豆知識



アーサー王はいつの時代の王なのか


ディズニーの「アーサー王物語」で子供の頃から知っているこの王様は、きっと現イギリス王室の祖先であろうと長い間思い込んでいましたが、王室の家系図をみてもその名前は出てきません。
それもそのはず、アーサー王は5世紀後半から6世紀前半にサクソン人の侵入と戦ったブリトン人だそうです。ブリトン人とはブリタニア(イギリスのローマ時代の呼び方)のケルト人の事です。

物語の原典としては、元祖であるケルト人による記録は残っていません。主に吟遊詩人によって口承されてきたものが、1139年に「ブリテン列王史」の中で集大成され、現存する最古の原典となっているようです。「ブリテン列王史」はウェールズに生まれたジェフリー・オブ・モンマスによってラテン語で書かれた歴史書です。
物語としてのアーサー王は12世紀のフランスの作家クレチアン・ド・トロワによって書かれたものが最初のようです。その後、色々な物語が書かれ様々な言語に訳されました。ヨーロッパ貴族のお気に入りの物語であったということでしょう。
我々の知るアーサー王の物語は、1469年にサ−・トマス・マロリーが書いて、イギリス最初の出版業者ウィリアム・キャクストンが編集し「アーサー王の死」として1485年に出版したものです。
日本語訳「アーサー王の死」はちくま文庫から厨川文夫氏の訳で出版されています。

アーサー王の伝説を訪ねる旅をしたいと思われる方には、加藤恭子著「アーサー王伝説紀行」(中公新書)があります。