「仏像鑑賞第一課」、56億7千万年後に会いましょう  
     弥勒菩薩像    (京都 広隆寺)

京都の広隆寺に居られる国宝「弥勒菩薩像」。最初に告白すると、恥ずかしながら私はまだこの仏像をナマで見たことはありません。仏像の専門書や写真集でしか見たことは無いのですが、それでも見るほどに優しいお顔に惹きつけられてなりません。

この仏像は、専門家の間では以前から「仏像鑑賞第一課」といわれています。つまり多くの人がこの「弥勒菩薩」を最初に見て仏像好きになったと言われているほど、魅力的な仏像なのです。

ドイツの哲学者ヤスパースは「人類が作り上げた最高の美」と絶賛したそうです。そして「これは弥勒菩薩ではなく魅力菩薩でもある」とも。
昭和35年、ある大学生があまりにも美しいがために、いたずらに近づいて誤って薬指をポキンと折ってしまった。気が動転したのか、気付かれたらマズイと思ったのか、折れた薬指をポケットに入れて持って帰ろうとしが、途中でコンクリートの上に落としてしまい、マズイことに更に三つに砕けてしまった。それを探して拾い当てたお巡りさんが文化財保護の功労賞で表彰された。

さらにその事件の数日後に、東京で特別展示(文化財保護法制定10周年の記念行事)があるため、砕けた指の修復に携わった仏師たちの徹夜が続いたなど‥。
多くの逸話が残る魅力的で美しい仏像なのです。
彫刻で「国宝指定第一号」になったのも頷けます。

「弥勒菩薩」というのは、仏教の教えでは、お釈迦さんが入滅(亡くなること)してからなんと約56億7千万年後(!)に降りてきて、人類を救ってくれる菩薩だそうです。しかしそれまでの間に、どうやったら人々を救うことが出来るのか、じっと座って手を当てて考えおられる姿が「弥勒半跏思惟像」というわけです。

そっと頬に添えた指(誰もが注目する指と頬のスキマ)、少し考えげに伏せた目、小さく微笑んだ口元(他の飛鳥仏に見られるアルカイックスマイルとちょっと感じが違う)、そっと足に当てた左手、細くて華奢だけど安定感ある角張った胴回り、どれをとっても優しく表現されていて、いつまでも見ていて飽きない。

赤松の一本造りだそうで、当時日本国内の木造仏の殆どがヒノキやカヤノキを使っていて、他に類が無いそうです。したがって専門家の間では、7世紀に朝鮮半島で作られて、日本に持って来た渡来仏なのでは、とも言われているようです。そして昔は乾漆が表面にたくさん盛ってあって、もっとふくよかな渡来人系の顔立ちで、指と頬がくっ付いていた等、色々言われているようですが、私なりに言わせてもらうと「昔はどうあれ、今のままが最高!」と言いたい。
今のままの姿で56億7千万年後も変わらず(無理か)、優しいお顔で我々の前に降りてきて人類を救ってほしいです。

今度京都に行ったら是非、広隆寺に行って優しいお顔をナマで見てみたい、そう思わずにはいられません‥。

中宮寺の「弥勒半跏像」・東大寺法華堂の「月光菩薩像」などと並んで、私にとって「癒し系」仏像のベスト3に入る「弥勒菩薩」であります。

56億7千万年後に逢いましょう‥。それよりも、それまで人類は存在するのだろうか?
※ここに掲載する写真はパンフレットや雑誌等からスキャンしたものです。まずかったら訴えずにまずご一報を。
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もう完璧です。何も言うことありません。

そそられる美しい背中。指を折った学生の気持ちもわかります。

誰もが気になる指と頬の隙間、美しすぎます。




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