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『田舎の日曜日』
【感想】 ★★★★☆ H17.1.8
田舎の日曜日
 84年のカンヌ国際映画祭での最優秀監督賞受賞を始め、数々の映画賞を受賞したベルトラン・ダヴェルニエ監督作『田舎の日曜日』を観る。この作品もまったく知らなくて、映画好きの方に教えてもらい、大好きになった作品なのだ。感謝感謝!

 1912年の初秋。ある日曜日、パリ郊外で緑に囲まれた屋敷に、静かに暮らしている老画家ラドミラル(ルイ・デュクルー)は朝からそわそわと落ち着かない。もうすぐ息子夫婦が孫を連れてやってくるのだ。駅まで迎えにいくために、いつもより早く屋敷を出たが、間に合わず駅に着く前に孫が走ってくる。こうしてラドミラルの心待ちにしていた日曜日が始まる・・・。

 久しぶりに集まった息子夫婦と孫たち、そして溺愛する娘エレーヌに囲まれたラドミラルが垣間見る、妻との楽しい思い出。たぶん一番父の体のことを心配し、ただ父を喜ばせたくて、できるだけ日曜日には顔を見せようとする愚直な息子。父の描く絵に魅力が無いといいながら、その生き方を尊敬している娘。勝手気ままに振舞いながら、父の愛情を独り占めにしてしまう妹を、苦々しく思う兄。日曜日の穏やかな木漏れ日の中で、それぞれの思いを乗せてゆったりと時間が流れていく。カメラはそんな日曜日の一日を、ただ静かに映し出していく。ワンショットでゆったりと映し出される風景は、どれも印象派の絵画のように美しく、深い安らぎを感じさせる。

そして楽しかった日曜日は、やがて終わりを迎える。嵐のように去っていった娘。汽車の発車時間ぎりぎりまでいてくれた息子家族。静かな屋敷の中に一人残されたラドミラルは、おもむろにアトリエへ向かう。そしてここからこの映画は最高のクライマックスをむかえる。自分の節くれ立った指をなでながら、一人老いと寂しさを噛み締めるラドミラル。そしておもむろにイーゼルに立てかけられる真っ白なキャンバス。老いて尚、創作意欲を失くさぬことが自分の生きてきた証であり誇りであるかのように・・・。素晴らしいシーンだった。

自分の生きてきた人生はどうだったんだろう。晩年を迎えたとき、私は人生を振り返って何を想うんだろう・・・。観終わった後、人生の哀歓を共にした人たちをしみじみと想い、日曜日の夜9時のようにちょっぴり切ない気持ちにさせられる、そんな味わい深い作品だった。

ただあまりにもゆったりとした展開で流れていくため、こういう淡々系に慣れていない人には、あまり薦められない作品かも・・・ね(笑)。