英国式庭園


英国式庭園は15世紀頃からイタリア、フランス、オランダなどの影響を受けて様々な様式で発展してきました。 日本人の多くが「イングリッシュガーデン」と言ってイメージするのは、19世紀に流行したコテージガーデンボーダーガーデンの様式だと思います。またにロックガーデンピートガーデンも日本人のイングリッシュガーデン観に含まれるようです。
このページでは、これら日本人に馴染みのイングリッシュガーデンをはじめ、英国で発展した様々な様式の英国式庭園について解説しています。
 
英国式庭園の歴史
16世紀 
チューダ様式(囲われた場所にハーブガーデンやボンドガーデン、ノットガーデンがが作られる。ハンプトン・コートなどがその代表)の庭園が流行する。
17世紀 
ノットガーデンを複雑にした刺繍をしたようなデザインのパーティアが流行する。
また、フランス様式の庭園(幾何学庭園)が流行する。
トピアリーなどのオランダ様式の影響を受けた庭園ができる。
18世紀 
風景庭園が流行し始める。
19世紀 
プラントハンターが世界各地で活躍し、英国に世界の植物が導入される。青いケシもこのころ導入された。
チャッツワースのお抱えガーデナー、ジョセフ・パクストン考案によるグラスハウス(巨大温室)が登場。トンプソン&モーガン社が通信販売の方法で異国の植物の栽培を一般化する。ビクトリア様式の庭園(フォーマルガーデンで色鮮やかなもの)が流行する。
ロンドンの裕福な階級は産業革命後公害の多い市内を離れ郊外へと移り住んだ。

(註)出展は英国祭98「大英国展」のガーデニングコーナーです。親切に教えてくれたスタッフの方々ありがとうございました。


代表的な英国式庭園 
 
ブレナム・パレス庭園
イギリス中部、オックスフォードの北(オックスフォードから車で15分)に位置するブレナム宮殿の庭園。
ケイパビリティ・ブラウンの作った英国式風景庭園で、5000haという広大なもの。ブラウンは村を移動させたり、小川(グリム川)を塞き止めて湖や滝を作った。
敷地内に森林、牧場、農地もあり、木材、羊毛などを生産している。

ブレナム宮殿はウィンストン・チャーチルの生家。世界遺産に指定されている。
1704年、初代モールバラ公爵ジョン・チャーチルがブレナム(独:ブリントハイム)の戦いで勝利を治めて、アン女王から褒美として与えられたもの。ジョン・バンブラが建築。9000坪。50年前から一般公開されている。(3月下旬〜10月末の10:30〜)
現在の当主は11代目モールバラ公爵。ケネス・ブラナの映画「ハムレット」で舞台として使われた。(よかったです!)
 

ペットワース・パーク
ロンドンの南に位置するペットワースは古くからの骨董屋が軒を連ねる小さな町
この町の貴族エグルモント卿の館「ペットワース・ハウス」にある庭園。広さ1000ha、2000頭の鹿も住んでいる

19世紀始め、絵画の収集に熱心だった第3代エグルモント卿を慕い若い画家達が集まった。
ターナもその一人で、このあたりの風景を数多く描いた
 

チャッツワース庭園
イングランド地方北部ダービシャー州シェフィールドにあるデボンシャー家の庭。450年の歴史をもつ英国を代表する庭園。
カスケードと呼ばれる滝、フランス式幾何学庭園、メイズ等様々な様式で作られて庭園が組み合わされている。屋敷の南にはケイパビリティ・ブラウンが設計した260haの風景庭園がある。
この庭は初代デボンシャー公によって始まり、英国庭園史上に残る名ガーデナー、ウィリアム・ケント、ケイパビリティ・ブラウンらを輩出した。
風景庭園は4代目公爵の時代に導入された。また19世紀の6代目公爵の時代にはジョセフ・パクストンによって大温室がつくられビクトリア女王も来園した。
現在の当主は11代目デボンシャー公爵。庭園は主人が屋敷から見て最も美しい眺めとなるように設計されている。
4月から10月の毎日一般公開されている。
 
