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『バウンティフルへの旅』
【感想】 ★★★☆ H24.7.20
 第58回アカデミー賞で、主演のジェラルディン・ペイジに主演女優賞をもたらした『バウンティフルへの旅』を観る。この作品の前に観た作品が「八月の鯨」で、偶然お婆ちゃんが主役の映画を続けて観ることになったんだけど、これが後で調べたらすごい偶然だった。本作は元はテレビドラマで、その後ほぼ同じメインキャストでブロードウェイで舞台化され、そして映画化されたんだけど、そのテレビと舞台の主演がなんと「八月の鯨」のリリアン・ギッシュだった。不思議〜(^^)

 1940年代のアメリカ、テキサスで息子夫婦と同居しているキャリーは、毎日気の強い嫁との口論が絶えず、鬱屈した日々を送っていた。そんな様子を見ている息子も、嫁の肩を持ち、いつも母の方に謝るように言う始末。キャリーは狭い部屋の中でヒステリックに喚き散らす嫁と、全然頼りにならない息子に、いつしか生まれ育った故郷バウンティフルへの想いを次第につのらせていった。そんなある日、キャリーはついにその想いを行動にうつす・・・。

 お婆ちゃんの小さな冒険、って感じでお婆ちゃんが長距離バスに乗り込んで、懐かしい故郷の生まれ育った家を目指すというお話。家を飛び出したことで自由を取り戻し、解放感でいっぱいのキャリーの姿も微笑ましいが、旅の途中で出会う若い女性と、優しい保安官とのシーンがとても印象的だった。特にその若い女性を演じたレベッカ・デモーネイのつつましい立ち居振る舞いに、透明感に溢れた美しさは、ちょっと忘れられないシーンになった。
ただそんな微笑ましいシーンにあったかい気持ちにさせられたんだけど、観終ったあとはしばらくいったいどういう映画だったんだろう?なんて考えさせられる作品だった。ラストは少しだけ関係を改善する努力をしようとする嫁と息子のシーンがあり、三人が一緒に乗った車が、草原の丘のこぶをデコボコしながら乗り越えて遠ざかっていくところで終わってしまうんだけど、基本的にはほとんど変わらない生活が待っているんだろうなあ、なんていう切なさだけが後を引いてしまうラストなのだ。残念だけどキャリーは故郷に残ることはできず、息子夫婦と暮らす以外選択肢がないんだよね。ほんとどういう映画だったのか分からなかったけど、考えた末にこんな言葉が浮かんできた。
“ままならないのが人生”
最後に見せたキャリーの、いろんな想いを込めた笑顔の切なさは、「愛と哀しみの果て」のメリル・ストリープを抑えて、見事オスカーをジェラルディン・ペイジのもとへ。そしてなんとなく笑顔の意味が分かったような気がした。総てを受け入れて、新しい一歩を踏み出したキャリーの姿を思い出し、いつしか清々しい気分に浸っていた。
後からだんだん味が出てくる、不思議な作品だったなあ。