面にある扉は固く締められていたのですが、なんと扉の格子の隙間から中の様子が窺えて、中央に居られる丈六の本尊、重文の「阿弥陀如来座像」がライトに照らされて見えるではありませんか!しかもライトは御本尊の真上からの一本だけで、暗い堂内で御本尊の上半身だけがフッと浮かび上がるライティング。「円教寺、中々ニクイ演出やなぁ〜」と感心しながら、格子の扉に顔をくっつけて、しばらくの間御本尊を眺めていました。暗闇のなかで金色に光る丈六の阿弥陀さんだけが浮かび上がる…グッとくる光景です。
そうしているうちに足が冷えてきました…昼から用事があったのでそろそろ帰らねば…
ガタガタ震えながら、本殿に戻ってきます。すると本殿に上がる石段脇に、穴を掘って焚き火をやっているではないか!さっそく焚き火に当たり、「これぞ極楽」と心の中で言いながら周りを見ると、昼から行われる「鬼追い会式」に向けて、出店や粕汁やおでんの炊き出しなんかの準備をやっていました。
昼までにもう一寺行きたかったので、鬼に会いたがったが涙をこらえて山を降りることに。帰りの参道で沢山の「鬼追い会式」目的の参拝客とすれ違う。みんな鬼に会いに行くのですね。
次に向かうは円教寺を開いた「性空上人」が隠居した「円教寺の奥の院」と言われる「弥勒寺」です。


弥勒寺でも覗き見する

円教寺のある書写山よりさらに5qほど山奥に入ったところにある弥勒寺に到着。
参詣者は私だけ。受付にも誰もいない。とりあえず朱印を貰おうと、社務所に行って、出てきたオバサンに連絡。するとオバサンが「今みんな、書写山の円教寺の行事に行って、私だけなんですよ〜」と言いながら受付まで来てくれました。本尊「弥勒三尊」は重文。しかし傷みが激しく去年京都で修復されて去年11月に帰って来たばかり。前回の一人見仏では拝むことはできませんでした。
ご朱印を貰いながら私は「本尊の弥勒三尊さんは、拝むことはできますか?」とオバサンに尋ねましたが残念ながら秘仏だそうで、正月の三が日と11月3日の文化の日しか開帳しないとのこと。
がっくりしているとオバサンが「本堂の扉を少し開けることが出来るから、隙間からチョット覗いてもイイよ」と言ってくれるではないか!?
御言葉に甘えて本堂に上がると、正面の扉(引き戸)は締められていますが、鍵がなんと自転車のチェーンタイプの鍵になっており、少しだけ扉を開くことができるみたい。さっそく引き戸を開けれるだけ(といって本堂自体も重要文化財なので、無理をして傷つけるとバチが当たります)やさしく開けて隙間から泥棒のようにそっと中を窺います(なんか今日は「覗き見」みたいなことばっかりやっているなぁ)…でもやはり中は暗くて輪郭しか識別できない…

帰る時に山門に本尊の弥勒さんのポスターが貼られていることに気付く。
私はポスターの写真に、「スイマセンでした。今度は覗き見せずに、開帳日にちゃんと拝みに来ますね」と言って、帰ることにしました。

午前中の短い間にアッチコッチ行って、「覗き見」ばかりして、罰が当たりそうな一人見仏でしたが、中々楽しかったです。

しかし寒かった…
帰りの車の中で鼻水を垂らしながら帰りました。せっかく治った風邪がぶり返しそうです(はやり罰が当たったか?)…

書写山の山頂あたりから姫路の市街地を望む。霞んでよく見えません。雲って太陽も霞んでいます。

焚き火に当たる。
寒い時は私にとって、何よりもこれが「仏(ほとけ)」です。

鬼追い会式のため、本堂(摩尼殿)には五色の幕が張られていました。

コの字型に並んだ三の堂(食堂・大講堂・常行堂)。
朝一番だったので、ひっそりしています。

常行堂の正面扉の格子の隙間から丈六の重文「阿弥陀如来」を見る。幻想的な世界にうっとり(勝手に写真撮ってスイマセン)。

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09年1月18日 覗き見ばかりの一人見仏  
(姫路市 書写山円教寺〜弥勒寺)

重文の本堂正面の扉にできた隙間から中を覗き込む。

弥勒さん、本当にすいません、今度こそちゃんと会いに参ります。




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