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『海を飛ぶ夢』
【感想】 ★★★ H17.10.22

海を飛ぶ夢 “もしも愛する人が死を望んだら?”
 不慮の事故により、首から下が付随となってしまった実在の人、ラモン・サンペドロの手記「Letters from Hell」をもとに映画化された作品『海を飛ぶ夢』を観る。本作は05年アカデミー賞最優秀外国語映画賞をはじめ、ゴールデン・グローブ賞ほか世界中の数々の映画賞を受賞。いろんなところで書かれてる他の方の感想がことごとく良く、DVDの発売を心待ちにしてた。しかし、扱っているテーマが「尊厳死」というかなり重いものであり、一抹の不安がよぎる。

 25歳の時に海に飛び込み首の骨を折ってしまい、首から下の全身の自由を失ってしまったラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)。その事故以来26年間寝たきりの生活を送っている。献身的に介護を続ける家族に支えられながらも、ラモンはいつしか自らの自由のために「尊厳死」を願うようになる・・・。

 ひたすらに自らの死を願うラモンの瞳は透き通り、表情はいつも穏やかであり、想像していたイメージとかなり違う作品だった。観終わった後に涙はなく、これはどういう映画なんだろうという疑問でいっぱいになった。これだけたくさんの人を感動させた作品を、驚くほど冷めた気持ちで観終わった自分がいた。
この作品は尊厳死を望むラモンと、同じ様に不治の病により死を願う女弁護士のフリアの二人が主人公であったように思う。26年間ただ義務で生きてきたというラモンにとって、自らの命を絶つことは、26年間自由を奪われた彼にとって最後の、そしてたった一つの自らが下すことの出来る選択だったのだろう。そしてフリアは、ラモンと一緒に死を迎えようとするするが、夫の愛を受け入れ、そこには未来はないが不治の病に立ち向かうことを選択する。死の瞬間に一番苦しい表情をするラモンと、痴呆でラモンのことも忘れてしまったが一番穏やかな表情をみせるフリア。もし自分の身に、もしくは自分が愛する人に命の選択をしなければならない時が訪れたらどうだろうか?本作を観た後も答えはなく、考えれば考えるほど胸が締め付けられる。それでもラモンとフリアの選択について、私はフリアの生き方のほうに勇気を感じたが、26年間夢でしか自由を感じることも出来ず、愛する人の手にすら触れることの出来なかった彼の決断に、誰も口を挟むことは出来なかったろう。

ラモンの家族やフラン、尊厳死協会の女性やTVを見てラモンから生きる勇気をもらった女性とか、ラモンを愛するさまざまな人たちが登場し、それぞれの愛をラモンに捧げている。ただ死について考えさせられる映画じゃなく、人を愛することってどういうことかってことも同じように考えさせる映画だったように思った。しかし、この感想に至るまでかなりの時間を要してしまったのだ(笑)。やっぱり私にはちょっと難しかったか・・・。

本作ではフリアの選択についてほとんど描かれてなく、どうして?って思った方がたぶんいると思うんだけど、このDVDの特典に未公開シーンが収録されており、そのシーンがしっかり入っています。どうしてカットされたのか分からないほど重要なシーンでした。なんでカットしちゃったのか、またひとつ疑問が増えてしまった・・・。