国宝の「太子堂」は解体修理中なのか?カバーに覆われていました。

謎めいた微笑みが今回も私を悩ませます。(お寺のパンフレットから)

鶴林寺に着いたときは、拝観時間は過ぎ、もう辺りは暗くなりかけていました。

仁王門を出る頃にはもう真っ暗。巨大な草鞋(わらじ)が奉納されていました。
仁王さん、フラッシュ眩しくてスイマセン。

突然会いたくなりました

今日は家でゆっくりしていましたが、五木寛之の「百寺巡礼」を読んでいて、その中に出ている鶴林寺の重要文化財、「あいたた観音」こと聖観音立像の写真を見ているとなぜか無性に会いたくなってきたのでした。
鶴林寺まで車を走らせれば、30分くらいで着けるはず。時計を見ると午後4時前。デジカメと朱印帳を詰め込んだ見仏バッグを肩にかけ、「行ってくるね」と家族に告げて車を東に走らせます。しかし予想外の渋滞で、結局鶴林寺に着いたのは午後4時半過ぎでした。


拝観時間は過ぎていた…

私とほぼ同時に若い男女のカップルが駐車場に到着。「若いくせに渋いじゃねえか〜」って思いながら駐車場から仁王門に向います。しかし仁王門にはなんと「本日の拝観は終了しました」と…看板を見ると拝観時間は午後4時30分まで!
ガーン!!…後ろでカップルが「どうしよう?どうしよう?」って話をしているのが聞こえます。
私は「とりあえず行ってみよう、注意されれば帰ればいいや」って考え、強行突入に踏み切りました。後ろのカップルも私につられて境内に入りました。
兎に角「あいたた観音」を一目見なければ!という思いいで宝物館に突き進みます。国宝の「本堂」や「太子堂」には目もくれずズンズン境内を歩きます。目指すは「あいたた観音」のみ!
息を切らせて宝物館に到着。入口には美人の受付の女性がいました。最後の拝観者を見送ったところで、さあ片付けでもしようか?というところでした。


受付のお方に感謝〜

私「すいません拝観時間は過ぎていますが入れますか?」
女性「どうぞいいですよ、5時過ぎくらいまでなら。ゆっくりご覧ください」
私はホットして宝物館に上がります。外は雨が降り出して、肌寒い。靴を脱いで上がるので足もとがヒヤッとしますが、急いで歩いてきたので体が熱くすぐ慣れました。いよいよお目当てのお方との対面です。
するとさっきの受付の女性が、「実は6年前に盗まれて、このお寺に無事帰ってきた重要文化財『聖徳太子絵伝』が修復が終わって特別展示中なのですが、本日が展示の最終日です。是非ご覧ください」
私はその言葉につられて、メインディッシュの「あいたた観音」は後に置いておくことにして、案内されるまま宝物館の別室にある『聖徳太子絵伝』を見ることに。
『聖徳太子絵伝』は仏教が日本に伝来して、聖徳太子がその教えを広めようと活躍。その死後から大化の改新までの出来事を表した8幅の絵巻で、女性の受付のお方に丁寧に説明してもらいました。
説明の途中で突然、「もしかして、お寺関係の方ですか?だって詳しいんですもの。」って聞いてくる。丸刈りでしかも説明の話にちゃんと受答え出来るところを見ると誰だってそう思ってしまうのか…
「いえいえ、只の寺好き、仏像好きのものですよ」って笑いながら答える私。説明してくれた受付のお方に礼を言って、いよいよ「あいたた観音」とサシの勝負です。


結局またやられました〜

前回(3年前)はあの謎めいた微笑みにコテンパににやられました。
ぐにゃりと曲がった、あの腰つきに注目しながら回りながら360度観察すると、何故か平衡感覚が無くなり、あの微笑みが「私の謎を解いてごらんなさい」って言っているように思えて…完敗でした。今回はどうなるか。
私はまず正面から見る。前回は女性的だなって思ったお顔が、今回は男性的に見える。ゆっくり回りながら眺める。横から見るとやはり後ろのけぞっているように見える。真後ろから見る。今回も正面から見るときとは逆にまっすぐ腰が伸びているように見えます。正面に戻って再び見る。すると今まで少ししか開いていなかったように見えた目が、大きく開いているように見え、「おまえも本当に好きだなぁ〜」って声が聞こえた気がする。
おお、今回は男性だ!でも上にあげた右手は女性的。やはり色々変化(へんげ)する観音であるので、女性的に見えたり男性的に見えたり、色々変わるのね…

女性は本日の売上(拝観料)の計算をしているのか?お金の鳴る音がしている。私は他の仏像たちには目をくれず、グルグル観音さんの周りの回っている。拝観時間の終わった二人っきりの狭い宝物館内で、なんか変な図式が展開されている…
すると女性から「あの〜バスの時間は大丈夫ですか?」
彼女は私がバスでこのお寺に来ていたと思っていたのか?
「いえ、車で来ました」って何気に腕時計を見るともう5時を回っている。
これはスマヌと思って「そろそろ出ます。時間を延ばしてすいませんでした」と彼女に丁寧にお礼を言って宝物館を出ることにしました。
靴を履きながら「今日は観音さん男性に見えましたよ」という私を不思議そうに見る彼女に、再度礼を言って帰ることにしました…
私がしばらく歩くと、後ろの方で鍵をかける「ガチャリ」という音が…
「遅くなってしまって、本当にすいませんね」って心の中で謝りながら境内を歩きます。


あいたた観音→あいたい観音

仁王門を出るころはもう周りは真っ暗。
車を運転しながら思い出すと、あの優しく上げた右手は「またいらっしゃい」って手を振っているように思えてなりません。
また近いうちに会いに行きます。

私の中では「あいたた観音」というより、「あいたい観音」に変わっているように感じた今回の見仏でした。

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「またおいでなさい」と手を振っているように思えてしまう。(五木寛之「百寺巡礼」より)

08年11月9日 再び「あいたた観音に魅せられて」 
(加古川 鶴林寺 )




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