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『冬の猿』
【感想】 ★★★☆ H23.6.12
 ジャン・ギャバンにジャン=ポール・ベルモンドという、フランス映画界を代表する新旧のビッグスターが夢の共演を果たした『冬の猿』を観る。タイトルの“冬の猿”は、まったくどういう映画なのか想像できなかったが、当時56歳のギャバンと29歳のベルモンドの、最初で最後の共演ということだけで見ることにした映画だった。

 若い頃に旅した中国での思い出が断ち切れず、酒びたりだったアルバートは、町が空襲に見舞われた夜、死を覚悟し、もし生き延びてまたホテルを始める事ができたら、この一杯を最後に酒をやめると妻に誓う。そして月日は流れ、ある雨の夜ホテルへ一人の青年ガブリエルが現われる。アルバートは初老を迎えた今はお酒の代わりに飴をなめ、妻にも優しく静かに暮らしていたが、向かいのバーで酔いつぶれて帰ってきたガブリエルの姿を見て、胸のざわめきを感じ始める・・・。

“冬の猿”とは、劇中でジャン・ギャバンが聞かせる、中国では冬になると町に下りてくる迷い猿のこと。
老いへの不安を感じている初老の男と、人生に迷いやり場のない怒りを爆発させる男の友情を、情感溢れる人間ドラマとして鮮やかに描く。特にジャン・ギャバンが見せる、男の愚かさと孤独は、祭りの後のような切なさで胸を打つ。