スタウアヘッド庭園
18世紀に作られた、初期の英国式風景庭園を代表する最も美しい庭園。
18世紀のヨーロッパで流行していた神話や伝説にもとずいたロココの風景画を庭園に再現した。
フラットフォード
ロンドン北東に位置するサフォーク地方ある。
イギリス人なら誰でも一度は見た風景。庭園ではないが、英国人が庭に求める風景の原型がここにある。

ジョン・コンスタブルの絵画によって有名になったことから、このあたり一帯はコンスタブルカントリーと呼ばれ、毎日多くの人々がカントリーウォークに訪れる。
レタム村からフラットフォードまでおよそ2Kmの間をフットパスと呼ばれる川沿いの遊歩道が繋いでいる。自動車の通れる道は無い。
現在はナショナル・トラスト(The National Trust)の管理下にある。
 

セント・ジェームス・パーク
ロンドン市内にある。
元はヘンリー8世の鹿狩のための庭。
1820年、ロンドンで初めて王族の庭を一般に開放し現在に至っている。
 
ヘスタークーム・ガーデン
イギリス西部のサマセット地方にある。
イギリスの庭を作ろうとする誰もがお手本とする庭。
20世紀初頭に活躍した画家ガートルード・ジーキルが設計した。25年前にジーキルが残した色彩図を元に再現されたもの。
 
スワンプ・ガーデン
ロンドン北東部のエセックス地方にある個人庭園。
現代イギリスを代表する造園家、ベス・チャトーが36年前に作成したもの。
 
 
ライブラリ 

ロックガーデン

日英文化の出会いとも考えられているガーデニングの手法がロックガーデンです。英国のロックガーデンの父といわれてりるR.ファーラーが日本の石庭を見てその日本の文化のセンスに感動し以降の英国の庭造りでも石や岩などの材料にも気を配るようになったと言われる。
高山植物や山野草を最適なコンディションで育て、四季折々のかわいい花が楽しめる手法のガーデニング。
 

ボーダーガーデン

日本では境栽花壇と言われる手法で、壁などに沿って細長く伸びた花壇を言います。花壇の手前に草丈の低いものを植え後ろに行くにしたがって草丈の高い宿根草や潅木が植えられる。芝生との調和も美しく英国らしい庭園造りの手法の一つ。
 

ピートガーデン

冷涼地で可能な園芸方法でイングランドやスコットランドではピート(泥炭)ブロックをそのまま使って植物を植え込む。高山や亜高山などのやや湿った地域にみられるメコノプシス(ブルーポピー)やプリムラ、またシャクナゲ、ヒメシャクナゲ、そしてイワヒゲなどを植え込み格調高い庭園を演出する。
 

コテージガーデン

田舎家の庭のように自然をありのままに再現した庭園。
 

ケイパビリティ・ブラウン

イギリス全土に170以上の風景庭園を作った。
イギリスの風景はブラウンの手で一変したと言われる。
 

カントリーウォーク(田舎歩き)

イギリス人の国民的趣味。
A.Wainwrightの田園散歩地図(A PICTORIAL Guide)はカントリーウォークのバイブル。
 

ガートルード・ジーキル

20世紀の庭はジーキルから始ったと言われる。
イギリス庭園にとってジーキルの影響は絶大。
著作「庭の色彩計画」(COLOUR IN THE FLOWER GARDEN)
 

英国王立バラ協会

ロンドンの北、セントオルバンスにある。
ここのローズガーデンには2000種のバラが植えられている。

 チェルシー・フィジックス・ガーデン

ロンドンのチェルシー地区にある。ガーデニングを教えるイギリスで初めての学校がある。
授業のテーマは自分の庭を設計すること。