現代に甦った胎内仏  千手面観音 (和歌山 道成寺) .

和歌山の道成寺。本堂には近年まで2体の巨大な千手観音が安置されていました。
一体は現在宝物館に安置されている国宝の千手観音。もう一体は内陣に北向きに安置されている秘仏、33年に一度開帳される「北向(きたむき)観音」といわれる千手観音。です。

昭和62年、本堂の解体修理に合わせて、秘仏「北向観音」を調べたところ、内部に仏像が納めてあることが発見されました。
仏が破損した場合、古像の持っていた霊験を後世に伝えるため、鞘仏(さやぼとけ)として一回り大きめ仏像を作成して、その中に収める例が福岡の観音寺、あるいは奈良の新薬師寺の「おたま地蔵」の例のようにいくつかあるそうです。
発見された当時は、腕は全て抜け落ちて頭上の十一面はおろか、面部もなくなっているといういたたましい姿。
しかし調査の結果、なんと奈良時代に遡る古仏で、日本最古といわれる葛井寺の千手観音に次ぐ古さであるという。
すぐさま仏師の松永忠興氏らよって修復され、現在は重要文化財の指定を受けて本堂の本尊として見ることができるようになりました。

修復された像を見ていると…
全体的に細身のプロポーション、しかも脇手の太さが合掌している手と同じなので普通なら不安定な印象が避けられないのですが、それが不思議に感じられず逆に人間らしい安定感さえ感じさせる。衣の表現もシンプルでいかにも古様。
面部が無くなっていたので、本来のお顔は分かりませんが、現代の仏師は飛鳥〜白鳳のかけての仏像のような、すっきりしたお顔に仕上げた感じ。そして脇手に持物は無く、頭上の十一面もない。それが私には「清い」感じられるのです。
目をうっすらと開け、ちょっとほほ笑んだ口元に癒されます。きっと造られた当時のお顔もこんな感じだったのでしょうか…

道成寺のある紀伊の温暖な気候のように、暖かくこの地を守ってきたのでしょうね…

お気に入りの素敵な仏像がまた一つ増えました。


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33年に一回の開帳を行う千手観音(北向き観音)。
この胎内に収められていたのです。

北向き観音の胎内から発見された時の様子。
痛々しいお姿です。




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