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『カールじいさんの空飛ぶ家』
【感想】 ★★★ H22.5.29

 次々と完成度の高いCGアニメ作品を世に送り出してきたピクサーの、「ウォーリー」に続く最新作『カールじいさんの空飛ぶ家』を観る。かなり前評判の高かった作品で、中には最初の回想シーンでもう泣けるなんて感想もあった。でもまあ設定が地味だったこともあり、劇場へは見に行く気がしなかったが、絵が絶対に綺麗なんだろうとブルーレイを購入した。

 子供の頃から冒険にあこがれ、妻といつかは世界を回りたいと思っていたカールも、今や78歳の老人となり、最愛の妻もいない部屋でむかえる朝食は、味気ないものだった。いつしか妻との思い出の詰まった家の周りには、再開発の波が押し寄せ、ちょっとした事件をきっかけに、この家を離れ老人ホームへ保護されることになった。ホームへの迎えがやってきた朝、突然カールの家の頭上を無数の風船が舞い上がった・・・。

 今までのピクサーの作品からいっても、本作のおじいさんが主人公の話というのは意外だった。そこでこれはかなり大人を意識して作ったはずだと、ペーソス溢れるロードムービーっぽい作品を期待していたが、いざ始まると良くも悪くもやっぱり明るく元気ないつものディズニー作品だった。
それでも鮮やかな色彩に、綿密に描きこまれた質感に滑らかなう動きと、ピクサーの更なるCG技術の進化に目を奪われる。そしてラストに用意された、たたみかけるアクションシーンはさすがのワクワク感でみせる。ただねえ、せっかくおじいさんを主人公にしたのに、見せ場がアクションシーンというのはどうなんだろうなあ。しかも若者のように走ったりジャンプさせたり、合間に腰を痛めるような自虐的な笑いまで盛り込みつつ。

先立った妻を想い、新しい一歩を踏み出せずにいたカールじいさんの再生の物語という、ピクサーの難しいテーマに挑んだ意欲は買うが、やはりあくまでも作品の対象は子供なんだよねえ。アクションでみせるというところは外せなかったというか、私はそんなアクションより、「アバウト・シュミット」みたいな情感溢れる作品を期待してただけに、ちょっとものたりなかったかなあ。オープニングの奥さんとの出会いから別れのシーンが、あまりにも素晴らしかったために、余計にそう感じてしまった。