08年5月5日  一人見仏 山門の四天王に惚れた  
(高砂市 時光寺 )

リベンジ今度こそ「右腕のない阿弥陀如来」に逢いたくて

ゴールデンウィークもそろそろ終わり。ちょっと時間が空いた時に出かけました。行先は姫路のお隣にある高砂市の時光町にある時光寺(じこうじ)です。このお寺は別名「播磨の善光寺」と言われ、三度の参詣は善光寺の一度の参詣と同じご利益があるということらしい。そしてこのお寺の本尊は行基作と言われる「右手のない阿弥陀如来立像」。

こんな伝説が…
このお寺を発願した時光上人がある島で断食中に、五色の彩雲に乗ってきた高僧のお告げ通りに曽根の浦(そねのうら)から網を放つと、海中から仏像の頭・足・胴などがバラバラに上がる。
それを組み合わせると継ぎ目のない一体の「阿弥陀如来立像」になったとう。背中には「行基作」と…
しかし右腕だけはいくら網を放ってもかからない。
暫くしまた高僧のお告げがあり、右腕は海中で航行する船の安全を祈るために海に残っていると言う。 まさに海上交通を守る右手…
そして如来像を引き上げた網は現在この時光寺の南にある「網堂」に祀られているそうです。

実は去年の夏にもこのお寺を訪れたのですが、その時は境内には誰もおらず本堂は固く閉められていて、泣く泣く境内をぶらぶらして帰ったことがありました。今回は「もしや」という期待を込めて車を走らせました。


山門の四天王に再び惚れました

お寺の前にある駐車場(といっても空地ですが)には今回も私以外の車はありません。
まずお寺を訪れる者を出迎える、高砂市指定文化財の八脚楼門式の「山門」。堂々とした安定感ある造形で見ごたえあります。守るのは金剛力士ではなく四天王だから「仁王門」ではなく「山門」ということなんでしょうね。
特に中に祀られている四天王には前回同様、グッと来ます。この山門は18世紀の江戸時代の建造で、四天王もその時期の作だと思われますが、平安から鎌倉時代にかけての作かと思うような様式です。四人とも彩色もよく残っていて、お顔の色も赤・青・朱・緑とよく判別できるほど。そして厳しい表情に惚れぼれします。
特に「多聞天」。他の三人の円形光背に対してこのお方だけ輪宝形の光背。ふてぶてしいとさえ思えるお顔、斜め前を見据えた玉眼の眼差しも鋭く、内面に秘めた怒りがメラメラと伝わってきそうな恐いお方。気に入りました。
そしてこの四天王たちに踏まれている邪鬼が、ユーモラスな表情なのでこの対比もまたイイ。


やはり秘仏でした

暫くこの四天王たちを眺めていると、ふとお寺側から一人のおばさんが手にジョウロを持って山門に向かってやってくる。多分大黒さん(御住職の奥さん)と思われるおばさんは、私と目が合った瞬間ドキッとした様子。そりゃそうでしょうね、山門の四天王を格子に顔をくっ付けて、かぶりつきで見ている中年男を見れば仕方ないことでしょうね。私は「不審人物」と思われるとまずいのですかさず、
「今日は御本尊さん、拝めますかね?」といきなり尋ねる。
「すいません、御本尊さんは秘仏なので拝めません」
そう言い残して、おばさんは山門の脇にある花に水をあげ始める。
ガクツ…もうちょっと予習してくれば良かった。いつも初めて行くお寺って本尊の開帳時期なんかも全く調べずに、思い立ったらすぐ出かける悪い癖にチョイ反省です。

しかたなく境内に入って本堂に上がります。
本堂に上がりますが、もちろん扉は閉められています。ガラス越しに中の様子がうっすらと見えます。奥の中央に鎮座する厨子が蝋燭の火に照らされて見える。あの中に行基作の「右手のない阿弥陀様が…」
仕方ないので本堂端におられる「おびんずるさん」の体のあちこちを擦って本堂を出ることに。
このとき雨がポツポツと降り始める。
本堂の横には露座の「戦勝大仏」が。
明治時代にあった、日清・日露戦争に勝利したのと、戦没した魂を鎮めるために造られたこの大仏、やさしいお顔が「いいじゃないか、いつまでもクヨクヨするな」って言っているように思えてきます。
私は申し訳なく思い、大仏さんにお参りしてこのお寺を後にすることにします。


四天王に「また来ます」

お寺を出る前に再びかぶりつきで見る四天王。
ふと視線を感じて振り返ると、参道から近所に住んでいると思われる子供が自転車に跨ってこっちをじっと見ている。
私はチョイ恥ずかしかったけど、再び四天王を眺め続けました…

少しずつ雨脚も強くなってきたので、そろそろ車に戻ることにしますか…
車に戻ってふと気が付く、「しまった、大黒さんに本尊の開帳時期と『網堂』の場所を聞くのを忘れた!」
でもイイです、本尊には逢えませんでしたが素敵な四天王にグッとくるこのお寺、家から車で20分位で来れるので行きたくなったらまた来ようと思います。

「また近いうちに来ますね」って四天王のいる山門の方に向かってつぶやき、車を走らせました。

山門を守る「多聞天」。
ふてぶてしい表情がなぜかグッときます。
この表情に惚れました…

高砂市指定文化財の山門。
手前には美しい宝篋印塔

多聞天以外のお方たち。
下に踏まれる邪鬼達の表情のイイ。
「ナイス踏まれっぷり邪鬼!」

山門に続く先には本堂が。
阿弥陀さんに逢えなかったのが悔い。

あちこち擦った「おびんずるさん」

「戦勝大仏」。向こうには本堂から収蔵庫(?)に掛る渡り廊下。

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