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『月とキャベツ』
【感想】 ★★★★ H23.6.5
 当時25歳だったミュージシャンの山崎まさよしを主演に向かえ、ピュアなラブストーリーを描いた『月とキャベツ』を観る。この作品も熱烈なファンが多く、とっておきの邦画でよく紹介される作品なのだ。そんなことで私も、ある雑誌でオススメの邦画として掲載されていたのを見て、何年も前に見たことがあったんだけど、当時山崎まさよしのことはまったく知らなくて、彼の独特の歌い方が(まさやんファンの方ゴメンナサイ)受け入れられなくて、惜しいなあ〜なんて印象の作品だった。今回もまたこの作品のファンの方にススメられて、もう一度久しぶりに見ることに。

 新しく出直したいとバンドを解散した花火(山崎まさよし)だったが、あれから1年半を経った今もまったく曲が作れないままだった。田舎の廃校に住み込み、毎日一面に広がるキャベツ畑で、ただキャベツの世話をするという隠遁生活を送っていた。そんなある日、自分のファンと名乗る少女火花(真田麻垂美)が現われる。花火は家に帰るように叱るが、火花はそのまま強引に居ついてしまう・・・。

 運命に導かれるように出会った火花と花火の二人を映し出すシーンの総てが、朝露に濡れたキャベツのように瑞々しく、そして今にも消えてしまいそうな線香花火のように儚く、素晴らしい胸キュンのピュアな空気感を醸し出す。そう、本作はこの空気感が堪らなくいいのだ。久しぶりに見たんだけど、前回を遥かに超える切なさで、胸がいっぱいになった。あれから本作をきっかけにメジャーになった彼の曲を何度も耳にし、あの独特のビブラートも違和感がなくなったことで、ラストで歌われる「One more time,One more chance」は、まったく別の曲のように素直に胸を打った。なんて可愛らしい映画なんだろう(^^)見終わった後すぐにこの曲をネットからダウンロードしたのは言うまでもない。
火花役の真田麻垂美は、肝心のダンスがまあ経験もなかったんだろう、今ひとつではあったんだけど、その今ひとつなところも含め、キラキラと眩しい透明感で輝いていた。ただ最近でもあまり名前を聞かないので、その後どういう女優さんになったんだろうかと調べたら、残念なことに2001年の「忘れられぬ人々」という作品以降出演作はなく、寂しい限りだった。

 DVDの中に篠原監督が作品について語ってる映像があるんだけど、その中で「One more time,One more chance」が、本作のために作られた曲ではなかったということが判明する。一瞬「ええっ!」なんて思ったが、主役を山崎まさよしにキャスティングしようとした段階で、あの曲は既に完成していて、世にどう出そうかという状態だったのにもかかわらず、映画と内容が完璧にマッチしていたという、本作の二人さながらの奇跡のような出会いだったと監督が語っていた。あと、監督が特に力を入れたシーンがあったと言ってるんだけど、聞いてなるほどと納得。それは物語のラスト近くで映画「ゴースト」のように、花火が火花を後ろから抱きかかえるようにして一緒にピアノを弾いた後、別れを告げるシーン。実はそこは私が一番違和感を感じたシーンで、そこだけどうにも生々しく、あそこもあっさりいって欲しかったなあ〜、なんて思ったシーンだった。それでもそういう監督の熱すぎる演出も、なんだか一層この作品を可愛く思わせてくれた(^^)