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『ウルヴァリン X-MEN ZERO』
【感想】 ★★★☆ H22.1.22

ウルヴァリン X-MEN ZERO 「X-MEN」シリーズでもっとも熱いキャラクターで人気を博したウルヴァリンの、知られざる誕生秘話を描いたスピンオフ作品『ウルヴァリン X-MEN ZERO』を観る。あれだけの魅力的なキャラクターをそろえた「X-MEN」を、あの三部作で終わらせるのはやっぱりもったいないね。

 思いがけず父親を殺してしまった幼少時代から、二人だけで強く生きようと誓ったローガン(ヒュー・ジャックマン)と兄のビクター(リーヴ・シュレイバー)。以来南北戦争から第二次世界大戦・ベトナム戦争と戦場を駆け抜けた二人は、次第にミュータントとしての力を発揮していった。しかしある日上官や仲間を殺害してしまったビクターのせいで、二人は監禁の身となっていたが、そこへそのミュータントの力を貸して欲しいと、ストライカー(ダニー・ヒューストン)と名乗る軍人が現われる・・・。

 これはひょっとすると本家の「X-MEN」シリーズより面白い作品が出来たんじゃないかな。今ひとつ各ミュータントたちを掘り下げて描けなかったため、十分にその魅力を伝えきれてなかったろうシリーズのもどかしさを、本作は一気に解消してくれた。記憶をなくしても尚激しさの中に優しさを秘めていたウルヴァリンの、悲しくも切ない過去を描くことで、愛すべき孤高のヒーローとしての魅力が爆発している。なによりウルヴァリンは仲間と協力するより、一人孤独に闘う姿がよく似合う。さらにストライカーにより集められた、様々な能力をもった新たなミュータント達が、闘うシーンも見ごたえ十分だったが、やはりウルヴァリンがヘリコプターを相手に、バイクで疾走するシーンをはじめ、とにかくアクションが思わずカッコイイ〜!と声に出してしまうほどカッコイイ。あのシリーズの最後でゴールデンゲートブリッジが宙を舞う程の大掛かりな中で、もはやウルヴァリンの爪で切り裂く攻撃も地味に見えていたことを思うと、アクションもスケールや物量じゃなく、いかに細かい動きまで丁寧に作りこんで見せるかなんだなと感心させる。爪を地面にめり込ませてバイクをターンさせるというだけの、あのシンプルなシーンにさえカッコよさがほとばしってたもんね(^^)

監督もギャヴィン・フッドに変わり、シリーズの根底に流れていたマイノリティへの迫害や悲しみは影を潜め、今流行のダークな世界観の中で、愛と憎しみに重点を置いたドラマチックな展開となった。ただ一点だけ後味の悪いシーンがある。改造されたウルヴァリンが素っ裸で逃げ込んだ農家の親切な老夫婦の、あの扱いは無いでしょう。あの二人を守りきるのがヒーローのはずなんだけどねえ。それとやはりラストの対決のシーンは微妙だなあ。なんでこんなに盛り上がらないんだろうと思ったら、そういえば最後の相手って、ほとんど絡んでないし、やっぱりラストはずっと物語を引っ張ってきた憎しみの対象であったビクター(ストライカーはシリーズ2で決着を着けるから今回はない)にしないと盛り上がらないでしょう。相手が強すぎてまったくシンクロしてないということよりも、なんで彼なの?最初から続編を狙ってるのがミエミエなんですよねえ、まったく。

思いがけず輝きを取り戻した「X-MEN」、見終わった後無性に「X-MEN」の第一作が見たくなり、続けて見てしまった(笑)ウルヴァリンのあのまったく同じジャケットをはじめ、見事にリンクしていてまったく別の作品を見てるみたいな新鮮さを感じた。この調子で次はサイクロップスやストームのスピンアウト作品も、作ってくれないかなあ(^^)

 ▼公式サイト:ウルヴァリン X-MEN ZERO オフィシャルサイト