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『八月の鯨』
【感想】 ★★★★ H24.7.16
 “「人生が長いなんて思わない・・・」”
 ハリウッド往年の大女優リリアン・ギッシュとベティ・デイビス主演による、年老いた姉妹の友情を描いた名作『八月の鯨』を観る。この作品も昔一度見たきりで、ずっともう一度見たいと思っていた作品だった。ただDVDも廃盤になっており、再販されるのを心待ちにしていたところでの、突然の発売。やった〜!。なぜ今ブルーレイでも発売されないのかが悔しいところだが、この作品を手元に置いておけるだけで幸せなんだなあ(^^)

 アメリカ・メイン州のある小さな島、穏やかな波が打ち寄せる岬にたたずむ一軒の別荘。ベランダで姉リビー(ベティ・デイビス)の長い髪を、優しくブラシする妹のセイラ(リリアン・ギッシュ)。最近リビーが死を言葉にするようになり、セイラは心を痛めていた・・・。

 目が不自由で気難しく、なにかと妹へ毒を吐いてしまう姉のリビー。そしてそんな姉を優しく世話し、人付き合いもいい妹のセイラ。全く性格が違う二人の姉妹。物語はこの老姉妹のある一日を、島の美しい景色とともに静かに映し出していく。他には彼女たちの別荘を訪れる、50年来の古い友人と伴侶を亡くしたばかりの元貴族という老人、そしてがさつだけど気のいい大工が登場するだけという、極めてシンプルな人間模様が描かれるだけなんだけど、そこで交わされる会話や出来事は、さりげなく人生の機微を感じさせてくれる。人生も晩年を迎え、老いてなお、毅然として明日への一歩を共に踏み出そうとする二人の姿は、観る者の心を切なく、そして温かく包んでくれる。大好きな作品(^^)

 主演二人の大女優の作品は、残念ながらほとんど見たことがないんだけど(ベティ・デイビスの「イヴの総て」だけ)、撮影当時90歳というリリアン・ギッシュの、上品でいて優しさに溢れた表情の美しさにまず感心してしまう。その人の生き様がそのまま顔に現れるというが、自分もこんな素敵な表情が浮かんでくるような人生を送りたいと、願わずにはいられなかった。そして一方まったく正反対の顔を見せてくれる当時79歳になるベティ・デイヴィスはというと、往年の美しさは感じさせるが、役柄上キム・カーンズの「ベティ・デイビスの瞳」という歌にもなった、伝説のまなざしは見ることができなくて、ちょっと残念だったなあ。こっちのリジー役の方が絶対損だよなあ、なんて思いながら難しい役どころを見事に演じていると感心したが・・・。調べてみると彼女は「イヴの総て」そのままの女優さんで、時に傲慢で厳しい口調は共演者やスタッフを困らせていたとのこと。ハハハ、結構地だったのかも。でも、それだったら余計にやりにくかっただろうリジー役を、あえて演じきったところに、彼女の役者魂を感じるなあ、さすが。

観る人が年を重ねれば重ねるほど、熟成されたワインのように深みのある、そして優しさと力強さを感じさせてくれる素敵な作品です。ただ若い人には、ちょっと早過ぎるかなあ(^^;)