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『瞳の奥の秘密』
【感想】 ★★★☆ H23.3.19

 “瞳は、最後に何を打ち明けるのだろう。”
 第82回アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞し、本国アルゼンチンでも大ヒットを記録した『瞳の奥の秘密』を観る。日本でも評論家たちに絶賛の作品だったんだけど、例のごとく私はまったく知らなくて、よくいくサイトで紹介されていたのを見てレンタルすることに。アルゼンチン映画ってちょっと記憶にないんだけど、ジャケットの写真からはヨーロッパのしっとりとした雰囲気がなんとなく感じられたが・・・。

 定年退職を迎えたベンハミンは、ある事件のことを小説に書こうとしていた。当時刑事裁判所の捜査官だった頃に起きた、あの忌まわしい暴行殺人事件からもう25年が経っていたが、それはいまだに忘れられないものだった。当時を振り返るために久しぶりに刑事裁判所を訪れたベンハミンは、今は検事として活躍する当時の上司だったイレーネに会い、アドバイスを求める。

 オープニングの絵画を思わせるようなアーティスティックなシーンに、始まってすぐに「おお!これはっ」、なんて見入ってしまう。ベンハミンが小説を書くために、事件当時を回想するシーンと、今も過去に囚われ苦悩の日々を送る現在のシーンを、巧みに織り交ぜて物語は進行していく。回想シーンで犯人を追い詰めていく、サスペンスフルな展開でみせる前半。そして意外に早く犯人が捕らえられ後の、本作が単純な犯罪映画ではないことに気付かされて繰り広げられる、重厚な人間ドラマで描かれる後半と、その完成度の高さに最後まで釘付けになる。25年後この事件をさかのぼって行くうちに、次第に解き明かされる事件の真相。さらに愛するものの瞳の奥に隠された秘密。この二つが絶妙に絡み合い、そして導かれていく。ラストで明かされる衝撃の真実は、見るものの心を打ち震わせ、人の大きな罪深さと愛の深さに胸を締め付けられる。
よくある無駄とも思える説明的なセリフもなく、総てを見るものに委ねる上質な演出と、特に主役二人のまなざしや空気で見せる抑えた演技は、見るものの感性をすこぶるくすぐられ、この辺が評論家先生たちに受けるんだろうなあ〜、なんて思ったりしてしまった。まあはっきり言って私はちょっとそこら辺は物足りなかったんだけどねえ(^^;)それでもベンハミンを演じるリカルド・ダリンは、アルゼンチンにこんな上手い俳優さんがいるんだと思わせる、さすがの渋い演技だったし、イレーネを演じたソレダ・ビジャネルの大きな瞳も印象的だった。

ラストは一瞬ええ〜!っなんて意外に思ったが、すぐにヨーロッパ作品にはない、南米の情熱と明るさを感じさせる終わり方で、これはこれで粋だなあ、なんて感心してしまった。エンディングはさすが最優秀外国語映画賞なんて自分で納得し、素晴らしい作品を見れたという余韻に浸りながら、エンドロールをずっと眺めていた。

 ▼公式サイト:映画『瞳の奥の秘密』公式サイト