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『パリ空港の人々』
【感想】 ★★★☆ H21.1.25

パリ空港の人々 “でるに、でれない”
 フランスでロングランを記録し、日本でもゆうばり国際ファンタスティック映画祭で見事グランプリを受賞した『パリ空港の人々』を観る。久しぶりにフランス映画をと探していたところ心温まるハートフル・コメディという文字を発見。ハートフル・コメディ、それは私の一番好きなフレーズ(^^)空港で入国の許可が下りず、空港から出られなくなった男の話なんだけど、似たような映画でトム・ハンクス主演の「ターミナル」があるが、それより何倍もいいという評価もあり、期待は膨らむ。

 年の瀬も押し迫ったパリ、シャルル・ドゴール空港に着陸した飛行機からあふれ出す人々。入国審査の窓口に並ぶ列の中に、靴も履かず靴下で順番を待つ男が一人。図像学者アルチュロは、出発地のカナダ空港でパスポートや貴重品などすべて盗まれてしまっていた。ちょっと眠っていた隙に盗まれたことや国籍などの複雑な事情を審査官に説明するが、入国管理局のデータに顔写真がなく、身元確認ができないという理由で入国の許可が下りない。しかたなく確認ができる写真が送られてくるまでの間、トランンジット・ゾーンに留まる事になってしまう・・・・。

 一度しか海外旅行の経験もなく、あっけなくゲートを通り抜けた私にはあまりよく分からない入国審査だけど、身元不明者を入国させるわけにはいかないので、ここまでとはいかないけど似たようなトラブルが空港にはあるんでしょうね。実際にも身体検査されたり、入国拒否とかされて、長時間トランジット・ゾーンに隔離されるみたいなこと。この題材も監督の実体験を元にしているらしい。

物語は入国できなくなってしまったアルチュロと、トランジット・ゾーンにいろんな事情から居ついてしまった人々との交流を、優しくそして可笑しく描いていく。父が迎えに来る日を待ち続ける黒人の少年ゾラ。コロンビアで国籍を剥奪されてしまった女性アンジェラ。どこの国へ行っても入国を拒否されるという自称元軍人のセルジュ。そしてどこの国か分からない言葉を喋り、どうしてそこにいるのかさえも分からない黒人のナック。この国籍も様々な奇妙な4人は、ここが自分たちの小さな国とでも言うように、力を合わせたくましく生きている。データだけで無常にもアルチュロを突き放した入国審査員と対照的に、当たり前のようにアルチェロを迎えるこの住人達の人情に癒され、彼らがいつしか愛しくなっていく。希望をなくし現状に留まっていた彼らを、パリの灯りは美しくそして優しく照らし、新たな一歩を踏み出す力を与えるラストに、心がじわ〜っと暖かくなっていく。

誰かにちょっとした事でもいいから何かしてあげたくなる、そんな優しい気持ちにさせてくれる。小品ではあるけどそんな優しさと、やんわりと人生の素晴らしさも讃えた素敵な作品でした。おお〜、憧れのパリよ〜(^^)